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幕間 新春
79話 *2人と1匹の年末
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テレビ番組がいつもより長く、特別感が漂っている。晴柊の目の前にはお寿司とお酒、その他諸々ご馳走が並んでいた。12月31日。大晦日を晴柊は琳太郎と2人で過ごしていた。さすがにヤクザにも年末年始という概念があるらしい。篠ケ谷たちは明日の1日に集まることになり、今日は晴柊と琳太郎、2人だけで過ごしていた。世話係当番もいない、本当の2人はいつぶりだろうか。ここ最近、色んなことがあって慌ただしかったが、無事、落ち着いて年を越せそうだと、晴柊はソファに座り足元にいるシルバの毛並みを整えていた。
隣で琳太郎はつまらなそうにテレビを見ている。晴柊の腰に手を回し、シルバに構う晴柊に自分も構って欲しいと言いたげに密着している。このゆっくりした時間が、晴柊にとっては心地の良い物だった。
「また大きくなったなぁ。」
「ワン!」
「ふふ。もうお前に飛び掛かられたら勝てないな。」
晴柊はシルバの頭を撫でる。シルバはへっへっと舌を出しながら嬉しそうな顔を浮かべている。まるで笑っているみたいだと、晴柊がニコニコしながらじゃれていると、琳太郎が晴柊の頭の上に顎を乗せてグリグリとしてくる。何も言わない無言の圧である。一言くらい「構え」と言えばいいものを。大型犬2匹を連れている気分になった晴柊は、はいはいと琳太郎の手をにぎにぎした。
「わぁ、琳太郎。外、雪降ってる。」
「本当だ。散歩、済ませておいて良かったな。」
大きなリビングの窓の外では、雪がチラついていた。空と近いからか、雪がよりダイナミックに見える。
「晴柊。」
「ま、まだ駄目だぞ。お寿司も食べてないんだから。」
「寿司は逃げない。」
「俺だって逃げないよ。」
琳太郎は晴柊をいともたやすくソファに押し倒した。晴柊はいつもこうして琳太郎を甘やかしてしまうと思っていた。シルバも混ざりたそうにしていたが、大きな体のシルバは最早琳太郎と晴柊がいるソファに乗ることができず、諦めたのかソファの下で寝始めた。
「んっ…こ、こら!がっつくな!」
「明日にはまたあいつ等が来るんだ。今しかできない。」
琳太郎が晴柊の首筋にちゅっちゅっとキスを落とす。篠ケ谷や遊馬のようにはうまくいかない。琳太郎を手懐けるのは中々至難の業なのである。
「琳太郎とゆっくりご飯食べながらテレビ観ることも、今しかできないだろ!」
晴柊はぐいぐいと琳太郎を押し、起き上がる。琳太郎は不服そうである。
「……よ、夜…年越し、一緒にしたいから…カウントダウン終わったら、その…」
晴柊がモゴモゴと恥ずかしそうにしている。晴柊は誰かと年を越すということ自体ほぼ初めてなのである。カウントダウンを迎えることを楽しみにしているらしかった。晴柊なりの誘い方に、琳太郎は曲げていたヘソを直すとまた2人で座り直し、晴柊にちゅっちゅっと甘いキスを落とす。
「しゃーねえな。年越しセックスは来年にするか。」
晴柊は耳まで真っ赤にして、誤魔化すようにテレビのチャンネルを替えている。そんな姿も愛おしいと、琳太郎は晴柊から片時も離れず寄り添った。つまらないテレビ番組も、多少は面白く感じるのであった。
♦
「来年、したいこととかあるか?」
テレビに夢中になりながら寿司を頬張っていた晴柊に、琳太郎が話しかけた。晴柊はエビの寿司をもぐもぐと食べ、琳太郎の方を見た。
「したいこと?」
