公爵令嬢として生まれた私は待望された聖女でした。聖女としての才能がなくて見捨てられましたが、武の極みに至る才能はあったみたいです。

HATI

文字の大きさ
8 / 13

追われる子供たち

しおりを挟む
 あれから魔物に遭遇することもなく、ちゃんと街に到着できた。
 さっそく宿屋にルナーフ持ち込んだら調理してくれる。
 串焼きにして焼いたお肉と肉団子のスープだ。パンとサラダもついて、お腹一杯食べてしまった。

 濃い味付けでとても美味しかった。泊まる宿もそこにする。
 お風呂に入りたかったのだけど、お風呂はないそうなのでお湯だけもらいそれで体をふいた。街の中には公衆浴場があると教えてもらったのであとで行ってみよう。
 公爵家の領内から出てみたけれど、この街も良く賑わっていた。

 魔物と戦うならやっぱり冒険者にならないと情報が入らないのかしら。
 でも流石に公爵家の娘で、しかも出来損ないの聖女が冒険者をやるというのも……。

 色々と心配したけれど、冒険者ギルドは別に冒険者にならなくても出入り自由だった。依頼を受けるには登録が必要なんだけど、魔物の換金なんかは出来るらしい。


 私は魔物の分布が載った地図を眺める。
 ハーグ先生は太鼓判をおしてくれたけれど、まだあまり大きな魔物と相対するのは怖い。

 この近くに出る魔物はいくつかいるけど、ホッパーという魔物に決めた。
 大きなバッタらしい。作物を荒らすので繁殖すると結構困るようだ。

 雑食らしいけど、小さい動物も食べてしまうらしい。
 私はホッパーという魔物がよく出る場所を覚えると、その場を後にした。

 私はお弁当として持ってきた山菜を挟んだパンを齧りながら目的地に行く。
 パンは少し硬いけど、山菜の味付けがおいしくてぱくついてしまう。

 屋敷でこんなお行儀の悪い食べ方をしていたら、慌てたメイドが走って注意しに来てしまうわね。

 そう考えるとおかしくって口角がつい上がりそうになる。
 危ない危ない。周りに人がいないけどそんな顔を晒すわけには。

 手についたソースを舐める。
 そろそろの筈だけど、それらしい魔物の姿は見えない。

 最近の気候が良くて数が増えてるって聞いたんだけど。
 周囲を散策してみるも、なかなか見つからない。

 どうしたものかと思っていると、大事なことを思い出した。
 聖女として殆どの力がない私だったけど実は一つだけまともに使える力がある。

 魔物を探知する力だけは一人前に持っていたのだ。
 聖女の力がないから魔物を見つけても意味がなかった……んだけど。

 私は深呼吸して、久方ぶりにその力を使う。
 感覚的なものだけど、どこにどれだけいるかがそれっぽく分かるのだ。

 周囲にはやっぱりいない。もう少し遠くにだと……いた。
 いやいたけど居すぎだ。

 10体くらいの魔物が固まって移動している。
 この動き方は何かを追ってる?

 私は見つけた方角へ走った。
 頑張ってそれなりに鍛えたけど、あまり早くないし息もすぐ上がる。
 やっぱりもう少し体を鍛えないとダメだわ。

 バーグ先生との訓練期間はずっと流体の練習をしていた。流体は習得出来たのだし今後はもっと基礎訓練を……

 そんなことを考えるうちに魔物の群れに追いついた。
 群れはやっぱりホッパーだったんだけど、沢山の大きなバッタがうごめいているのは年頃の少女の私としては中々つらいものがあった。

 その群れの先には小さな女の子と男の子がいた。
 ホッパーは雑食で、主に作物を荒らすが肉も食べる。狙われたのだろう。
 もう少しで追いつかれてしまう。

 私は走るペースを上げて、子供たちの前に立った。

 先頭のホッパーが私に突進してきたので、踏ん張ってそのままその勢いを返す。
 ホッパーは頭を凹ませ、手足がバラバラになる。

 しかし後続のホッパーは止まらず、先頭のホッパーを押しのけて私に襲い掛かってきた。
 尖った歯で噛みついてくるのを私は避けて、頭を掴んでそのまま地面に叩きつけた。
 別のホッパーが前足を叩きつけてきたので私はそれを掴んで勢いを足してそのままホッパーの群れに投げつける。

 ホッパー達が倒れこむ。
 今のうちに子供たちの様子を見るが、怪我をしている様子はなかった。
 ほっと一息つく。

 羽音が周囲に響いた。
 ホッパー達の中で、一体だけ白い個体がいた。
 他の個体よりも一回り大きく、私の背より高い。群れのボスだろう。

 羽を広げて振動させる。体が大きすぎて飛べないみたいね。
 おそらく威嚇だろう。

 でも平気。私はちゃんとやれてる。

 ホッパーのボスが勢いよく私に突っ込んできた。
 私は首根っこを掴んでやり、そのまま後ろへ倒れこむ。

 ホッパーは見た目ほど重くないが、私の細腕で持ち上がるほど軽くもない。
 だからホッパーの力を最大限利用してやると、殆ど力を入れることなくホッパーが浮き上がる。

 地面に頭から叩きつけられたホッパーはしばらく痙攣したのち、動かなくなる。
 ボスを失ったホッパーは私を眺めた後、散り散りに走り去っていった。

 地面に転がっているのは白いのを含めて3体のホッパー。
 足が食用らしいのでむしっておく。これ本当に美味しいのかしら……。

 それから子供たちに手を差し伸べる。

「ありがとう、お姉ちゃん」

 女の子が男の子の前に出てお礼を言ってくれる。
 女の子の方が年上のようだ。

 私は子供たちを街に連れていくことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。 2025/9/29 追記開始しました。毎日更新は難しいですが気長にお待ちください。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました

毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作 『魔力掲示板』 特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。 平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。 今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

処理中です...