愛はないと言われたので、気にせず自由にさせていただきますわ

くらら

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第1話

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「愛はない。初めから、今この時も」


サーフィスはそう言うと、隣にいた見知らぬ若い女を抱き寄せた。


「……サーフィス様、そのお方はどなたですか?」


私は極めて冷静にいようと思ったけれど、口から出た言葉は微かに震えていた。

ーー話がある。今夜私の部屋に来てくれ。

従者から届けられた手紙にはそう書かれていた。
今夜こそは、と私は胸をときめかせてサーフィスの部屋を訪れた。

サーフィスの好きな色の服、サーフィスの好きな化粧、サーフィスの好きな香水……。

すべてサーフィスに愛されるために整えた。


ーーそれなのに。


サーフィスの部屋にはサーフィスと見知らぬ女の姿があった。


、先に部屋に招かれた女。

それが何を意味しているか、理解したくなかった。
それでもサーフィスは冷たい現実を突き付けてくる。

「……お前との婚約を破棄したい」


サーフィスの言葉に、私はなぜ?どうして?と、聞き返した。
それでもサーフィスの返答は変わらなかった。

冒頭の言葉を突き付けて、私は部屋の外へ追い出された。
なくなく自室に戻るしかなくなった。




サーフィスはこのガロリア王国の第一王子。

私はその婚約者。

サーフィスは強く逞しく美しい人だった。

子供の時から私はサーフィスと結婚することだけに人生を捧げてきた。
サーフィスに釣り合う女性になるために、子供の時から厳しい教養としつけを受け、自由も忘れてただサーフィスに気に入られる存在になることだけが人生の目的だった。

サーフィスは初めから私のことが好きではなかった。

親同士の決めた結婚だ。

サーフィスは望んでいなかった。

それでも同じ時を重ねれば、その思いがいつか振り向いてくれると信じていた。

……けれども、それは私の甘い幻想だったようだ。



目の端から流れるものを拭いながら、私は王室に備えられた自分の部屋に飛び込む。

その夜は朝まで枕に顔を押しつけて嗚咽した。
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