「行きたいとことか。」
「たまに聞くよなぁ、それ。俺、この家が好きだよ。なんも不満もない。……あ、でも。」
晴柊は琳太郎に気を遣っているわけではなかった。それは本心である。晴柊はそもそも、家族旅行というような遠出をした経験もないのだ。学校の修学旅行はあったが、友達がいなかった晴柊にとっては心底居心地の悪いものだったのである。
ただ、晴柊は何かを思い立ったかのように口の中の物を飲み込んで琳太郎の方を向いた。
「ばあちゃんの墓参りに行きたいんだ。」
晴柊の祖母。共に暮らした時間は僅かだったものの、晴柊の人格形成に間違いなく影響を与えた人物だ。本人から直接聞いたことは無いが、晴柊がここに売り飛ばされてきたとき、ある程度情報屋に探ってもらっていたのだった。
「年が明けて少ししたらすぐに行こう。予定は空けておく。」
多忙な琳太郎の日程を奪ってしまうのは申し訳なかったが、琳太郎を連れてきたい気持ちもあったので晴柊は嬉しそうに頷いた。晴柊は、よく見ていた祖母の夢を見なくなっていた。しかし、片時も忘れてはいなかった。いつも月命日付近には墓参りに行っていたのだが、ここに来てからは行けていなかったことを気にしていた。会いに行って報告しなければ。
「ばあちゃんにも紹介しないと。びっくりしちゃうな、恋人がヤクザだなんて知ったら。でも、ばあちゃんはきっと受け入れてくれるよ。そういう人だもん。」
「お前はおばあさん似なんだろうな。まぁ、その気の強さと口の悪さは違うんだろうけどな。」
琳太郎は晴柊の髪を撫でた。晴柊の祖母に会ったことは無い。だけれど、そう思わせるほど、晴柊の口から出る祖母の人物像は聖人であったのだ。しかし、晴柊は男らしいというか危なっかしいというか、生意気な一面もある。それを揶揄うようにして言うと、そんなことないと口を尖らせながらジュースを飲んでいた。
それからも恋人同士の、穏やかな31日が終わろうとしていた。あと1分ほどで年が変わる。
琳太郎は、年末年始などと浮かれる性分ではなかったし、どれも全て同じ平日だと思うタイプである。しかし、晴柊が居ればそんな平日も浮かれたくなる世間の気持ちが少しだけわかるのだった。
「ほら、あと10秒!」
足元でシルバがソワソワしている。夜なのにテンションの高い晴柊につられているのだろう。琳太郎はじーっと目を輝かせる晴柊のことを眺めていた。テレビからクラッカーの音がする。どうやら年が明けたらしい。
「ハッピーニューイヤー!…あけましておめでとう!」
晴柊が琳太郎に抱き着いた。何とも言えない特別感が晴柊を興奮させていた。琳太郎は嬉しそうな晴柊をみて、そのまま晴柊にキスをした。唇を啄むようなキスだった。
「年越したな。」
「ぁ、っ……琳太郎っ…」
「なんだ?また「待て」か?」
「……ぅっ…ち、ちが…」
「今日は俺たちしかいないんだ。朝まで付き合えよ。」
琳太郎は晴柊の首元に吸い付いた。晴柊の身体が僅かに跳ねる。琳太郎のひんやりとした手が、晴柊の身体に触れていく。はぁっと熱い息が漏れていく。すると急に、ソファで抱き合うようにして肌を合わせていた2人に、重たいものがのしかかる。
そこには、白い毛を揺らしながら舌を出し、「何してるの?自分も混ぜて!」と言わんばかりのシルバがいた。シルバの前足が琳太郎と晴柊を軽く踏む。シルバはかなり大きい身体のため、前足を2人に乗せれば座る2人から一つ頭が抜きんでていた。
ご主人様がじゃれ合っている、自分も構って欲しいという犬なりのカワイイアピールであった。
「あ、あはは…」
