5 / 14
本編
4話
しおりを挟む「お前達の三文芝居はこの辺にしておこうか。」
誰もが固唾を飲み込んで見守る中、アーノルドがイーサンの腕を掴み上げながら怒気を含んだ声で言った。
「ア、アーノルド殿下っ、これはあまりにもこいつが自分の罪を認めないので……。」
「黙れ!!」
「ひぃいい!」
アーノルドに一喝されてイーサンはその場にへたり込んだ。
「お前はレーナ嬢という素晴らしい婚約者がいるのにもかかわらずそこにいる阿婆擦れと親密にしていたのは周知の事実。お前たちの方こそ不貞行為でレーナ嬢から婚約破棄されてもおかしくないのだぞ!!」
「アーノルドさまぁ~、違うんですぅ、ほんとに私はレーナさんにいじめられて……。」
いつの間にか近くに来ていたミアがアーノルドの腕に縋りつくように目に涙を浮かべながら訴えようとしたがいつの間にか現れた護衛に拘束された。
「きゃっあ、な、なにするのよお!」
「俺に気安く触るな、馬鹿がうつる。それにいつお前に名前を呼ぶことを許した?」
「で、殿下。ミアは何も悪くありません!! すべてはレーナが……。」
ミアが護衛によって拘束されたのを見てイーサンは慌てて弁明しようとしたがアーノルドから無言で睨まれて押し黙ってしまった。
「お前はこの女がレーナ嬢によって虐められたと言ったな。だがそれは絶対にありえない。」
「何故ですか!」
「お前達はクラスが違うから知らないのかもしれないが、俺とレーナ嬢のクラスは学園で特に優秀な者が集められた特級科だ。普通のクラスとは授業の内容も時間割も異なるし休み時間もずれている、そんな中でそこの女をレーナが虐めることなどできるわけない! ましてや彼女は1年のときから生徒会の補助を行い昨年と今年は副生徒会長として私の下で働いてもらっていた。放課後は俺も一緒にいたからレーナにそんなことをする時間なんてなかったぞ。」
「そ、そんなことないですぅ~、わたしはほんとに… あ!レーナさんの取り巻きに虐められて……。」
「おいおい、お前はさっきレーナ嬢から直接、虐めを受けたと言っていなかったか? あと本人に階段から突き落とされたとかとも言っていたな。」
「それは本当です! 運よく助かったんですけどぉ、足に痣が……。」
ミアがドレスの裾を捲り上げると足首に包帯が巻かれていた。が、怪我をしているというのにしっかりと踵の部分が高いヒールを履いていた。
「ほう、それなら面白い物があるから今から皆に見てもらおうと思う。」
アーノルドがそう言うとどこからともなく数人の魔術師たちが現れて会場の見やすい位置に白い幕が張られその前に魔道具らしきものが置かれた。
「これは、我が国の優秀な魔術師達が最近作り出した、記憶装置というものだ。実験的に学園の要所に撮影機を設置させてもらい撮影したものだ。なかなか興味深いものが撮れたのでな、皆に見てもらおうと思って用意させた。」
そして、そこにはミアが自分でノートを破ったり、何故か自分から池に飛び込んで助けをよんだり、最後の方には階段の3段目辺りからゆっくりと落ちてワザと大声をあげて人を呼ぶところが映されていた。
「なっ!! こんなの嘘よ!! 全部デタラメだわ!!!」
今までの自分の行動がしっかりと記録に残されていたことにミアは半狂乱になって否定する。
「もっと面白い物があるぞ。」
そこにはいろいろな男子生徒達とイチャイチャしているミアの姿があった。
「もっと過激なものもあるがこれ以上は、女性もいるので止めておいたぞ。」
「そ、そんな!! ミア、嘘だろ!? 俺だけだって言ったじゃないか!!」
「違う! 違うの!!」
「お前たちの話は後でゆっくりと二人だけでしろ、それよりも重要な話がある。」
イーサンとミアが言い合いを始めたが、アーノルドはそれを制止させた。
「イーサン・ロドリゲス、お前とレーナ・オルコット嬢の婚約は昨日を以て白紙になっている。お前の不貞証拠をロドリゲス侯爵とオルコット侯爵に見せて話し合いの結果、婚約自体を白紙にするということになった。卒業までは明かさないつもりだったがお前の馬鹿な行動のおかげで俺から話すことにした。イーサン、お前のお父上はたいそうお怒りの様子だったぞ。」
「そ、そんなあ‥‥。」
打ちひしがれたイーサンは大人しく護衛に連れられて会場を出て行ったがミアだけはギャーギャー騒ぎながら無理矢理、会場から連れ出されていた。
「アーノルド殿下、助けて下さりありがとうございます。」
怒涛のように話が展開してまだ混乱しているが、レーナは助けてくれたアーノルドになんとかお礼を言うことができた。
「い、いや! 俺は大したことはしていない…、その……。」
何だか大きい体をもじもじさせ始めたアーノルドにレーナは首を傾げる。
「レーナ嬢!!」
「はぃいい!!」
いきなり大声で名前を呼ばれ飛び上がりそうになった。
そしてアーノルドはレーナの前で片膝を突いてレーナを見上げた。
それを見ていた会場にいる人々はさっきとは違う緊張感に包まれた。
(まさか王子殿下。今、言う気なのか!?)
