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七月七日の不運
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夕方五時。僕は、台所で忙しそうに夕飯の支度をしている母さんの目を盗んでこっそり家を抜け出した。
なるべく音をたてないように玄関のドアを開け閉めして、ガレージに置いてある自転車を取り出すと、陽咲と待ち合わせをした近所の公園へと急ぐ。
先に着いたのは僕。陽咲は無事に家を抜け出せるだろうか。
僕の家も陽先の家も、門限は五時。習い事や塾のとき以外で、五時を過ぎてから家を抜け出すことはまずない。
今日の計画は、僕か陽咲のどちらかが親に見つかってしまったらアウトだ。
雨による劣化でペンキが剝がれかけている公園の時計を見上げながら少し心配していると、しばらくして自転車に乗った陽咲がやってきた。
「ごめん、ごめん。遅くなって」
僕の隣で自転車のブレーキをかけた陽咲が、眉尻を下げて笑う。
「大丈夫だった?」
「大丈夫、大丈夫。マンションの駐輪場で買い物帰りの大晴のママと鉢合わせしそうになっちゃって焦ったよ」
「え、それ、ヤバいじゃん」
「うん。ちょっとドキドキしちゃった。でも隠れてちゃんと見つからないようにしたから大丈夫」
眉根を寄せる心配性な僕を、陽咲が呑気に笑いとばす。
「行こう。行き方は事前に調べてあるんだ」
陽咲はそう言うと、自転車のペダルに足をかけて、僕を誘導するように漕ぎ出した。
「行ったことある場所なの?」
陽咲を追いかけながら、斜め後ろから少し声を張り上げる。追いついて隣に並ぶと、陽咲は僕のほうに顔を向けて「うん、幼稚園くらいのとき」と頷いた。
「お父さんが、自転車で連れてってくれたの。周りの景色が少しずつ田んぼと畑だらけになっていって、それからしばらくしたら、ぽわーってした小さな光が空中をいっぱい飛んでて。綺麗だなーって思ったのを覚えてる」
「へぇ」
陽咲の話を聞いて、昼間に図鑑で見たホタルが舞う川辺の景色の写真を思い出す。暗闇の中に点々と浮かぶ白い光は、写真で見ただけでも綺麗だった。
実際に見たら、もっと綺麗なのかな。
頭の中でふんわりと想像が膨らんで、楽しみになってくる。
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