完全にムードが途切れる。琳太郎はこら、というようにシルバを下ろすと立ち上がり、部屋の隅に置いてある玩具ボックスからシルバのお気に入りの玩具を見繕い持ってきた。なんだかんだ、琳太郎もシルバのことを可愛がっているのである。そしてそれを渡すと、シルバは一目散にその玩具に夢中になった。
「…仕切り直しだな。」
楽しそうなシルバを見て身体の力が妙に抜けた晴柊は、琳太郎に笑って言う。そして2人はそのまま寝室へと入っていった。真っ暗な寝室に、晴柊が乗る。琳太郎は間接照明をつけると、そのまま晴柊の上に覆いかぶさるようにしてもう一度キスをした。
「もう、怖くないか。」
「全然。琳太郎と、皆のお陰だ。」
「晴柊、愛してる。」
「うん、俺も愛してるよ。」
琳太郎は晴柊に優しく優しく触れた。今日は、ぐずぐずに、甘やかしてしまいたい気分だった。血生臭くも無ければ、汚い仕事をしたわけでもない。そんな自分はいつもより、晴柊に触れていい気がした。琳太郎の心の奥の黒いものが、少し取り払われていくような気分だった。
晴柊の乳首の周りを円を描くようにしてゆっくり触れる。晴柊の息がわかりやすいくらい上がっていく。
「まだ触ってないのに勃起してる。触ってほしくてたまらないって言ってるみたいだな。でも、今日はゆっくりする。お前がイきたくてもそう簡単にはイかせない。」
「な、なんでっ…」
「体力内からすぐ意識飛ばすだろ。今日は何が何でも朝までだ。抱き潰してやる。」
琳太郎は晴柊の身体を起こし、自分の上に背中を向けさせて座らせるようにして乗せる。晴柊の太ももを上から押し付けるように足を乗せて固定した。晴柊はいともたやすく拘束具ひとつ使わないで拘束された。琳太郎の手が再び晴柊の胸元に行く。晴柊のピンク色の乳首が触ってほしいと言わんばかりに膨れているが、その周りを執拗に撫でた。
「ん、ぁ………ぅ…」
「気持ちいいなぁ、晴柊?ほら、触ってやるよ。」
「んっ…!!」
「随分敏感に育ったな。こうやってぐりぐり押しつぶされるのも、わざと引っ張るようにされるのも好きだよな。」
「ぁ、あ…や、やめっ…」
「なんだよ、やめていいのか?お前の一番好きな触り方やってないのに?」
琳太郎は晴柊の耳元で喋り続ける。今日はやたら意地悪である。晴柊は期待と焦燥感に混じった表情を浮かべる。しかし、琳太郎はその顔を見ることができない。どうも、もどかしい。琳太郎は晴柊を抱えたまま、少し場所をズレた。寝室には、扉の横に一枚大きな姿見があった。晴柊をその前に見えるような場所に連れてくる。晴柊は鏡越しに自分と、琳太郎と目が合った。
「これでいいな。」
「あ、い、いやだ、り、んぁ、っ!!」
晴柊が身を捩ろうとしたとき、琳太郎の爪が晴柊の乳首を掠めた。晴柊は身体を跳ねさせる気持ちよさであったが、身体を琳太郎にうまく固定されているせいで、全身でその快感を受け止めていた。
「良く見えるな。ああ、こうして爪立ててカリカリされるの、本当に好きだな。いつか本当に乳首でイっちまうかも。」
「む、むり、ぅぁ、あ…!」
「だってほら、もうズボンの上からでもわかるぞ、お前の濡れ具合。やらしい。」
股を広げられているせいで、鏡には晴柊の姿が余すことなく写っている。晴柊の心臓が高鳴った。少しでも目を反らしてやり過ごそうものなら、琳太郎が顔を向けるようにしてくるのだ。琳太郎の爪がと晴柊の乳首の先端を弄り、もう片方の手でズボンを手際よく下ろして見せた。これも邪魔だなと、琳太郎は晴柊の上の服までンぐあしてしまい、あっという間に晴柊は下着一枚になった。鏡に映った晴柊の股間で膨れ上がったモノと、胸でいやらしく膨れているモノが、余計に主張されて恥ずかしさが極まったのだった。
