神様の御使いに、婚約指輪の約束を

碧月あめり

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10 years ago

《3》

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「おまえ、近頃毎日ここに来てるな」

 突然に話しかけられた彩寧は、ビクッとして目を開けた。両手を胸の前でくっつけたまま振り向いて、さらにびっくりする。

 さっきまでたしかに誰もいなかったはずなのに。彩寧の隣に男の子が立っていたのだ。

 年は彩寧と同じくらいのようだが、男の子は彩寧が見たこともないような変わった格好をしている。

 彩寧が通う小学校の男の子たちはTシャツに細身のズボンを履いている子がほとんどなのに、隣に立っている男の子は濃い青の着物と袴を履いている。

 よく見ると、足元も草履で、左足首に結んだ赤い紐には小さな金の鈴が付いていた。

 男の子の髪の毛はつやつやと光る銀色で、目は綺麗な青紫だ。

「そんなに大切なのか? おまえの願い事」

 男の子が彩寧の目をジッと覗き込んでくる。男の子の青紫の瞳は綺麗だけれど、その双眸が彩寧心の中までを覗き込もうとしているようで、少し怖かった。

「大切だよ、すっごく大切。だからどうしても、神様にわたしのお願い事を聞いてもらわないと困るの」

「ふーん」

 男の子が頷くと、チリンと鈴の鳴る音がする。

「だったら、おれからも神様に頼んでやろうか」

「え? もしかして、あなた、神様と知り合いなの?」

「まぁな」

「すごい!」

 目を輝かせる彩寧を見て、男の子がふっと大人びた表情で笑う。

「ねえ。神様にお願いをきいてもらうには、どれくらいお金が必要? わたし、お財布にたくさん持ってきてるの」

 彩寧は興奮気味にそう言うと、がま口の財布を開いてみせた。そこには、おもちゃ銀行のお札や硬貨がいっぱいに入っている。彩寧の全財産だった。

「そんなおもちゃ、必要ない」

「お金、いらないの?」

 おばあちゃんが、お願い事をするときには《お賽銭》が必要なんだと言っていたのに。

 彩寧が財布の中のプラスチックと厚紙のお金に視線を落とすと、男の子がバカにするように顔をしかめた。

「いらない。そんなものに価値はない。それより……」

 男の子が彩寧の左手をつかむ。そのまま強く引っ張られたせいで、がま口財布が落ち、おもちゃのお金が地面に散らばった。
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