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1章 はじまり
6話 *立場
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♦
晴柊はソファの上で寝落ちをしていた。目が覚めた頃にはまた外は暗くなっていた。時刻は既に22時を回っていた。リビングは真っ暗でシンとしている。誰もいない?篠ケ谷は?別室で作業しているのだろうか、と思って、あたりをキョロキョロとしていると玄関から人の話す声が聞こえた。その声に身体が反応して硬直した。琳太郎だ。琳太郎が帰ってきたのだ。リビングの扉が開き、廊下からの電気が入る。
「なんだ、そこにいたのか。」
リビングの電気がぱっと点くと、晴柊はそのまぶしさに目を細めた。昨日とはまた違うスーツをビシッと決めた琳太郎がいた。自分はこんなにもダメージを負っているというのに、琳太郎のそのケロッとしたいつも通りの感じに腹が立った。後ろから日下部と篠ケ谷も入ってきて、何やら仕事の話をしている。
一通り話し終わったのか、篠ケ谷が出ていった。今日は日下部が見張りの日のようだ。琳太郎がソファに座っていた晴柊の横に深く腰掛けた。思わず端によって距離を取る。
「似合ってるぞ。」
横から琳太郎の長く武骨頂な指が伸びてきて、晴柊の白い首に纏わりつく首輪に触れた。思わずパッと手を払って睨みつける。琳太郎は、まだこの態度がとれるのか、と少し感心したがすぐに平静を装った。
「なにも食べてないらしいじゃないか。何か食うか?」
「……いらない。食欲ない。」
「野垂れ死になんてつまらない死に方はするなよ。」
晴柊はぶっきらぼうに返事をした。琳太郎のほうは向かない。琳太郎もそんな晴柊に対し、またあの時のように挑発するような言い方をする。
側近の日下部はそんな二人の様子をソファから一歩下がったところで見つめていた。琳太郎は何人か愛人を囲うことはあっても、このマンションの部屋で囲うことは無い。ここは琳太郎の最もプライベートな拠点だった。よほど晴柊のことを、事務所での一見で気に入ったらしかった。
日下部は琳太郎とは長い付き合いなので、晴柊のことをいつもと違う「犬」として扱っていることは見抜いていた。どうやら昨日も処女の晴柊相手にだいぶ無茶をしたみたいだ。おかげで野良犬を飼い慣らすどころかたった一日で狂犬に育っているではないか、とため息をついた。
「篠ケ谷に手厚く処理してもらったそうじゃないか。体調はどうだ?」
今日のことは全部篠ケ谷から報告が言っているのだろう。いや、今日だけじゃない。これからこいつが俺を飽きて捨てるまで、ずっとだ。自分の行動は制限され続け、監視されて、逐一報告される。そう思うと晴柊はイラつきが我慢できなくなり、多少感情を出して琳太郎に強く当たる。今日初めて、琳太郎の目を見た。
「お前のせいだろ!!お前が昨日、おれのっ…………!」
「『俺のケツにちんこをぶち込んだから』か?」
からかうように琳太郎が晴柊を見た。自分で言おうとしたことが恥ずかしくなり声が詰まったところ、すかさず琳太郎が何も隠すことなくその続きを述べたことに、思わずかぁっと顔を赤くした。耐えられず、また、大理石のような模様の床に視線を移した。
「そんなに良かったか?」
「ふざけるな!!あれが良く見えてたんなら、アンタおかしいよ。強姦魔!」
また琳太郎にとんでもない暴言をはいた晴柊を、日下部は大丈夫かよ、と心配になった。そもそもこの餓鬼には明楼会という組のことも、薊琳太郎のことも理解はしてないが故の発言なのだろう。普段の琳太郎なら、愛人がこんな悪態をつこうものなら面倒くさがり遺体に変換するなり風呂に沈めるなりして手放すのだが――。
「強姦魔?笑わせるな。まだわかってないようだな、自分の立場が。来い。せっかく今日は休ませてやろうと思ったが、気が変わった。」
日下部の横を、琳太郎に引きずられるようにして晴柊が連れていかれる。一瞬晴柊が日下部の方を見たが、最早だれも自分のことを助けるような人はここにはいないことを察したのか、何も言わなかった。おとなしくしておけばいいものを……と、日下部もつれていかれる晴柊を見届けながらまた一つ、ため息をついた。
♦
また、昨日の様にベットに乱暴に投げ捨てられた。晴柊は昨日のことを思い出し、まだ治ってもいないのに昨日のようなことをされるのかと思わず身構えた。
「おい、お前は昨日誰の何になった?」
「……。」
晴柊は、昨日目の前で義父に捨てられ、人権がこの目の前の男―薊琳太郎の手に渡った。そして、犬になれと言われ、犬というよりは性奴隷のような扱いを受けた一連の流れが頭に走馬灯のようにフラッシュバックした。ぎりっと唇を噛みしめて答えないでいると、鈍い音が広い寝室に響き、鋭い痛みが晴柊の頬を襲った。琳太郎に顔を殴られたと理解するまでに時間は要さなかった。唇を噛みしめていたせいで、口の端が切れて、血の味がした。
「答えろ。」
「……い、ぬ……。」
俯きながら今にも消え入りそうな声で呟く。ベットに尻もちをつくように座る晴柊の前で、膝を立てて晴柊のことを見下ろしていた琳太郎は、そのまま膝を晴柊の鳩尾にいれた。嗚咽とともに痛みが晴柊を襲う。
「ぅ、え“っ……!」
「『犬になりました。』だろ。俺はお前にとってのご主人様だぞ。あまりなめた態度を取るもんじゃない。」
はぁはぁと息が上がる。苦しい。痛い。昨日とはまた違う苦痛だった。しかし晴柊は義父によって日常的に暴力を受けていたので、堪え性があった。琳太郎もそれを理解していた。晴柊に一番絶望感を与えて、自分との主従関係をはっきりさせる方法が、快楽に溺れさせることだということも。
「昨日したあれは強姦ではない。お前に意志はないからな。「嫌」という感情すらそれが認められることはない。お前はもう自分の意志で生きることも死ぬことも許されない。すべて俺の許可と判断がお前を左右する。お前が今日、トイレや風呂場を行き来できるほどの自由が与えらえれていたのも、全て俺の一存であることを忘れるな。お前に排泄の自由も服を着る自由も与えず、窓もない寒い部屋で監禁することもできるんだぞ。お前が辛うじて感じていた自由もすべて俺の支配下にすぎない。飼われるっていうのはそういうことだ。」
「っ……。」
まただ、また、この男は本質をそのまま曲げずに伝えてくる。言っていることはめちゃくちゃだ。そんなものがまかり通っていいわけがない。でも、この世界ではまかり通ってしまうのだ。裏社会の現実、自分が人身売買の商品として、目の前の琳太郎に飼われるということ。それがどんな暴力よりも苦しかった。否応でも現実をぶつけられる。俺は、一生死ぬまでこ薊琳太郎の犬であり、支配下に置かれる。僅かな希望も容赦なく打ち砕かれ、晴柊は何も言うことができなかった。屈したくない。負けたくない。琳太郎の冷たい目が、晴柊の身体を縛った。
「脱げ。」
昨日と同じだ。この目とこの声が、晴柊のすべてを奪う。自尊心も、希望も。さっきの言葉が頭から離れられない。昨日の様に暴れて拘束されるのはごめんだ。晴柊はわずかに震える手で、ワイシャツのボタンを上から外し始めた。琳太郎の方を見ていなくても、自分のことをじっと見つめているのがわかる。最後のボタンが外れると、ワイシャツの袖から腕をゆっくりと抜いた。下着姿一枚になり、空気が直接肌に触れる感覚が、琳太郎の視線もあいまってくすぐったい。鳩尾に蹴りを入れられたところが、新たな痕を作り始めていた。
「これも。」
琳太郎のひとさし指が、晴柊のトランクスと肌の間に入り込みそのままパチンとわざと音を立たせて指を抜く。一瞬嫌だ、と言いそうになったが、嫌と言って終わるわけがないのももうわかっていた。両側に親指をひっかけ、ゆっくりと下におろす。足から下着外し、自分だけが人の前で一糸まとわぬ姿になったことに羞恥心から顔をわずかに赤くさせ、息を上がらせた。
「綺麗になってはいるが、腫れてるな。昨日みたいにしたら壊れそうだ。」
「や、やだっ……。」
昨日みたいに、と言われ思わず身体をビクつかせる。口からは反射的に拒否の言葉が出ていた。
「二度同じことを言わせるな。お前の意志は関係ない。嫌、と言えばそれをやらされるということを覚えておけ、駄犬。」
あまりにもヤクザすぎる。いや、ヤクザなのだが。晴柊はまた昨日みたいにされるんだと目をぎゅっとつむっていると、ガチャガチャとモノがぶつかる音に疑問を覚え顔を挙げた。
