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69話 不快な取り調べ

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翌朝、目を覚ますとテーブルには既に朝食が用意されていた。私が起きる前に、誰かが用意していったのだろう。少し冷めかけたスープとパンを食べ終わると見計らったように扉をノックされた。

「どうぞ。」

「失礼いたします。食器を下げに参りました。」

見たことのない侍女が入ってきた黙々と食器を片付ける。私は昨夜、この部屋に入れられた後に城内が騒がしかったのが気になり聞いてみることにした。

「昨日の夜、何かあったの?」

ピタッと侍女の動きが止まったがまたすぐに片づけを続ける。

「あの……。」

「申し訳ございません。口をきいてはならないと厳命されております。私から何も申し上げられません。」

「そう……。」

侍女は片付けが終わると足早に部屋を出ていった。

このままここにじっとしていられない。私に罪を擦り付けようとしている人物がまだ何かたくらんでいるのかもしれない。昨夜の騒ぎの詳細も知りたい。どうすればいいのか………。

バンッ

「なっ!?」

突然、部屋の扉が開いた。ノックもせずに入ってきたのは眼鏡をかけた神経質そうな細身の男と、護衛が二人その男の後ろに立っている。

「いきなり扉を開けるなんて非常識です! あなた達は誰です?」

思いがけない訪問者達にヴィクトリアは警戒心を高めた。何か危害を加えようとするのなら反撃するのみ。

「フンッ!! 貴族牢に入れられているのに食事を完食するほどの図太い令嬢だと聞いていたが、これくらいで驚かれるとは。」

「………。」

「ああ、申し遅れました。私は聖女襲撃事件の調査官を務めせていただくコンデムと申します。今回の件で貴女からもお話を聞かせていただきたくて参りました。言っておきますが、正直に罪を認めてすべてを話された方が貴女の身のためですよ。」

頭ごなしに私が犯人だと決めつけている言葉に苛立ちを覚える。

「身に覚えのない事を認めることはできません。」

「フンッ、その減らず口がいつまで続くでしょうかね。」



それから始まった、聞き取り調査とは名ばかりであくまでもヴィクトリアが主犯だと決めつけて事実確認をしてくるコンデムに怒りがわいてきた。

「……というわけで、貴女は破落戸にクララ嬢の殺害を命じたということで間違いないですね。」

「間違いです。私はその男たちに会っておりませんし、クララさんを殺害しようとも思っていません。」

「ははは、面白いこと言いますね。貴女はクララ嬢を殺したいくらいに憎んでいるではないですか。……貴女の婚約者アレックス殿下とクララ嬢が親しくされているのを知って嫉妬に狂ったのでしょう? 男たちと貴女が密会をしていた証人もいるのです。この期に及んで言い逃れはできませんよ。」

「……私はそのようなことで嫉妬などいたしません。この王宮に来てから一度もでておりません。これが事実です。」

誰が何と言おうと認めるわけにはいかない。

「フンッ、往生際が悪いですねぇ~。貴女は少し痛い目に合っていただかないと正直に話してくれないようだ……。」

嫌な笑みを浮かべたコンデムが後ろに控えていた護衛に目で合図をした。

護衛達はすぐにヴィクトリアの両脇に立ちそれぞれ腕を抑えて無理やりヴィクトリアを跪かせた。

「っ!! いきなり何をするのですか!?」

押さえつけられながら見上げるとコンデムはニヤリと笑った。



「なあに、嘘をつく悪い子にお仕置きをするだけですよ。」


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