婚約破棄された私の就職先はワケあり騎士様のメイド?!

逢坂莉未

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43話 リリィさんの秘密

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「それは……。自分が担当した事件の関係者だから探していたとか?」

「私もそう思ったのだけどね。彼女にそのことを伝えたら一瞬だけど怯えたような目をしたの。」

「つまり、彼女はここへ来る前にローガンと何かしらの関わりあったと?」

「そうかもしらないわ。ローガンが来るのは珍しかったし、やけに親しげに彼女に話しかけていたそうよ。」

「なるほどな。」

「それに気になることがもう一つあるわ。」

一瞬だけリリィさんは私を見てからアレクに告げる。

「なんだ?」

「彼女がここに来てから、他の子たちにアレクあなたのことを聞いて回っていたらしいの。」

「なんだと?」

「どうも、あなたがいつここへくるのか知りたかったらしいわ。どこからかあなたがここに通っていると聞いたみたい。『いつ頃来るのか』とか『アレク様が来たらお目通りしたい』とか言っていたらしいわ。顧客の情報を漏らすのはご法度だから、その時は彼女を呼んで少し注意したのだけど…。」

「あの件は、俺は全然関わってないし、あの時期は別の件を抱えていたしなぁ。それに、ローガンあいつは俺が事件のことで口を出すのをひどく嫌がるからあまり関わらなかったのだが、少しあの件、俺も調べ直してみよう。」

アレクは難しい顔をしながら言った。
刑事をしていた時も似たような事は沢山あった。自分の担当していた事件に他の部署の人間が関わるのは誰も気分がいい気はしないだろう。

と、私は気になることが何点かあったので直接、リリィさんに聞いてみることにした。

「あの、少し聞いてもいいですか?」

「いいわよ~、私が答えられる範囲でなら。」

「ダリアさんは、アレク様に会った事があるとか?」

「いいえ、ないみたいだったわ。ただ、噂の『漆黒の騎士様』に会いたいと他の子に言っていたみたい。」

「おい、まだその変な通り名を言う奴がいるのか?」

アレクが渋い顔をしている。

「その名は、わ…俺も聞いたことがありますよ。貴族のご令嬢達はその名でファンクラブを作っている方々もいるとか、オモテになりますね。」

「やめろ。あいつらには追いかけまわされて迷惑しているんだ。」

「あら~、モテてるうちが花と申しますよ。」

リリィさんが嫌がるアレクを見て面白そうに笑った。

「質問はそれだけか?」

アレクはこれ以上揶揄われるのが嫌だったのか、私に話を振ってきた。

「あ、すみません。もう少しあります。アレク様について聞いて回ってと言っていましたが、ここに来るのがいつかということだけ聞いていたのですか?」

「そうねえ、どのくらいの周期で来るのかとか次はいつ来るのか聞いていたらしいわ。」

「では、アレク様自身については聞いてなかったと?」

「アレク自身について?」

「例えばですが、アレク様自身に興味があって会いたいというならどんなタイプの子が好きなのかとか、趣味嗜好は何か、どういったプレイが好みなのか気になるはず……。」

「ちょ、お前! いきなり何言いだすんだ!!」

アレクが顔を真っ赤にさせている。
しまった! つい刑事していた時みたいに『聞き込みモード』になってしまった。聞き込みの時は何故か羞恥心がなくなるんだよなぁ。
つい先日、お祖母様に『令嬢らしく』といわればかりなのに…。

「ぷっ、あっははははは! アレク、何この子。面白いんだけどー!!」

リリィさんが豪快に笑いだした。何だか先ほどより声も低い気がするのは気のせい?

「おい、素がでているぞ。」

「いやあ、この子面白いねえ~、思わず素が出ちゃったよ。驚いた?私はは男なんだ。アレクと同級生だったのだけど、私の親がすっごく悪い人でねぇ~、家がお取り潰しになった時にアレクに助けてもらったのよ。その時のお返しにで情報屋をしている。まあ女になったのは成り行きかなあ。……私を気持ち悪いと思う?」

あっけらかんと話していたリリィさんだったが、最後の言葉は少しトーンを落として不安そうに聞いてきた。

「全然思いません。むしろ納得しました。女性以上にお綺麗で最初にお会いした時は女神様ではないかと思いました。」

「…ふふ、本当にいい子ね。アレク、よかったね。こんな子が婚約者なんて羨ましい。」

「えっ?」

「昨日、ルイス様がいらっしゃったのよ。それで愚痴いって帰っていきましたわ。あなたのあのお父上じゃあ、ご苦労なさっているでしょう? ヴィクトリア嬢?」

リリィさんはにっこりと笑った。
最初からお見通しのようだ。変に男のふりをするんじゃなかった。

っていうか、お父様はここに来たりするのか。
何だかお父様の意外な一面を知ってちょっとだけ複雑な気持ちになったヴィクトリアだった。


「…すみません。」

「いいわよぉ~。アレクが慌てる顔を久しぶりに見て笑わせてもらったから。……ああ、そうそう先ほどの質問の答えは『ノー』ね。そういったことを聞かれた子はいなかったわよ。」

ふむ、ダリアがアレクに会いたがっていたのは、好意とかではなく。何か別の目的があったのではないか。好意があったのなら、相手にどうやったら興味を持たれるのか知りたくなるはず。
う~ん、これだけでは情報が足りない。

そんなことを思いながらヴィクトリアはメモ帳にペンを走らせ書き込んでいく。その様子をリリィとアレクは見ていた。

「なかなか、面白い子のようね。さすがはルイス様の子ってとこかしら。」

「ああ、次は何をやらかすのか気になって目が離せん。」

「……あなたが、そういう目をするとは驚いたわ。」

ヴィクトリアをじっと見つめるアレクの瞳には今までと違う光があった。
リリィのつぶやきはアレクには届かなかった。

「ん? なんか言ったか?」

「ううん、なんでもないわ。」


「じゃあ、ダリアがいなくなった時の話を聞かせてくれるか?」

「3日前の朝、彼女の部屋が荒らされていて彼女自身もいなくなっていたわ。荒らされてはいたのだけど、貴重品とかお金には一切、手を付けられていなかった。彼女のベッドは綺麗に整えられていて争った形跡もなし。」

「荒らされた部屋はそのままか?」

「もちろん、あなたに見てもらうためにそのままにしているわ。ここの周りも用心棒たちを使って探させたけど見つからなかったわ。一人で出たのなら部屋を荒らす必要はないし、そんな素振りもみせなかったから気になってね。」

「なるほどな‥‥。」

「その部屋を見たいなら案内させるわ。」

「頼む。ヴィクトリアはどうする?」

アレクが私に聞いてきた。

「あら、ヴィクトリアちゃんは私とここでお話しときましょう。そういうことはアレクに任せとけばいいのよ。おいしいお菓子があるのよ、一緒にたべない?」

アレクと一緒に行くつもりだったが、リリィさんにそう言われたら断るわけにも行かなくてここに残ることにした。



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