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追われる子供たち
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あれから魔物に遭遇することもなく、ちゃんと街に到着できた。
さっそく宿屋にルナーフ持ち込んだら調理してくれる。
串焼きにして焼いたお肉と肉団子のスープだ。パンとサラダもついて、お腹一杯食べてしまった。
濃い味付けでとても美味しかった。泊まる宿もそこにする。
お風呂に入りたかったのだけど、お風呂はないそうなのでお湯だけもらいそれで体をふいた。街の中には公衆浴場があると教えてもらったのであとで行ってみよう。
公爵家の領内から出てみたけれど、この街も良く賑わっていた。
魔物と戦うならやっぱり冒険者にならないと情報が入らないのかしら。
でも流石に公爵家の娘で、しかも出来損ないの聖女が冒険者をやるというのも……。
色々と心配したけれど、冒険者ギルドは別に冒険者にならなくても出入り自由だった。依頼を受けるには登録が必要なんだけど、魔物の換金なんかは出来るらしい。
私は魔物の分布が載った地図を眺める。
ハーグ先生は太鼓判をおしてくれたけれど、まだあまり大きな魔物と相対するのは怖い。
この近くに出る魔物はいくつかいるけど、ホッパーという魔物に決めた。
大きなバッタらしい。作物を荒らすので繁殖すると結構困るようだ。
雑食らしいけど、小さい動物も食べてしまうらしい。
私はホッパーという魔物がよく出る場所を覚えると、その場を後にした。
私はお弁当として持ってきた山菜を挟んだパンを齧りながら目的地に行く。
パンは少し硬いけど、山菜の味付けがおいしくてぱくついてしまう。
屋敷でこんなお行儀の悪い食べ方をしていたら、慌てたメイドが走って注意しに来てしまうわね。
そう考えるとおかしくって口角がつい上がりそうになる。
危ない危ない。周りに人がいないけどそんな顔を晒すわけには。
手についたソースを舐める。
そろそろの筈だけど、それらしい魔物の姿は見えない。
最近の気候が良くて数が増えてるって聞いたんだけど。
周囲を散策してみるも、なかなか見つからない。
どうしたものかと思っていると、大事なことを思い出した。
聖女として殆どの力がない私だったけど実は一つだけまともに使える力がある。
魔物を探知する力だけは一人前に持っていたのだ。
聖女の力がないから魔物を見つけても意味がなかった……んだけど。
私は深呼吸して、久方ぶりにその力を使う。
感覚的なものだけど、どこにどれだけいるかがそれっぽく分かるのだ。
周囲にはやっぱりいない。もう少し遠くにだと……いた。
いやいたけど居すぎだ。
10体くらいの魔物が固まって移動している。
この動き方は何かを追ってる?
私は見つけた方角へ走った。
頑張ってそれなりに鍛えたけど、あまり早くないし息もすぐ上がる。
やっぱりもう少し体を鍛えないとダメだわ。
バーグ先生との訓練期間はずっと流体の練習をしていた。流体は習得出来たのだし今後はもっと基礎訓練を……
そんなことを考えるうちに魔物の群れに追いついた。
群れはやっぱりホッパーだったんだけど、沢山の大きなバッタがうごめいているのは年頃の少女の私としては中々つらいものがあった。
その群れの先には小さな女の子と男の子がいた。
ホッパーは雑食で、主に作物を荒らすが肉も食べる。狙われたのだろう。
もう少しで追いつかれてしまう。
私は走るペースを上げて、子供たちの前に立った。
先頭のホッパーが私に突進してきたので、踏ん張ってそのままその勢いを返す。
ホッパーは頭を凹ませ、手足がバラバラになる。
しかし後続のホッパーは止まらず、先頭のホッパーを押しのけて私に襲い掛かってきた。
尖った歯で噛みついてくるのを私は避けて、頭を掴んでそのまま地面に叩きつけた。
別のホッパーが前足を叩きつけてきたので私はそれを掴んで勢いを足してそのままホッパーの群れに投げつける。
ホッパー達が倒れこむ。
今のうちに子供たちの様子を見るが、怪我をしている様子はなかった。
ほっと一息つく。
羽音が周囲に響いた。
ホッパー達の中で、一体だけ白い個体がいた。
他の個体よりも一回り大きく、私の背より高い。群れのボスだろう。
羽を広げて振動させる。体が大きすぎて飛べないみたいね。
おそらく威嚇だろう。
でも平気。私はちゃんとやれてる。
ホッパーのボスが勢いよく私に突っ込んできた。
私は首根っこを掴んでやり、そのまま後ろへ倒れこむ。
ホッパーは見た目ほど重くないが、私の細腕で持ち上がるほど軽くもない。
だからホッパーの力を最大限利用してやると、殆ど力を入れることなくホッパーが浮き上がる。
地面に頭から叩きつけられたホッパーはしばらく痙攣したのち、動かなくなる。
ボスを失ったホッパーは私を眺めた後、散り散りに走り去っていった。
地面に転がっているのは白いのを含めて3体のホッパー。
足が食用らしいのでむしっておく。これ本当に美味しいのかしら……。
それから子供たちに手を差し伸べる。
「ありがとう、お姉ちゃん」
女の子が男の子の前に出てお礼を言ってくれる。
