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9.君にちゃんと触れたいです。
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しおりを挟む「信じてるよ」
真っ直ぐに由井くんを見つめて答えたら、彼が困ったように、泣きそうに、少しだけ目を細めた。
「でも、由井くんの身体はどこに行っちゃったんだろう……」
「わからない。おれが気づいたときには、ベッドはもう空だったから……」
「そうなんだ……」
由井くんの身体になにかあったのかな……。それは、ユーレイ状態の彼がここにとばされてきたことと関係があるのかな……。
「とりあえず、看護師さんに聞きに行ってみよう」
「うん」
由井くんと病室を出ようとしていると、ちょうどタイミングよく看護師さんがひとり廊下を歩いてきた。
名前はわからないけど、由井くんのお見舞い来ているときに何度か見かけたことのある人だ。
「あの、すみません……。ここに入院してた男の子は今どこに……?」
近付いて声をかけると、その若い看護師さんがわずかに表情を曇らせた。
「あなた、最近よく周くんのお見舞いに来てた……」
「はい。由井くんは、どこに行ったんですか? どれくらいで戻ってきますか?」
ひと息に話すと、看護師さんが首をかしげてちょっと困った顔をする。
「周くん、今日付けで病室が移動になったの」
「どこの部屋ですか? 今から行ったら会えますか?」
「そうね……。今日はもう、面会受付時間が終わるから……」
腕時計に視線を向ける彼女の言葉は、なんとなく歯切れが悪い。
「だったら、明日また来ます。由井くんの移動した病室がどこか教えてください」
「ごめんなさい。担当じゃないから、移動先まではちょっと……。それに、ご家族以外の方に、あまり詳しいことは話せないから……」
彼女が申し訳なさそうな顔で、わたしから離れようとする。
「だったら、どうすればいいですか? ご家族に……、そうだ、由井くんのお兄さんに、確認とってもらうことはできますか? わたし、お兄さんに会ったことあって、名前もご存知だと思うんです」
必死に食い下がると、彼女が困惑顔でわたしを遠ざけた。
「ごめんね。私もこれから巡回があって、ほかの患者さんを待たせてるから……」
そう言って、早足で行ってしまう。
そんな看護師さんの態度がなにかを隠しているような気がして、わたしの胸に不安がどっと押し寄せてきた。
「どうしよう……」
後ろにいる由井くんを振り向いて、途方にくれる。
「お兄さんに連絡とれたらいいけど……」
「兄ちゃんがいつお見舞いに来るのかはわからない……」
「そうだよね……」
困っていると、ガラッと音がして、由井くんの入院していた病室の隣のドアが開いた。
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