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1.たぶん、視えてはいけません。
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しおりを挟むどうしてそんな言い方をするのかと言うと……。
駅のホームでにこにこと手を振っている彼の様子が、どう見てもあきらかにおかしいからだ。
学校帰りなのにカバンを持ってないってところも変だけど、それ以上におかしいのは彼の身体だ。
さっきから、ホームを歩く人たちがみんな、3両目の乗り場の前に立っている彼の身体をどんどんと通過していっている。
何人もの人にぶつかられているのに、彼の身体はビクともしない。通過していく人たちも、自分が彼とぶつかっている人に気付かない。というより、たぶん、彼がそこに立っていることに気付いていない。
どうやら、わたし以外の人には彼の姿が見えていないし、声も聞こえていないようなのだ。
何あれ。どういうこと……?
もしかして、見てはいけないものが視えているんじゃ……。
わたしは青南学院の制服を着たイケメンから目をそらすと、1両目の乗り場のほうに速足で歩いた。
ほんとうは地元の駅で降りるときには3両目に乗っておくと改札が一番近いのだけど……。背に腹は代えられない。
「待って、衣奈ちゃん! 行かないで!」
イケメンが必死な声で呼びとめてきたけど、もちろん全力で聞こえていないフリ。
さすがにこの状況では、わたしもおせっかいを発動できない。
ホームに入ってきた電車に乗り込むときにチラリと見たら、彼は3両目の乗り場の前で立ち止まったままでいた。
あんなに必死に呼び止めてきたくせに、こっちまで追いかけてくることはしないらしい。
それにしても、どうしてあの人はわたしの名前を知ってるんだろう。
疑問に思ったけれど、その理由をあまり深く考えたくはなかった。
だってたぶんあの人は、《視えてはいけないもの》だから。
なるべく早く忘れてしまおう。
わたしはため息を吐くと、空いていた座席を見つけて腰をおろした。
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