45 / 92
38話 みんなでお昼ご飯を食べました
しおりを挟む「「「うまいっ!!!」」」
私が作ったオムライスを一口食べてから、3人は一斉に声を上げた。
「2度目だがやはり美味しいな、このケチャップで味付けされたライスに上にかぶせているトロトロの卵焼きがたまらん!」
とアレクが言った。
「アレックス殿下はこんな美味しいものをずっと食べていたのですか! なんてうらめ… 失礼、羨ましい。」
お父様が恨めしそうにアレクを見ながら言う。
「アンジュの料理も世界一うまいと思っていたが、リアちゃんもそれに匹敵するくらいだ。よおし!きょうの夕飯もここで食べるぞ! リアちゃん、なんでもいいから夕飯も作ってくれないか?」
と御祖父様が食べる手を止めて『お願い!』という感じで目をウルウルさせながら聞いてくる。
「皆さんに喜んでもらえて嬉しいですわ。御祖母様方とも先ほどキッチンで話していたのですが、夜は『すき焼き』にしようと話していたのですが、アレク様、また私の家族とご一緒に食事してもよろしいですか?」
「もちろんだ。『すきやき』というのは食べたことがないから気になる。是非、作ってもらえないか。」
「ありがとうございます。はりきってお作りしますね。」
「本当にリアちゃんは、お料理が上手ね。さっきも私達が手伝う事なんてあまりなかったもの。」
アンジュ御祖母様がそう言うと、隣のエマ様も頷いた。
「まったくですわ、手際が良くて目分量で味付けできるのは普段からやっていたからね。すごいわ~。」
みんなにベタ褒めされて照れくさい。
「いえ、そんな大したものではないです。味付けも庶民向けですし、プロの料理人には負けますわ。」
「そんなことない。俺は今までこんなに料理がおいしくて、次も食べたいと思ったことはないぞ。それから、3時のおやつは『しゅわしゅわのスフレケーキ』を頼む。」
私は、可笑しくなってふふ、と思わず笑ってしまった。
1週間ほど一緒に過ごして気づいたが、どうやらアレクは意外と甘党らしい。先日、試しに作ったスフレケーキを1ホールまるまる一人で食べてしまった。
それから、ずっと「次はいつ作る?」と聞いてくる。
「わかりましたわ。本日のおやつはそれに致します。」
「そうか!」
アレクは、嬉しそうに笑ってそのまま食事を続けた。本当に美味しそうに食べるアレクは見ていて飽きないし作ってよかったと思う。今度は何を作って驚かそうかと考えるだけで楽しい。
そんなことを思いながらアレクが食べるのを見ていたらお父様の大きな咳払いがした。
「うぉーほぉん! リア、早く食べないとせっかくの料理が冷めてしまうよ。」
ああっ、しまった。はたから見たら私がアレク様を見惚れているみたいに見えていたのか。
「も、申し訳ございません…。」
恥ずかしくなって、俯き加減でオムライスを口に運んだ。
「まったく。ホント、心の狭い男だこと。」
アンジュ御祖母様が小さい声で何か言っていたようだけど恥ずかしさのあまり食べることに集中している私には聞こえなかった。
「ところでアレックス殿下。このお屋敷は最近買ったのかしら?」
食後のお茶をみんなで飲んでいると、御祖母様がアレクに聞いてきた。
「はい。官舎にも一応は自分の部屋がありますが、まあ、たまたまここの屋敷の元主人と懇意になりまして買い取りました。」
「なるほどね。なかなかいいお屋敷だわ、購入して正解だったのではないかしら。」
「ありがとうございます。」
「しかし、庭がちと寂しいな。もう少し手入れをすれば……。おお!! いいこと思いついたぞ!」
御祖父様がなにやら閃いたらしい。でもこういう時の御祖父様はろくでもないことを言いだしそうで嫌な予感がするなあ。
「王都にいる間は、この屋敷のご厄介になろう。アレックス殿下、その間にお屋敷の庭のリニューアルを私、自らやらせていただきたい! どうですかな?」
「へ?」
アレクはいきなりの提案にキツネにつままれた顔をしている。
「御祖父様! いくら何でも横暴すぎます!! そんなことを言いだすなんて、御祖母様からも何とか言ってください。」
「…まあ、でも。仮に婚約者でも結婚前の男女が同じ屋根の下で暮らすのは他に知られたらまずいわねえ。それに、私たちがこのお屋敷に来ているのはもうすでに知られていることだろうし……。アレックス殿下、しばらくの間、ここに滞在してもいいかしら?」
「私はかまいませんが…。ヴィクトリア嬢がメイスフィールド家に戻った方がいいのでは?」
「それがねえ、ヴィクトリアは療養中で今は領地にいることになっているでしょう? 領地にいったはずなのにすぐに戻ってきたらいろいろ勘繰られそうだし、あなたにも一芝居うってもらって陛下にリアちゃんとの婚約の話をしてもらわないといけないの。そのための布石として私たちがあなたのお屋敷にいることを知られた方がいい気がするのだけど。どうかしら?」
「わかりました。部屋も空いておりますし、すぐに使用人の手配を……。」
「いえ、今、使用人を雇うとなるとネズミが紛れ込む可能性もあるからこのままでいいわ。私達だって炊事洗濯くらいできます。」
「しかし、アンジュ様方にそんな使用人のような事はさせられません。」
「そんな細かいことは気にしなくていいのよ。」
「しかし‥‥。」
「まあ、どうせ少しの間になるわ。それまでにいろいろこっちも動きたいから、ここなら動きやすそうだったのだけど。無理なら…。」
「いえ、大丈夫です。此処をお使いになって構いません。ただ、アンジュ様が知っていることを全部教えてほしいのですが。」
アレクが御祖母様を真っ直ぐ見据えて言った。
「いいわ、約束しましょう。」
こうして、御祖母様達もこのお屋敷に住むことになった。
1
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる