君との恋はシークレット

碧月あめり

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8th Secret.意地悪な命令

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「動画消して、このメガネも返してほしいならさ、最後にひとつだけオレの言うこと聞けよ」
「言うこと聞いたら、動画は消してもらえるの?」
「言うこときくなら、な」

 含みを持たせた黒沢くんの話し方に、少しいやな予感がした。

 どうせ、いいことじゃないんだろう。

 だけど……。聞いてみるだけの価値はある。

 黒沢くんのお願いを聞くかどうかは、内容次第だ。

「条件を聞いてから考えさせて」

 表情をうかがうように上目遣いに黒沢くんを見た、そのとき。

「山田さん、オレと付き合ってよ」

 黒沢がにこりと笑いかけてきた。

「……え?」

 冗談なのか本気なのかわからない言葉に困惑していると、黒沢くんがスマホの画面をわたしに見せてくる。

 そこに表示されているのは、わたしが教室で結城くんに話しかけている動画。

「山田さんがオレと付き合うなら、この動画消してあげてもいいよ」

 黒沢くんが画面の端っこのゴミ箱マークに指をかけて、わたしの出方をうかがうかのように目を細める。

 綺麗で意地悪な、黒沢くんの黒い笑み。それを見れば、彼がわたしをからかっていることなんてすぐわかる。

 黒沢くんはべつに、わたしと本気で付き合いたいと思ってるわけじゃない。

 だって、今までどれだけ頼んでも消してくれなかったのに。

 もしわたしが「付き合う」ってうなずけば、「冗談だ」って大笑いするに決まってる。

 それがわかっているのに、黒沢くんの言葉に胸がきゅーっと切なくなった。

「どうする?」

 黙り込んだわたしの顔を、黒沢くんが横からのぞきこんでくる。

 黒沢くんはわたしの反応を見てからかってるだけだ。

 本気じゃない。本気にしちゃいけない。

 頭の中で必死で言い聞かせているのに、胸の息苦しさも心音の高鳴りも抑えられない。

 わたし、ほんとうにどうしちゃったんだろう……。

 ぎゅっと手を握りしめると、結城くんのアクスタの形を感じる。

 視線を落とすと、結城くんがわたしに笑顔を向けてくれていて。それで、ようやく少し冷静になれた。

「冗談やめて。付き合うわけない」

 眉間に力を入れて、黒沢くんのことをにらむ。

 動画を撮られて以来、黒沢くんからの命令を拒否するのは初めてだ。

 理由はそれだけじゃないと思うけど、ほんの少し声が震える。

 どうせからかってるだけなんだから、わたしが断ったって黒沢くんは気にしない。

 そう思っていたのに、わたしの返事を聞いた瞬間、黒沢くんの顔からすっと笑みが消えた。

 無表情……、というよりは、少し怒っているみたいな顔をしている。

「あ、っそ……。じゃあ、この動画はこれからもオレの手元に置いとくから」

 低い声でそう言うと、黒沢くんがスマホをしまって立ち上がる。

 忘れものを取りに来たと言っていたはずなのに、黒沢くんはそのまま何も持たずに教室から出て行ってしまった。

 黒沢くん、なんかわたしに怒ってた……?

 からかわれたのも脅されてるのもわたしなのに。なんで黒沢くんが怒るのよ。

「わたし、なにか間違ったこと言った?」

 手の中の結城くんに尋ねてみるけど、結城くんは優しく微笑むだけで何のアドバイスもくれない。

 黒沢くんがからかってるってわかってても、「付き合う」って答えればよかったの?

 これまでたくさん、恋愛マンガでいろんな恋の話を読んできた。

 モデルの仕事で、ファンを名乗る子から「好きです」言ってもらえたこともあった。

 だけど、リアルで告白なんてされたことのないから正解がわからない。

 それでも、黒沢くんのことを考えたら胸が痛くて苦しくなる。

 今のわたしにわかっていることた、ただそれだけ。
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