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31.会えない日々(Side亮祐)
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仕事納めの日の翌日、百合を実家へ連れて行き両親へ紹介した。
百合は終始緊張している様子だった。
追い出されるんじゃないかと心配していたと後から聞いて驚いたくらいだ。
そんな心配は全く杞憂だったと言っていい。
両親は大変百合を気に入っていたからだ。
百合を家まで送り届けた後、俺はその足でまた実家に戻ったのだが、戻り次第すぐにまた両親に捕まったのだ。
「もう、もっと長居してくれても良かったのに。すぐ連れて帰っちゃうんだから」
「百合も緊張でずっと気を張ってたからさ。また連れてくるよ」
「そうしてちょうだい。本当に良いお嬢さんだったわね。姿勢や言葉遣いもきちんとしているし、亮祐の外面だけに惹かれたわけではないのが伝わってきたのが好印象だったわ」
「そういえば百合さんは確か仕事の評価も良かった気がするな。広報部長の安西くんが以前褒めていたのを今思い出した」
父も母も満足気に頷いている。
「ちなみに、俺が聞くのも変な話だけど、父さんも母さんも家柄は気にしないの?百合はいわゆる良家のご令嬢ではないよ」
「お見合いなら家柄は大事だけど、恋愛結婚なら全く気にしないわ。亮祐は自分の才覚だけでやっていける力があるもの、相手に家柄は必要ないでしょう?亮祐を理解して支えることができる子なら歓迎よ」
(まぁ百合なら全然問題ないと思ったけど、予想以上に両親の心を掴んでるな。さすがだな)
「わかった。じゃあそういうことだから、色々よろしくね」
俺は言外に見合いとか面倒ごとはやめてくれよという思いを含ませる。
母は心得たとばかりにニヤッと笑って俺を見る。
「年始に挨拶に来る親族は、たぶん亮祐の結婚はまだかとか、見合いはどうかとか口々に言ってくるでしょうから私がなんとか撒いてあげるわ」
「それは助かるよ」
俺は母の協力を引き出すことに漕ぎ着けた。
これで年始の親族付き合いも多少マシにはなるだろう。
年末はそのまま実家で過ごし、年始は元旦から親族への挨拶や付き合いに明け暮れる。
百合とは年明けに一度電話をした。
久しぶりの実家で家族との時間を楽しんでいる様子だった。
百合もたまには実家でゆっくりしたいだろうと思い、年明けの電話以外はメッセージで連絡を取り合うくらいだった。
そして1月5日、本日から仕事始まりである。
年始のスケジュールを確認し、俺は少しげんなりする。
仕方がないことではあるが、年始は新年の挨拶ラッシュで、多数の取引先からのアポイントで埋め尽くされている。
また会社の経営層だけが集まるような賀詞交換会などにも招かれており、ともかく年始は殺人的な忙しさなのだ。
さらに俺が統括を担当している海外事業も動きがあり、今打ち合わせが集中している。
この感じでいくと、近々現地に行って最終調整するために長期での海外出張が決まりそうだ。
そんな忙しいスケジュールをこなし、マンションに戻るとソファーに身を投げる。
ぐったりしながら周囲を見渡すと、やけに家の中が広く感じた。
(あぁ、百合がいないからか‥‥)
ここ最近はこのマンションで百合とよく過ごしていたから、こうして会えない日が続くと寂しく感じる。
百合も忙しくしているのか、簡単なメッセージをやりとりするくらいで、しばらく直接言葉を交わしていない。
(百合の声が聞きたいな‥‥)
時計を見やれば、時刻は夜11時半だ。
この時間ならまだ百合は起きているだろう。
そう思い、俺はスマホに手を伸ばすと、百合に電話をかける。
数コールすると百合が出た。
「もしもし、百合?もしかして寝てた?」
「ちょうどシャワー浴びてました。電話取りそびれそうになっちゃった。こんな時間にどうしたんですか?」
「いや、特に用事はないけど、百合の声が聞きたくなって」
「私も亮祐さんの声が聞きたかったから嬉しい」
抱きしめられないのに、そんな可愛いことを言わないで欲しい。
疲れている時に百合を抱きしめたらどんなに癒されるだろう。
「俺の声が聞きたかったのなら百合から電話してくれれば良かったのに」
「だって亮祐さんすごく忙しそうだし、年始だから会合も多いんだろうから邪魔したら悪いなって思って」
「百合のことを邪魔だなんて思うわけないのに。百合はもっと俺に甘えてもいいよ?会いたいとか寂しいとか言ってこないしさ」
「どうだろう。いつも色々甘えさせてもらってると思うんだけど」