晴柊はソファの上で寝落ちをしていた。目が覚めた頃にはまた外は暗くなっていた。時刻は既に22時を回っていた。リビングは真っ暗でシンとしている。誰もいない?篠ケ谷は?別室で作業しているのだろうか、と思って、あたりをキョロキョロとしていると玄関から人の話す声が聞こえた。その声に身体が反応して硬直した。琳太郎だ。琳太郎が帰ってきたのだ。リビングの扉が開き、廊下からの電気が入る。
「なんだ、そこにいたのか。」
リビングの電気がぱっと点くと、晴柊はそのまぶしさに目を細めた。昨日とはまた違うスーツをビシッと決めた琳太郎がいた。自分はこんなにもダメージを負っているというのに、琳太郎のそのケロッとしたいつも通りの感じに腹が立った。後ろから日下部と篠ケ谷も入ってきて、何やら仕事の話をしている。
一通り話し終わったのか、篠ケ谷が出ていった。今日は日下部が見張りの日のようだ。琳太郎がソファに座っていた晴柊の横に深く腰掛けた。思わず端によって距離を取る。
「似合ってるぞ。」
横から琳太郎の長く武骨頂な指が伸びてきて、晴柊の白い首に纏わりつく首輪に触れた。思わずパッと手を払って睨みつける。琳太郎は、まだこの態度がとれるのか、と少し感心したがすぐに平静を装った。
「なにも食べてないらしいじゃないか。何か食うか?」
「……いらない。食欲ない。」
「野垂れ死になんてつまらない死に方はするなよ。」
晴柊はぶっきらぼうに返事をした。琳太郎のほうは向かない。琳太郎もそんな晴柊に対し、またあの時のように挑発するような言い方をする。
側近の日下部はそんな二人の様子をソファから一歩下がったところで見つめていた。琳太郎は何人か愛人を囲うことはあっても、このマンションの部屋で囲うことは無い。ここは琳太郎の最もプライベートな拠点だった。よほど晴柊のことを、事務所での一見で気に入ったらしかった。
日下部は琳太郎とは長い付き合いなので、晴柊のことをいつもと違う「犬」として扱っていることは見抜いていた。どうやら昨日も処女の晴柊相手にだいぶ無茶をしたみたいだ。おかげで野良犬を飼い慣らすどころかたった一日で狂犬に育っているではないか、とため息をついた。
「篠ケ谷に手厚く処理してもらったそうじゃないか。体調はどうだ?」
今日のことは全部篠ケ谷から報告が言っているのだろう。いや、今日だけじゃない。これからこいつが俺を飽きて捨てるまで、ずっとだ。自分の行動は制限され続け、監視されて、逐一報告される。そう思うと晴柊はイラつきが我慢できなくなり、多少感情を出して琳太郎に強く当たる。今日初めて、琳太郎の目を見た。
「お前のせいだろ!!お前が昨日、おれのっ…………!」
「『俺のケツにちんこをぶち込んだから』か?」
からかうように琳太郎が晴柊を見た。自分で言おうとしたことが恥ずかしくなり声が詰まったところ、すかさず琳太郎が何も隠すことなくその続きを述べたことに、思わずかぁっと顔を赤くした。耐えられず、また、大理石のような模様の床に視線を移した。
「そんなに良かったか?」
「ふざけるな!!あれが良く見えてたんなら、アンタおかしいよ。強姦魔!」
また琳太郎にとんでもない暴言をはいた晴柊を、日下部は大丈夫かよ、と心配になった。そもそもこの餓鬼には明楼会という組のことも、薊琳太郎のことも理解はしてないが故の発言なのだろう。普段の琳太郎なら、愛人がこんな悪態をつこうものなら面倒くさがり遺体に変換するなり風呂に沈めるなりして手放すのだが――。
「強姦魔?笑わせるな。まだわかってないようだな、自分の立場が。来い。せっかく今日は休ませてやろうと思ったが、気が変わった。」
日下部の横を、琳太郎に引きずられるようにして晴柊が連れていかれる。一瞬晴柊が日下部の方を見たが、最早だれも自分のことを助けるような人はここにはいないことを察したのか、何も言わなかった。おとなしくしておけばいいものを……と、日下部もつれていかれる晴柊を見届けながらまた一つ、ため息をついた。
♦
また、昨日の様にベットに乱暴に投げ捨てられた。晴柊は昨日のことを思い出し、まだ治ってもいないのに昨日のようなことをされるのかと思わず身構えた。
