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39話 職場復帰と気になる事件(side:アレク)
しおりを挟む「おはようございまーす! もう仕事に出て大丈夫なのか?」
執務室に入ると中にいるロイが少し驚いたように聞いてきた。
「ああ、もう大丈夫だ。一週間とはいえ、仕事も大分たまっているしな。」
そう言って自分の机に山積みにされている書類をみた。
これを処理するのに今日は1日かかるな…。
「俺がいない間、何か変わったことは? … そういえばお前もいなかったか。」
ロイは俺に成りすまして領地にいったがそのままトンボ帰りとなった。
「なかなか貴重な体験をさせてもらいました…。」
ロイが遠い目をして言った。どうやらリュウの背中に馬車を乗せてそれで帰ってきたらしい。俺としてはうらやましいのだが本人は2度とごめんこうむりたいとのことだ。
「ああ、そうだ。この一週間で失踪事件が数件起きているらしい。」
「なんだと?」
「まだ調査中だが、男女のカップルが1組、5日前から姿を消した。男の方が商家の一人息子で女がその使用人という事で男の親が交際を反対していたらしいんだが……。」
「それじゃ…。」
駆け落ちという奴では?
「駆け落ちかと思うだろ? だが、その失踪する前に男親がやっと二人の交際を認めたらしい。だから駆け落ちする理由がない。その夜に女の家に挨拶に行くと言ってそのまま姿を消したとさ。何か事件か事故に巻き込まれたのではないかと親達が捜索願をしてきた。」
「ふむ…。」
たしかに話だけ聞いていると駆け落ちや失踪するほどの理由が二人にはない気がする。
「それから4日前に15歳の少女が薬草を取りに森に入ったまま、帰ってきてない。これは今も捜索中だ、ギルドにも要請をだして人手を出してもらって探しているが未だに見つかっていないとのことだ。」
「15歳の女の子がなぜ森に?」
王都の近くの森は、ギルドの冒険者や騎士団が定期的に魔物を駆除しているからなかなか魔物と出会う事はないがまったくのゼロではない。薬草を取るにしても普通ならギルドを通して冒険者に護衛についてもらうことになる。
「それがなあ~、母と娘2人だけの家族で、母親が病気がちだったらしい。薬屋で買うお金がなかったらしくて娘は時々、森に入って薬草を取ってきてそれを煎じて母親に飲ませていたらしい。帰ってこない娘を心配した母親が病の体を引きずって騎士団まで来て娘を探してほしいと門番に縋り付きながら倒れたそうだ。今は国の施設の病院に見てもらっている。」
「そうか…。」
それは早く探し出してあげたい。が、騎士団とギルドの人数をもなると大人数だ、それでも探せないとなると厳しいようだが運悪く魔物に出会ってしまったか、人攫いにでもあったのか……。早く見つかるといいのだが。
「そして2日前に『カトレア』から娼婦が1人いなくなったそうだ。これは今朝、リリィから直接、俺に連絡してきた。」
「リリィが?」
『カトレア』は高級娼館でリリィはその娼館の女主人だ。
「ああ、お前にどうしても直接話したいことがあるんだってさ『最近、会いにも来て下さらないなんて冷たいお方だこと』と書いていたぞ、リリィがへそを曲げる前に会いに行けよ、モテる男はつらいねえ~。」
「おい、変なこと言うな。わかった、リリィには明日にでも行くと伝えておいてくれ。」
「それとさ、さっきから気になっていたんだけどお前が肩に乗せているそれって……。」
「ああ、リュウのことか。どうも俺の事が気に入ったらしくてな、ついてくると言ってきかないから。大人しくしていることを条件に連れてきた。」
「きゅきゅー、きゅい!」
(よろしくねー、ロイ!)
俺の肩には縮んだリュウが大人しく乗っていた。どうやらこの場所が気に入ったらしい。
「そ、そうか。(副団長とレッドドラゴンの組み合わせとか恐ろしい‥‥)」
「ああ、そうだ。ロイ、大量に干し肉を頼んどいてくれ。金は俺が払う。」
「わ、わかった。」
そう言ってロイは執務室から出て行った。
「さて、ではこの書類から片づけるか。」
いろいろ気になることはあるが、まずは目の前の束から処理していくことにして俺はペンを握った。
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