テレビ番組がいつもより長く、特別感が漂っている。晴柊の目の前にはお寿司とお酒、その他諸々ご馳走が並んでいた。12月31日。大晦日を晴柊は琳太郎と2人で過ごしていた。さすがにヤクザにも年末年始という概念があるらしい。篠ケ谷たちは明日の1日に集まることになり、今日は晴柊と琳太郎、2人だけで過ごしていた。世話係当番もいない、本当の2人はいつぶりだろうか。ここ最近、色んなことがあって慌ただしかったが、無事、落ち着いて年を越せそうだと、晴柊はソファに座り足元にいるシルバの毛並みを整えていた。
隣で琳太郎はつまらなそうにテレビを見ている。晴柊の腰に手を回し、シルバに構う晴柊に自分も構って欲しいと言いたげに密着している。このゆっくりした時間が、晴柊にとっては心地の良い物だった。
「また大きくなったなぁ。」
「ワン!」
「ふふ。もうお前に飛び掛かられたら勝てないな。」
晴柊はシルバの頭を撫でる。シルバはへっへっと舌を出しながら嬉しそうな顔を浮かべている。まるで笑っているみたいだと、晴柊がニコニコしながらじゃれていると、琳太郎が晴柊の頭の上に顎を乗せてグリグリとしてくる。何も言わない無言の圧である。一言くらい「構え」と言えばいいものを。大型犬2匹を連れている気分になった晴柊は、はいはいと琳太郎の手をにぎにぎした。
「わぁ、琳太郎。外、雪降ってる。」
「本当だ。散歩、済ませておいて良かったな。」
大きなリビングの窓の外では、雪がチラついていた。空と近いからか、雪がよりダイナミックに見える。
「晴柊。」
「ま、まだ駄目だぞ。お寿司も食べてないんだから。」
「寿司は逃げない。」
「俺だって逃げないよ。」
琳太郎は晴柊をいともたやすくソファに押し倒した。晴柊はいつもこうして琳太郎を甘やかしてしまうと思っていた。シルバも混ざりたそうにしていたが、大きな体のシルバは最早琳太郎と晴柊がいるソファに乗ることができず、諦めたのかソファの下で寝始めた。
「んっ…こ、こら!がっつくな!」
「明日にはまたあいつ等が来るんだ。今しかできない。」
琳太郎が晴柊の首筋にちゅっちゅっとキスを落とす。篠ケ谷や遊馬のようにはうまくいかない。琳太郎を手懐けるのは中々至難の業なのである。
「琳太郎とゆっくりご飯食べながらテレビ観ることも、今しかできないだろ!」
晴柊はぐいぐいと琳太郎を押し、起き上がる。琳太郎は不服そうである。
「……よ、夜…年越し、一緒にしたいから…カウントダウン終わったら、その…」
晴柊がモゴモゴと恥ずかしそうにしている。晴柊は誰かと年を越すということ自体ほぼ初めてなのである。カウントダウンを迎えることを楽しみにしているらしかった。晴柊なりの誘い方に、琳太郎は曲げていたヘソを直すとまた2人で座り直し、晴柊にちゅっちゅっと甘いキスを落とす。
「しゃーねえな。年越しセックスは来年にするか。」
晴柊は耳まで真っ赤にして、誤魔化すようにテレビのチャンネルを替えている。そんな姿も愛おしいと、琳太郎は晴柊から片時も離れず寄り添った。つまらないテレビ番組も、多少は面白く感じるのであった。
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「来年、したいこととかあるか?」
テレビに夢中になりながら寿司を頬張っていた晴柊に、琳太郎が話しかけた。晴柊はエビの寿司をもぐもぐと食べ、琳太郎の方を見た。
「したいこと?」
「行きたいとことか。」
「たまに聞くよなぁ、それ。俺、この家が好きだよ。なんも不満もない。……あ、でも。」
