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5.それは、デートってことですか?
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しおりを挟む朝起きると、今日も目の前に、青白くて綺麗な顔をした男の子の寝顔があった。
布団もかけず、黒の制服のブレザーを着たまま背中を丸めて眠っているユーレイの男の子。
初めの数日は、目覚めるたびに驚いて悲鳴をあげていたけど……。さすがに同じことが一週間も続くと、あまり驚かなくなった。
学校の最寄り駅のホームで出会ってから一週間以上が経つが、由井くんは未だにわたしに憑いたまま離れてくれない。
彼が忘れている記憶を思い出す様子もなく、アキちゃんの友達からの情報も今のところなし。
自分でもなにか由井くんに関する情報を調べようと、ネットでニュースを検索してみたり、図書館に行ってなにか手がかりになりそうな記事が載っていないか新聞を調べてみたり……。思いつくことはいろいろやってみたけど、由井くんに関する手がかりはなにもつかめていない。
この一週間、わたしがいろいろと手をつくしているのに、肝心の由井くんのほうにはあまり記憶を思い出すつもりがないらしい。
毎朝わたしのベッドで目覚めて、わたしにくっついて学校に行って、帰り道にスーパーに寄って。
家に帰って家事をしているときは、わたしの後をつきまとって、クレイに牙を剥かれて。部屋でわたしが勉強するのをぼんやり観察して、わたしが眠るときに隣にふわりと横になる。
由井くんはわたしのそばで、もう一週間ほど、そんな生活をしている。
最初は、どこに行くにも由井くんが半径一メートル以内のところにいることが落ち着かなかったけど。(トイレやお風呂のときは、ドアを隔てて少し離れたところで待ってくれてる……)
だんだんと感覚が麻痺してきて、由井くんが近くにいることがふつうになってきた。
そして、ふと冷静になった瞬間に、彼がいることがふつうだと思い始めている自分がヤバいなと思う。
由井くんは、だいたいわたしよりも起きるのが遅い。
今日も変わらず綺麗な由井くんの寝顔を眺めて、ふぅーっとため息を吐くと、彼の長い睫毛がわずかに揺れた。
そろそろ、目覚めるのかもしれない。
わたしはベッドから這い出すと、由井くんが目を覚ます前に着替えを済ませた。
洗面所で顔を洗ってくる余裕、あるかな……?
由井くんが眠っているのを確かめてから部屋のドアを開けようとすると……。
「衣奈ちゃん、どこ行くの……?」
掠れた声の由井くんに呼び止められる。
ぐっすり眠っているようでも、由井くんは結構敏感で。わたしがどこかへ行こうとすると、すぐに気が付いて目を覚ますのだ。
「顔洗って、ごはん食べようと思って」
「ふーん。あれ、今日は制服じゃないの」
「うん、土曜日だからね」
そう言うと、由井くんがまだ眠そうな顔で「そっか」とうなずいた。
それから、音もなくベッドから起き上がってわたしのほうにふらりと近付いてくる。
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