今日も、由井くんに憑けられています…!

碧月あめり

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2.憑いていっちゃダメですか?

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「すみません、こいつ俺のツレなんです」

 そう言ってサラリーマンに頭を下げて、わたしをその場から引きずりだしてくれたのは、幼なじみの矢本やもと秋成あきなりだった。


「アキちゃん……」

 同じ高校に通っている小学校のときからの幼なじみ。アキちゃんの出現に、緊張が解ける。


「変な場所で立ち止まってたらダメじゃん」

「ごめん、助けてくれてありがとう」

「おう、気を付けろよ」

 アキちゃんが、わたしの肩をぽんと叩きながらにっこりと笑いかけてくる。そんなやりとりの間に、サラリーマンの男性はいなくなっていた。

 だけど、横顔になにか別の視線を感じる。

 ふと見ると、3両目の車両の乗り場の前に立ちすくむイケメン男子高生のユーレイが、ものすごく怖い顔でわたしたちを——というよりは、アキちゃんのことを凝視していた。


「衣奈ちゃん、それ、誰?」

 3両目の乗り場からは少し離れたところにいるのに、怨念のこもったみたいな彼の低い声がわたしの耳に響いてくる。

 その声はやっぱりわたしにだけ聞こえているらしく、アキちゃんはまったく気付いていないみたいだ。

 わたしはともかく、アキちゃんが変なユーレイに取り憑かれてしまっては困る。


「アキちゃん、急ごう」

 わたしはアキちゃんの肩を押すと、怖い顔でこちらを見つめてくる男子高校生のユーレイから遠ざけた。

 3両目の乗り場の前に立っている彼は、昨日と同様そこから動けないらしく。わたし達のことを怖い顔で睨んでくるものの、追ってはこない。

 あそこから動けないってことは……。自縛霊とか、そういうやつなのかもしれない。


「どうか、放課後までには成仏していてください……」

 駅の改札を出たあと小声でぶつぶつ祈っていると、アキちゃんがわたしのことを変な目で見てきた。

「どうした、衣奈? なんか疲れてる?」

「ぜんっぜん! 元気だよ」

「それならいいけど。衣奈は基本的に真面目でしっかりしてるけど、たまにさっきみたいに抜けてるときあるから心配だわ」

 アキちゃんが眉をハの字に下げて笑いながら、わたしの頭に手をのせる。

 手のひらの大きなアキちゃんに、頭をつかまれるようにぐしゃぐしゃと撫でられて、ドキドキと、朝から心音が速くなった。

 アキちゃんがこんなふうにわたしの頭を撫でるのは、小学生のときからやってるクセみたいなもの。

 わたしはアキちゃんに触られるとドキドキしてしまうけど、アキちゃんのほうは、なんとも思っていないからこそ気安くわたしに触る。

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