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35話 お説教タイムです

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メイに手伝ってもらい急いで着替えてサロンへと向かった。
中へ入ると既にアレク様がいてソファに座っていたのだが、何故かその真後ろで御祖父様おじいさまが刀で素振りをしている。

御祖父様おじいさま! 何やっているのですか!?」

「ん? 少し素振りの練習をな。」

「そんな場所でやらないでください! やるなら外でやってくださいませ。」

「パット、リアちゃんも来たことだしそろそろ戯れは止めてくださいな。」

優雅にお茶を飲んでいたアンジュ御祖母様おばあさま御祖父様おじいさまに言った。

「うむ、わかった。」

御祖母様おばあさま大好きな御祖父様おじいさま御祖母様おばあさまの言う事ならなんでも聞いてしまう。同じく妹のエマ様とアンドリューもすっごく仲がいいご夫婦で、そんな御祖母様おばあさま達をお父様とセバスチャンが『万年バカップル夫婦』と揶揄するけど、私はずっと仲良しな御祖母様おばあさま達みたいな夫婦に昔から憧れていた。



「さて、此処に来る途中でセバスチャンから話を聞きましたが、あなた達からも聞きたいわ。最初から話してくれる?」

そこで私は、卒業式の断罪イベントで前世を思い出した時から今までの事を全部話した。

「……なるほど、わかりました。まったく、ザカリーあの子も懲りないわね。」

そう言ってアンジュ御祖母様おばあさまはため息をついた。

「まあ、話は大体わかりました。ではここからはお説教タイムね。まずリアちゃん。」

「はい。」

「いくらルイスに怒られたからといって、すぐ家出するのは短絡すぎじゃないかしら、例え理不尽だと思っていてもね。たまたまアレックス殿下と会うことができたからいいものの。世の中には悪い人もいるのよ……。って、私なら大丈夫って顔をしているわね、はあ~、その気の強さは誰に似たのかしら。」

そんなことを言う御祖母様おばあさまに周りの御祖父様おじいさま方が意味ありげに御祖母様おばあさまを見ている。

「どんなに腕に自信があってもどうにもならないこともあるって話なの。ましてや女の身一つで出るなんて、前世の知識があるからって甘く見すぎね。そして、ほいほい人について行かない! 本当にアレックス様じゃなかったらどうなっていたことか…。」

「わ、私は人を見る目だけはあると思います!……ごめんなさい。」

思わず言い返したら思いっきり睨まれてしまった。

「あのねえ、見た目がいい人そうに見えてもでも中身は極悪な人なんてたくさんいるの。自信があるのはいい事だけど過信しすぎるのも駄目なのよ、わかる?」

「はい。」

「あとね、前世の知識があるのはわかるわ。だけどこの国に生まれ変わったのだからこの国の常識は弁えないといけないわ。あなたは公爵令嬢でその立場と貴族としての責務は簡単には捨てることが出来ないの。それだけはわかって。」

「はい…。」

「そして、アレックス殿下。」

「はい。」

「いくらリアちゃんの素性がわかっていたからといって、未婚の女性を一人住まいの屋敷に招き入れるというのはいかがなものかしら?」

「いや、その…。」

「そうだぞ! なぜ私の屋敷に連れてこなかったのだ!!」

お父様が声を荒げる。

「ルイス。今は私が話しているの、あなたは黙っていて。」

「…はい。」

お父様は御祖母様おばあさまには逆らえないらしく黙った。

「まあ、なんとなく理由はわかります。たぶん断罪イベントあ の 件でアルフレッド殿下が関わっていたから気になったのでしょう?」

「…はい。」

「そして、リアちゃんの話が気になってしまった。違うかしら?」

「はい、その通りです。」

「で、事情を聞いて、ほっとけなくなったのではないかしら?」

「…まるで見ていたかのようですね。」

驚いたようにアレク様が御祖母様おばあさまを見ている。

「まあ、 あなたは昔からそういう子だったから…。」

「???」

不思議そうに首をかしげるアレク様を見ながら御祖母様おばあさまは話を続けた。

「それでも男女が同じ屋根の下で暮らすというのはいかがなものかしら、しかも何もなかったとはいえ同衾してしまったもの。責任はとってもらいましょう。いいかしら?」

「覚悟はできているし、言い訳もしない。どんな咎でも受けよう。」

「ま、待ってください! 御祖母様おばあさま、もとはと言えば私が晩酌をお誘いしたのがきっかけですし! 罰を受けるのは私です!」

「リアちゃん、少し黙っていてね。」

慌てて、止めに入ったけど御祖母様おばあさまの笑顔の圧力で口を閉ざした。

「アレックス殿下、一つ質問よろしいかしら?」

「はい。」

「まだ国王になる気はない?」

「微塵もありませんね。」

アレク様が即答する。

「それなら、よかったわ。」





「では、アレックス殿下。リアちゃんと婚約してくださいな。」

御祖母様おばあさまはにっこりと笑って言った。


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