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2.憑いていっちゃダメですか?
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しおりを挟む次の日の朝。
いつものように地元の駅から3両目の車両に乗り込んで、高校の最寄り駅で降りたわたしは、目の前に現れた人の姿に心臓が止まりそうなほど驚いた。
「おはよう、衣奈ちゃん」
駅のホームの3両目の乗り場の前。そこに立っているのは、昨日の放課後に見かけた青南学院の制服を着たイケメン男子高校生。
笑顔でわたしに手を振ってくる彼の身体を、わたしのあとから電車を降りてくる人たちがあたりまえみたいにどんどんすり抜けていく。
電車を降りたすぐの場所で思わず足を止めてしまったわたしは、後ろから降りてくる人たちに押されたりぶつかられたり。邪魔者扱いされて舌打ちされたりしているのに、同じように3両目の乗り場の前に立っているイケメン男子高生は、誰からも邪魔者扱いされていない。
その理由はおそらく……、わたし以外の誰にも彼の姿が視えていないから。
昨日の放課後の時点でうすうす気が付いていたけれど、この人はたぶんユーレイ的ななにかだ。
そうじゃないと、彼の姿や声を誰も認知している様子がないことや、通行人が彼の身体を突き抜けて進んで行くこと、彼が昨日と全く同じ姿で同じ場所に立ち続けていることに説明がつかない。
でも、どうしてわたしだけに彼の姿が視えているの……?
わたしは人になつかれやすいタイプではあるけれど、特別霊感が強いタイプじゃない。だから、この不思議な状況が少し怖かった。
「今日も衣奈ちゃんに会えてよかった」
血の気が引いて冷たくなった指先を手のひらにぎゅっと握り込むと、やたらと色白な彼がわたしに向かって嬉しそうに微笑みかけてくる。
その笑顔も口ぶりも、まるでわたしのことをよく知っているみたいだ。わたしは彼の姿に全く見覚えがないのに。
どこかで会ったことがある人……?
それともわたし、知らないあいだに彼から恨みでも買ったの……?
「衣奈ちゃん、あのさ」
必死に考えていると、目の前の彼がなにか言いたげにわたしのほうに手を伸ばしてくる。
え、なに……。どうしよう。
ビクッとして思わず一歩後ずさると、後ろから電車を降りてきていたサラリーマンに背中がぶつかった。
「おい……」
20代後半くらいの男性に不機嫌そうな顔でじろりと睨まれて、またビクッとなる。
「すみません……」
目の前には得体の知れない男子高校生の、たぶんユーレイ。後ろには、怒った生身のおとなの人。
その両方に前後を塞がれて泣きそうになっていると、「衣奈」と誰かが横からわたしの腕をつかんで引っ張った。
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