女の子の方が年上のようだ。
私は子供たちを街に連れていくことにした。
さっそく宿屋にルナーフ持ち込んだら調理してくれる。
串焼きにして焼いたお肉と肉団子のスープだ。パンとサラダもついて、お腹一杯食べてしまった。
濃い味付けでとても美味しかった。泊まる宿もそこにする。
お風呂に入りたかったのだけど、お風呂はないそうなのでお湯だけもらいそれで体をふいた。街の中には公衆浴場があると教えてもらったのであとで行ってみよう。
公爵家の領内から出てみたけれど、この街も良く賑わっていた。
魔物と戦うならやっぱり冒険者にならないと情報が入らないのかしら。
でも流石に公爵家の娘で、しかも出来損ないの聖女が冒険者をやるというのも……。
色々と心配したけれど、冒険者ギルドは別に冒険者にならなくても出入り自由だった。依頼を受けるには登録が必要なんだけど、魔物の換金なんかは出来るらしい。
私は魔物の分布が載った地図を眺める。
ハーグ先生は太鼓判をおしてくれたけれど、まだあまり大きな魔物と相対するのは怖い。
この近くに出る魔物はいくつかいるけど、ホッパーという魔物に決めた。
大きなバッタらしい。作物を荒らすので繁殖すると結構困るようだ。
雑食らしいけど、小さい動物も食べてしまうらしい。
私はホッパーという魔物がよく出る場所を覚えると、その場を後にした。
私はお弁当として持ってきた山菜を挟んだパンを齧りながら目的地に行く。
パンは少し硬いけど、山菜の味付けがおいしくてぱくついてしまう。
屋敷でこんなお行儀の悪い食べ方をしていたら、慌てたメイドが走って注意しに来てしまうわね。
そう考えるとおかしくって口角がつい上がりそうになる。
危ない危ない。周りに人がいないけどそんな顔を晒すわけには。
手についたソースを舐める。
そろそろの筈だけど、それらしい魔物の姿は見えない。
最近の気候が良くて数が増えてるって聞いたんだけど。
周囲を散策してみるも、なかなか見つからない。
どうしたものかと思っていると、大事なことを思い出した。
聖女として殆どの力がない私だったけど実は一つだけまともに使える力がある。
魔物を探知する力だけは一人前に持っていたのだ。
聖女の力がないから魔物を見つけても意味がなかった……んだけど。
私は深呼吸して、久方ぶりにその力を使う。
感覚的なものだけど、どこにどれだけいるかがそれっぽく分かるのだ。
周囲にはやっぱりいない。もう少し遠くにだと……いた。
いやいたけど居すぎだ。
10体くらいの魔物が固まって移動している。
この動き方は何かを追ってる?
私は見つけた方角へ走った。
頑張ってそれなりに鍛えたけど、あまり早くないし息もすぐ上がる。
やっぱりもう少し体を鍛えないとダメだわ。
バーグ先生との訓練期間はずっと流体の練習をしていた。流体は習得出来たのだし今後はもっと基礎訓練を……
そんなことを考えるうちに魔物の群れに追いついた。
群れはやっぱりホッパーだったんだけど、沢山の大きなバッタがうごめいているのは年頃の少女の私としては中々つらいものがあった。
その群れの先には小さな女の子と男の子がいた。
ホッパーは雑食で、主に作物を荒らすが肉も食べる。狙われたのだろう。
もう少しで追いつかれてしまう。
私は走るペースを上げて、子供たちの前に立った。
先頭のホッパーが私に突進してきたので、踏ん張ってそのままその勢いを返す。
ホッパーは頭を凹ませ、手足がバラバラになる。
しかし後続のホッパーは止まらず、先頭のホッパーを押しのけて私に襲い掛かってきた。
尖った歯で噛みついてくるのを私は避けて、頭を掴んでそのまま地面に叩きつけた。
別のホッパーが前足を叩きつけてきたので私はそれを掴んで勢いを足してそのままホッパーの群れに投げつける。
ホッパー達が倒れこむ。
今のうちに子供たちの様子を見るが、怪我をしている様子はなかった。
ほっと一息つく。
羽音が周囲に響いた。
ホッパー達の中で、一体だけ白い個体がいた。
他の個体よりも一回り大きく、私の背より高い。群れのボスだろう。
羽を広げて振動させる。体が大きすぎて飛べないみたいね。
おそらく威嚇だろう。
でも平気。私はちゃんとやれてる。
ホッパーのボスが勢いよく私に突っ込んできた。
私は首根っこを掴んでやり、そのまま後ろへ倒れこむ。
ホッパーは見た目ほど重くないが、私の細腕で持ち上がるほど軽くもない。
だからホッパーの力を最大限利用してやると、殆ど力を入れることなくホッパーが浮き上がる。
地面に頭から叩きつけられたホッパーはしばらく痙攣したのち、動かなくなる。
ボスを失ったホッパーは私を眺めた後、散り散りに走り去っていった。
地面に転がっているのは白いのを含めて3体のホッパー。
足が食用らしいのでむしっておく。これ本当に美味しいのかしら……。
それから子供たちに手を差し伸べる。
「ありがとう、お姉ちゃん」
女の子が男の子の前に出てお礼を言ってくれる。
女の子の方が年上のようだ。
私は子供たちを街に連れていくことにした。
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