晴柊は琳太郎に気を遣っているわけではなかった。それは本心である。晴柊はそもそも、家族旅行というような遠出をした経験もないのだ。学校の修学旅行はあったが、友達がいなかった晴柊にとっては心底居心地の悪いものだったのである。
ただ、晴柊は何かを思い立ったかのように口の中の物を飲み込んで琳太郎の方を向いた。
「ばあちゃんの墓参りに行きたいんだ。」
晴柊の祖母。共に暮らした時間は僅かだったものの、晴柊の人格形成に間違いなく影響を与えた人物だ。本人から直接聞いたことは無いが、晴柊がここに売り飛ばされてきたとき、ある程度情報屋に探ってもらっていたのだった。
「年が明けて少ししたらすぐに行こう。予定は空けておく。」
多忙な琳太郎の日程を奪ってしまうのは申し訳なかったが、琳太郎を連れてきたい気持ちもあったので晴柊は嬉しそうに頷いた。晴柊は、よく見ていた祖母の夢を見なくなっていた。しかし、片時も忘れてはいなかった。いつも月命日付近には墓参りに行っていたのだが、ここに来てからは行けていなかったことを気にしていた。会いに行って報告しなければ。
「ばあちゃんにも紹介しないと。びっくりしちゃうな、恋人がヤクザだなんて知ったら。でも、ばあちゃんはきっと受け入れてくれるよ。そういう人だもん。」
「お前はおばあさん似なんだろうな。まぁ、その気の強さと口の悪さは違うんだろうけどな。」
琳太郎は晴柊の髪を撫でた。晴柊の祖母に会ったことは無い。だけれど、そう思わせるほど、晴柊の口から出る祖母の人物像は聖人であったのだ。しかし、晴柊は男らしいというか危なっかしいというか、生意気な一面もある。それを揶揄うようにして言うと、そんなことないと口を尖らせながらジュースを飲んでいた。
それからも恋人同士の、穏やかな31日が終わろうとしていた。あと1分ほどで年が変わる。
琳太郎は、年末年始などと浮かれる性分ではなかったし、どれも全て同じ平日だと思うタイプである。しかし、晴柊が居ればそんな平日も浮かれたくなる世間の気持ちが少しだけわかるのだった。
「ほら、あと10秒!」
足元でシルバがソワソワしている。夜なのにテンションの高い晴柊につられているのだろう。琳太郎はじーっと目を輝かせる晴柊のことを眺めていた。テレビからクラッカーの音がする。どうやら年が明けたらしい。
「ハッピーニューイヤー!…あけましておめでとう!」
晴柊が琳太郎に抱き着いた。何とも言えない特別感が晴柊を興奮させていた。琳太郎は嬉しそうな晴柊をみて、そのまま晴柊にキスをした。唇を啄むようなキスだった。
「年越したな。」
「ぁ、っ……琳太郎っ…」
「なんだ?また「待て」か?」
「……ぅっ…ち、ちが…」
「今日は俺たちしかいないんだ。朝まで付き合えよ。」
琳太郎は晴柊の首元に吸い付いた。晴柊の身体が僅かに跳ねる。琳太郎のひんやりとした手が、晴柊の身体に触れていく。はぁっと熱い息が漏れていく。すると急に、ソファで抱き合うようにして肌を合わせていた2人に、重たいものがのしかかる。
そこには、白い毛を揺らしながら舌を出し、「何してるの?自分も混ぜて!」と言わんばかりのシルバがいた。シルバの前足が琳太郎と晴柊を軽く踏む。シルバはかなり大きい身体のため、前足を2人に乗せれば座る2人から一つ頭が抜きんでていた。
ご主人様がじゃれ合っている、自分も構って欲しいという犬なりのカワイイアピールであった。
「あ、あはは…」
完全にムードが途切れる。琳太郎はこら、というようにシルバを下ろすと立ち上がり、部屋の隅に置いてある玩具ボックスからシルバのお気に入りの玩具を見繕い持ってきた。なんだかんだ、琳太郎もシルバのことを可愛がっているのである。そしてそれを渡すと、シルバは一目散にその玩具に夢中になった。