「レーナ嬢、ずっと前から好きだった。婚約者がいると知って諦めようと思ったがこうなったからには自分の気持ちが抑えきれなくなった。俺と結婚してもらえないだろうか!!」
アーノルドの声が響き渡った。
「ええ!? あ、ごめんなさい……。」
シーンと静まる中、レーナの申し訳なさそうな小さな声が聞こえた。
54
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
とある断罪劇の一夜
雪菊
恋愛
公爵令嬢エカテリーナは卒業パーティーで婚約者の第二王子から婚約破棄宣言された。
しかしこれは予定通り。
学園入学時に前世の記憶を取り戻した彼女はこの世界がゲームの世界であり自分が悪役令嬢であることに気づいたのだ。
だから対策もばっちり。準備万端で断罪を迎え撃つ。
現実のものとは一切関係のない架空のお話です。
初投稿作品です。短編予定です。
誤字脱字矛盾などありましたらこっそり教えてください。
【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。
鏑木 うりこ
恋愛
クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!
茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。
ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?
(´・ω・`)普通……。
でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。
怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~
美袋和仁
恋愛
ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。
しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。
怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。
なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。
断罪されそうになった侯爵令嬢、頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるが二重の意味で周囲から同情される。
あの時削ぎ落とした欲
恋愛
学園の卒業パーティで婚約者のお気に入りを苛めたと身に覚えの無いことで断罪されかける侯爵令嬢エリス。
その断罪劇に乱入してきたのはエリスの友人である男爵令嬢ニナだった。彼女の片手には骨付き肉が握られていた。
【短編】お姉さまは愚弟を赦さない
宇水涼麻
恋愛
この国の第1王子であるザリアートが学園のダンスパーティーの席で、婚約者であるエレノアを声高に呼びつけた。
そして、テンプレのように婚約破棄を言い渡した。
すぐに了承し会場を出ようとするエレノアをザリアートが引き止める。
そこへ颯爽と3人の淑女が現れた。美しく気高く凛々しい彼女たちは何者なのか?
短編にしては長めになってしまいました。
西洋ヨーロッパ風学園ラブストーリーです。
【短編】将来の王太子妃が婚約破棄をされました。宣言した相手は聖女と王太子。あれ何やら二人の様子がおかしい……
しろねこ。
恋愛
「婚約破棄させてもらうわね!」
そう言われたのは銀髪青眼のすらりとした美女だ。
魔法が使えないものの、王太子妃教育も受けている彼女だが、その言葉をうけて見に見えて顔色が悪くなった。
「アリス様、冗談は止してください」
震える声でそう言うも、アリスの呼びかけで場が一変する。
「冗談ではありません、エリック様ぁ」
甘えた声を出し呼んだのは、この国の王太子だ。
彼もまた同様に婚約破棄を謳い、皆の前で発表する。
「王太子と聖女が結婚するのは当然だろ?」
この国の伝承で、建国の際に王太子の手助けをした聖女は平民の出でありながら王太子と結婚をし、後の王妃となっている。
聖女は治癒と癒やしの魔法を持ち、他にも魔物を退けられる力があるという。
魔法を使えないレナンとは大違いだ。
それ故に聖女と認められたアリスは、王太子であるエリックの妻になる! というのだが……
「これは何の余興でしょう? エリック様に似ている方まで用意して」
そう言うレナンの顔色はかなり悪い。
この状況をまともに受け止めたくないようだ。
そんな彼女を支えるようにして控えていた護衛騎士は寄り添った。
彼女の気持ちまでも守るかのように。
ハピエン、ご都合主義、両思いが大好きです。
同名キャラで様々な話を書いています。
話により立場や家名が変わりますが、基本の性格は変わりません。
お気に入りのキャラ達の、色々なシチュエーションの話がみたくてこのような形式で書いています。
中編くらいで前後の模様を書けたら書きたいです(^^)
カクヨムさんでも掲載中。
王太子から婚約破棄……さぁ始まりました! 制限時間は1時間 皆様……今までの恨みを晴らす時です!
Ryo-k
恋愛
王太子が婚約破棄したので、1時間限定でボコボコにできるわ♪
……今までの鬱憤、晴らして差し上げましょう!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる