狂い咲く花、散る木犀

伊藤納豆

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8章

125話 *お医者さん

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「こりゃぁ風邪だな。2,3日寝てればすぐ治るよ。薬も出しとくから、朝昼晩ちゃんと飲めよ~。」

「おい藪医者。速攻効く薬出して明日に治せるようにしろ。」

「あーん?生意気な口はほんと変わらねぇなぁ、琳太郎。大体てめえがオーバーワークして体調管理できてなかったのが原因なんだろ?ったく、組長さんが体調崩すなんざ、示しがつかねえなぁ。」

「小言が多いじじいだな、相変わらず。」


無精ひげを生やし癖のある髪の毛で白衣を纏った男性は、琳太郎が幼い頃から明朗会の主治医を務めている九条久志(くじょうひさし)。所謂裏社会に通ずる闇医者のような立場らしく、日々表沙汰に治療できないような抗争の怪我やらを担当している。


「お前が入れ込んでるってイロ、あの子か~。また随分と青くさい男の子じゃないの。まあ、俺からしたらお前もまだまだガキンチョだけどな。」

「アイツはそこら辺の組員より肝が据わってるよ。」

「へえ、随分買ってるんだな。珍しい。」

「別にお前は知らなくていい。」

「独占欲丸出しときたもんだ。」

「うるせえな、診察が終わったら早く帰れ。」


2人がまるでいつもの調子というように会話を繰り広げる。室内には日下部だけがいた。琳太郎はベッドで身体を起こし、九条をひと睨みする。はいはい、と帰り支度を始める九条に、琳太郎は室内が静寂に染まる言葉を放つ。


「九条。お前、親父の病気をなんで俺に知らせなかった。」


九条は、邦彦の診療も担当していた。邦彦が末期がんを患っていたことも当然知っている。それを親族である琳太郎にさえ教えていなかったのは何故なのか。琳太郎はそれだけが気がかりだった。


「守秘義務ってやつだよ。7代目がそれを望んだ。俺は仕事としてそれを守った。」

「……なんで、あの人は俺に伝えなかったんだ。」

「さぁねぇ。直接理由を聞いたわけじゃないからな。ただ、お前にはカッコ悪いとこ見せたくなかったんじゃねえの?倅に弱みを見せたくない。先代はそういうお人だったろ。……よし。じゃぁ俺は行くぞ。しっかり寝て直せよ~小僧。」


ひらひらと九条は手を振り寝室を後にした。相変わらず白衣を着ていなければ医者かも怪しい風貌である。寝室を出ると、すぐ傍に晴柊が立っていた。どこか心配そうである。九条は晴柊に近寄った。


「坊主、名前は?」

「晴柊、です……」

「アイツ、面食いだったか?…そんな心配そうな顔するな。ただの風邪だよ。薬も処方したし、直ぐに良くなる。」


ぐしゃぐしゃと晴柊の頭を雑に撫でる九条。大病にでも患ったかの如く心配する晴柊を安心させるように言葉をかける。


「あの生意気な暴君のことよろしくな。アンタも知っての通り、アイツもアイツで色々と苦労してきた。そろそろ楽になってもいいんじゃねえかって思ってるんだけどなぁ。まあでも、久々に活き活きしてるところを見れたのも、お前さんのおかげかもな。」


それじゃぁ、と九条は去っていく。日下部が九条の見送りについていき、晴柊はそんな彼の後ろ姿を見つめた。


九条は琳太郎が八城の母に刺されたときに治療した医者でもある。幼子が組の揉め事に巻き込まれ、裏社会の洗礼を受けた。運び込まれてきた時のことは今でもよく覚えている。10歳にも満たない子供が、青ざめた顔で腹から血を流して運び込まれてきたのだ。あの時の子供が、今ではその組の組長になった。九条にとって、明楼会は得意先というビジネスな関係以上に、琳太郎という一人間を見守ってきたのだった。


「晴柊。」


寝室から琳太郎が自分を呼ぶ声がする。


「お疲れ様。薬、忘れず飲まないとな。」

「こっちに来い。」


晴柊はベッドに再び座る。あまり自分が居たら休まらないのでは、と思うのだが琳太郎が自分の傍から片時も離そうとしないのだった。すると琳太郎は自分の身体の上に乗せるようにして晴柊を抱きしめてくる。


「寝ておかないと……」

「良い。こうしていたい。」


琳太郎の手が、晴柊の腰のラインをなぞる様に滑る。そしてそのまま尻まで手が伸び、揉みしだかれ始めると、晴柊はこの雰囲気の違和感に気が付いた。


「り、琳太郎……」

「何だよ。」

「シないぞ、絶対シない。」

「んー……」


まるではぐらかす様な琳太郎。風邪を引いているというのに性欲だけは引いていないらしい。


「なあ、聞いてる?」

「聞いてない。」

「言うこと聞いてって――」

「駄目?嫌だ?……じゃあ、止める。」


琳太郎が晴柊の尻の割れ目を、ズボン越しになぞる。アナをぐりぐりと指で捻じ込もうとする仕草をする。布越しの焦れったさが、晴柊を煽っていった。


「ぁ、うっ……ずるいっ……」

「イヤならやめるって。なあ、どうすんの?」

「っ~~~……」


晴柊は耳まで赤くさせながら葛藤している様だった。琳太郎の胸元に顔をうずめ、必死に理性を保とうと熱のこもった呼吸をしている。晴柊もまた、誰かのおかげで性欲いっぱいなのだ。こんな風に煽られれば、あっという間に気分になるほどには躾けられてきた。


「……す、る……」

小声でボソボソと喋る晴柊。琳太郎はそれを許さない。

「頼み方はそれで良いわけ?」

「っ………シ、たいですっ……エッチ、しよぉ……」


きゅっと唇を結び、恥ずかしさに僅かに身体を震わせながら琳太郎におねだりをする。病人相手に発情している自分が恥ずかしくなったのだった。


「ああ、いいぞ。お前の身体使って看病しろよ。」

「おじさんくさい……」

「そのおじさん相手に発情してるエロガキはどこのどいつだ?」


琳太郎が悪態をつく晴柊の尻を強めに掴む。悔しそうに、しかし確かに色情込めた瞳を向ける晴柊に一度キスするとすぐに離し琳太郎からは手を出さずじっと晴柊を見た。


「ほら、どうするんだ?」


上半身を起こしベッドに座る琳太郎の膝に跨る様に乗る晴柊。火照った顔のまま琳太郎の衣服を脱がせていく。丁寧に、丁寧に、いつもよりも体温が高い琳太郎の肌に口を滑らせた。首筋にちゅぅっと吸い付きながら、下半身に手を伸ばす。下着の中に手を入れると、少しずつ熱を持ち始めている琳太郎のモノを緩く握った。


琳太郎を煽るはずにしている愛撫が、彼の体温、匂いに当てられ逆に晴柊の興奮促進剤へと逆戻りしていた。晴柊は自分は触られていないのに、少しずつ息を荒げていた。


「辛くなったらすぐ言ってよ……?」

「ただの風邪なんだから、心配ない。」


晴柊は少しずつ早く琳太郎のモノを扱き始める。琳太郎のモノが大きくなればなるほど晴柊は少しのもどかしさと焦れったさを覚えていく。


「良いこと教えてやろうか?お前も一緒に気持ちよくなればいいんだよ、こうして。」


琳太郎は晴柊のズボンと下着をずらすと、自分のモノと晴柊のモノをぴたりとくっつける。自分のを触っていただけだというのに既に元気になり始めている晴柊の下半身に優越感を覚えた。晴柊は琳太郎のモノとぴったりくっついた自分の大きさや色、形、それらの違いですら興奮し始めていた。


「ちゃんと手動かして。」

「ぁ、あっ……ん……」


琳太郎のいつもより掠れた声が余計に色っぽい。晴柊は一生懸命琳太郎のモノと自分のものを両手でいっぺんに扱いた。


「ぅあっ……ぁ、きもち……ぁっ……」

「俺の看病だってのに、お前も気持ちよくなりたくて仕方ないなんて我儘だなぁ。」

「んん!…はぁ、んっ……だってぇ、……俺、いつからこんなえっちになっちゃったのぉ……?」


琳太郎の先走りと晴柊の先走りが混ざり合う。気付けば琳太郎とのセックスが好きで好きで仕方なくなっていた、というように晴柊は戸惑いながらも手は一生懸命に快感を求め動いていた。


「どんどん変態プレイ覚えていってるもんなぁ。でも、俺とのセックスだけだろ?」

「ぁ、んっ、当たり前だろっ……ぁ、ん、んん……りんた、ろ、イきそ、ぁっ……」

「ん……もうちょっと我慢しろ。俺ももうそろ出すから。」


晴柊がイってしまいそうだからと手を緩めようとしたとき、琳太郎の手が晴柊の手を上から抑えるようにしてそれを止める。そして晴柊の手ごと上下に激しく動かした。晴柊の足がガクガクと震え、我慢も限界になり、ぎゅっと全身に力が入るとそのまま射精する。琳太郎も同時に出し、2人の濃厚な精液がお互いの身体にべったりとついた。
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