「おい、お前は昨日誰の何になった?」
「……。」
晴柊は、昨日目の前で義父に捨てられ、人権がこの目の前の男―薊琳太郎の手に渡った。そして、犬になれと言われ、犬というよりは性奴隷のような扱いを受けた一連の流れが頭に走馬灯のようにフラッシュバックした。ぎりっと唇を噛みしめて答えないでいると、鈍い音が広い寝室に響き、鋭い痛みが晴柊の頬を襲った。琳太郎に顔を殴られたと理解するまでに時間は要さなかった。唇を噛みしめていたせいで、口の端が切れて、血の味がした。
「答えろ。」
「……い、ぬ……。」
俯きながら今にも消え入りそうな声で呟く。ベットに尻もちをつくように座る晴柊の前で、膝を立てて晴柊のことを見下ろしていた琳太郎は、そのまま膝を晴柊の鳩尾にいれた。嗚咽とともに痛みが晴柊を襲う。
「ぅ、え“っ……!」
「『犬になりました。』だろ。俺はお前にとってのご主人様だぞ。あまりなめた態度を取るもんじゃない。」
はぁはぁと息が上がる。苦しい。痛い。昨日とはまた違う苦痛だった。しかし晴柊は義父によって日常的に暴力を受けていたので、堪え性があった。琳太郎もそれを理解していた。晴柊に一番絶望感を与えて、自分との主従関係をはっきりさせる方法が、快楽に溺れさせることだということも。
「昨日したあれは強姦ではない。お前に意志はないからな。「嫌」という感情すらそれが認められることはない。お前はもう自分の意志で生きることも死ぬことも許されない。すべて俺の許可と判断がお前を左右する。お前が今日、トイレや風呂場を行き来できるほどの自由が与えらえれていたのも、全て俺の一存であることを忘れるな。お前に排泄の自由も服を着る自由も与えず、窓もない寒い部屋で監禁することもできるんだぞ。お前が辛うじて感じていた自由もすべて俺の支配下にすぎない。飼われるっていうのはそういうことだ。」
「っ……。」
まただ、また、この男は本質をそのまま曲げずに伝えてくる。言っていることはめちゃくちゃだ。そんなものがまかり通っていいわけがない。でも、この世界ではまかり通ってしまうのだ。裏社会の現実、自分が人身売買の商品として、目の前の琳太郎に飼われるということ。それがどんな暴力よりも苦しかった。否応でも現実をぶつけられる。俺は、一生死ぬまでこ薊琳太郎の犬であり、支配下に置かれる。僅かな希望も容赦なく打ち砕かれ、晴柊は何も言うことができなかった。屈したくない。負けたくない。琳太郎の冷たい目が、晴柊の身体を縛った。
「脱げ。」
昨日と同じだ。この目とこの声が、晴柊のすべてを奪う。自尊心も、希望も。さっきの言葉が頭から離れられない。昨日の様に暴れて拘束されるのはごめんだ。晴柊はわずかに震える手で、ワイシャツのボタンを上から外し始めた。琳太郎の方を見ていなくても、自分のことをじっと見つめているのがわかる。最後のボタンが外れると、ワイシャツの袖から腕をゆっくりと抜いた。下着姿一枚になり、空気が直接肌に触れる感覚が、琳太郎の視線もあいまってくすぐったい。鳩尾に蹴りを入れられたところが、新たな痕を作り始めていた。
「これも。」
琳太郎のひとさし指が、晴柊のトランクスと肌の間に入り込みそのままパチンとわざと音を立たせて指を抜く。一瞬嫌だ、と言いそうになったが、嫌と言って終わるわけがないのももうわかっていた。両側に親指をひっかけ、ゆっくりと下におろす。足から下着外し、自分だけが人の前で一糸まとわぬ姿になったことに羞恥心から顔をわずかに赤くさせ、息を上がらせた。
「綺麗になってはいるが、腫れてるな。昨日みたいにしたら壊れそうだ。」
「や、やだっ……。」
昨日みたいに、と言われ思わず身体をビクつかせる。口からは反射的に拒否の言葉が出ていた。
「二度同じことを言わせるな。お前の意志は関係ない。嫌、と言えばそれをやらされるということを覚えておけ、駄犬。」
あまりにもヤクザすぎる。いや、ヤクザなのだが。晴柊はまた昨日みたいにされるんだと目をぎゅっとつむっていると、ガチャガチャとモノがぶつかる音に疑問を覚え顔を挙げた。
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