消えていく君のカケラと、進まない僕の時間

碧月あめり

文字の大きさ
11 / 63
アイスクリーム頭痛

しおりを挟む

「暑いな……」

 告白の返事をするのに普段着のTシャツとデニム短パンではよくないと思って、ちゃんとメイクをして、シフォンブラウスに白いスカートを合わせてきたけど。こんなにも待たされて汗だくになるくらいなら、普段着のTシャツで来ればよかった。

 ため息をこぼしつつ、道路を挟んで向かい側にあるコンビニに視線を向ける。

 コンビニで冷たい飲み物でも買って、少し涼んでから帰ろうかな。

 未だ既読にならないラインのメッセージをもう一度チェックしてコンビニに移動しようとしたとき、小学校の校庭側の曲がり角から、わたしと同じくらいの年の男がふたり、並んで出てきた。ひとりが歩いて自転車を押していて、それを挟んで反対側にもうひとり。

「陽咲~、お待たせ」

 自転車を押しながら手を振ってきたのが、わたしを呼び出した藤川 大晴。その隣を気だるそうに歩いてくるのは、同級生の矢野やの 蒼月あつきだった。

 どうして、告白の返事をするのに蒼月まで……。

 二十分以上も人を炎天下で待たせたうえに、告白の返事とは無関係な人まで連れてきてへらへら笑っている大晴が何を考えているのかまるでわからない。

 高校生になってから校則に引っかからないくらいの茶色に染めた髪をふわりと揺らして笑っている大晴を少し離れたところから無言で睨みつけると、蒼月のほうがわたしのことを無表情でジッと見てきた。

 蒼月と顔を合わすのは、二週間ぶりのはずだ。夏休み前に一度話したくてラインをしたら、既読はついたけれど、蒼月から返信はなかった。

 わたしが軽く挨拶するように頭を下げると、蒼月が無表情のままほんの少し目を眇める。

 メガネの奥からわたしを見据える蒼月のまなざし。切れ長で一重のキリッとした蒼月の目は、無表情だと少し怖い。きれいだけれど、感情がイマイチ読めない。

 それとなく蒼月から視線をはずしながら、昔はここまで感情の読めない子ではなかったのになと思う。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

処理中です...