「…仕切り直しだな。」
楽しそうなシルバを見て身体の力が妙に抜けた晴柊は、琳太郎に笑って言う。そして2人はそのまま寝室へと入っていった。真っ暗な寝室に、晴柊が乗る。琳太郎は間接照明をつけると、そのまま晴柊の上に覆いかぶさるようにしてもう一度キスをした。
「もう、怖くないか。」
「全然。琳太郎と、皆のお陰だ。」
「晴柊、愛してる。」
「うん、俺も愛してるよ。」
琳太郎は晴柊に優しく優しく触れた。今日は、ぐずぐずに、甘やかしてしまいたい気分だった。血生臭くも無ければ、汚い仕事をしたわけでもない。そんな自分はいつもより、晴柊に触れていい気がした。琳太郎の心の奥の黒いものが、少し取り払われていくような気分だった。
晴柊の乳首の周りを円を描くようにしてゆっくり触れる。晴柊の息がわかりやすいくらい上がっていく。
「まだ触ってないのに勃起してる。触ってほしくてたまらないって言ってるみたいだな。でも、今日はゆっくりする。お前がイきたくてもそう簡単にはイかせない。」
「な、なんでっ…」
「体力内からすぐ意識飛ばすだろ。今日は何が何でも朝までだ。抱き潰してやる。」
琳太郎は晴柊の身体を起こし、自分の上に背中を向けさせて座らせるようにして乗せる。晴柊の太ももを上から押し付けるように足を乗せて固定した。晴柊はいともたやすく拘束具ひとつ使わないで拘束された。琳太郎の手が再び晴柊の胸元に行く。晴柊のピンク色の乳首が触ってほしいと言わんばかりに膨れているが、その周りを執拗に撫でた。
「ん、ぁ………ぅ…」
「気持ちいいなぁ、晴柊?ほら、触ってやるよ。」
「んっ…!!」
「随分敏感に育ったな。こうやってぐりぐり押しつぶされるのも、わざと引っ張るようにされるのも好きだよな。」
「ぁ、あ…や、やめっ…」
「なんだよ、やめていいのか?お前の一番好きな触り方やってないのに?」
琳太郎は晴柊の耳元で喋り続ける。今日はやたら意地悪である。晴柊は期待と焦燥感に混じった表情を浮かべる。しかし、琳太郎はその顔を見ることができない。どうも、もどかしい。琳太郎は晴柊を抱えたまま、少し場所をズレた。寝室には、扉の横に一枚大きな姿見があった。晴柊をその前に見えるような場所に連れてくる。晴柊は鏡越しに自分と、琳太郎と目が合った。
「これでいいな。」
「あ、い、いやだ、り、んぁ、っ!!」
晴柊が身を捩ろうとしたとき、琳太郎の爪が晴柊の乳首を掠めた。晴柊は身体を跳ねさせる気持ちよさであったが、身体を琳太郎にうまく固定されているせいで、全身でその快感を受け止めていた。
「良く見えるな。ああ、こうして爪立ててカリカリされるの、本当に好きだな。いつか本当に乳首でイっちまうかも。」
「む、むり、ぅぁ、あ…!」
「だってほら、もうズボンの上からでもわかるぞ、お前の濡れ具合。やらしい。」
股を広げられているせいで、鏡には晴柊の姿が余すことなく写っている。晴柊の心臓が高鳴った。少しでも目を反らしてやり過ごそうものなら、琳太郎が顔を向けるようにしてくるのだ。琳太郎の爪がと晴柊の乳首の先端を弄り、もう片方の手でズボンを手際よく下ろして見せた。これも邪魔だなと、琳太郎は晴柊の上の服までンぐあしてしまい、あっという間に晴柊は下着一枚になった。鏡に映った晴柊の股間で膨れ上がったモノと、胸でいやらしく膨れているモノが、余計に主張されて恥ずかしさが極まったのだった。
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