「全然だよ」
百合は甘えるのが苦手だと思う。
自分から求めることが少ないと感じるのだ。
以前百合の弟の蒼太くんが言っていたことをふと思い出す。
以前は”来るもの拒まず、去る者追わず”の付き合いをしていた百合なのだ。
もしかするとその弊害で自分から求めたり、甘えたりすることに慣れていないのかもしれないなと思った。
「しばらく忙しそうなんですか?」
「2月に入れば落ち着くはずだから、2月の最初の週末にどこか遠出でもしようか」
「本当ですか!楽しみ!」
百合との約束を楽しみに、俺もそれまで頑張ろうと自分に喝を入れたーー。
百合は終始緊張している様子だった。
追い出されるんじゃないかと心配していたと後から聞いて驚いたくらいだ。
そんな心配は全く杞憂だったと言っていい。
両親は大変百合を気に入っていたからだ。
百合を家まで送り届けた後、俺はその足でまた実家に戻ったのだが、戻り次第すぐにまた両親に捕まったのだ。
「もう、もっと長居してくれても良かったのに。すぐ連れて帰っちゃうんだから」
「百合も緊張でずっと気を張ってたからさ。また連れてくるよ」
「そうしてちょうだい。本当に良いお嬢さんだったわね。姿勢や言葉遣いもきちんとしているし、亮祐の外面だけに惹かれたわけではないのが伝わってきたのが好印象だったわ」
「そういえば百合さんは確か仕事の評価も良かった気がするな。広報部長の安西くんが以前褒めていたのを今思い出した」
父も母も満足気に頷いている。
「ちなみに、俺が聞くのも変な話だけど、父さんも母さんも家柄は気にしないの?百合はいわゆる良家のご令嬢ではないよ」
「お見合いなら家柄は大事だけど、恋愛結婚なら全く気にしないわ。亮祐は自分の才覚だけでやっていける力があるもの、相手に家柄は必要ないでしょう?亮祐を理解して支えることができる子なら歓迎よ」
(まぁ百合なら全然問題ないと思ったけど、予想以上に両親の心を掴んでるな。さすがだな)
「わかった。じゃあそういうことだから、色々よろしくね」
俺は言外に見合いとか面倒ごとはやめてくれよという思いを含ませる。
母は心得たとばかりにニヤッと笑って俺を見る。
「年始に挨拶に来る親族は、たぶん亮祐の結婚はまだかとか、見合いはどうかとか口々に言ってくるでしょうから私がなんとか撒いてあげるわ」
「それは助かるよ」
俺は母の協力を引き出すことに漕ぎ着けた。
これで年始の親族付き合いも多少マシにはなるだろう。
年末はそのまま実家で過ごし、年始は元旦から親族への挨拶や付き合いに明け暮れる。
百合とは年明けに一度電話をした。
久しぶりの実家で家族との時間を楽しんでいる様子だった。
百合もたまには実家でゆっくりしたいだろうと思い、年明けの電話以外はメッセージで連絡を取り合うくらいだった。
そして1月5日、本日から仕事始まりである。
年始のスケジュールを確認し、俺は少しげんなりする。
仕方がないことではあるが、年始は新年の挨拶ラッシュで、多数の取引先からのアポイントで埋め尽くされている。
また会社の経営層だけが集まるような賀詞交換会などにも招かれており、ともかく年始は殺人的な忙しさなのだ。
さらに俺が統括を担当している海外事業も動きがあり、今打ち合わせが集中している。
この感じでいくと、近々現地に行って最終調整するために長期での海外出張が決まりそうだ。
そんな忙しいスケジュールをこなし、マンションに戻るとソファーに身を投げる。
ぐったりしながら周囲を見渡すと、やけに家の中が広く感じた。
(あぁ、百合がいないからか‥‥)
ここ最近はこのマンションで百合とよく過ごしていたから、こうして会えない日が続くと寂しく感じる。
百合も忙しくしているのか、簡単なメッセージをやりとりするくらいで、しばらく直接言葉を交わしていない。
(百合の声が聞きたいな‥‥)
時計を見やれば、時刻は夜11時半だ。
この時間ならまだ百合は起きているだろう。
そう思い、俺はスマホに手を伸ばすと、百合に電話をかける。
数コールすると百合が出た。
「もしもし、百合?もしかして寝てた?」
「ちょうどシャワー浴びてました。電話取りそびれそうになっちゃった。こんな時間にどうしたんですか?」
「いや、特に用事はないけど、百合の声が聞きたくなって」
「私も亮祐さんの声が聞きたかったから嬉しい」
抱きしめられないのに、そんな可愛いことを言わないで欲しい。
疲れている時に百合を抱きしめたらどんなに癒されるだろう。
「俺の声が聞きたかったのなら百合から電話してくれれば良かったのに」
「だって亮祐さんすごく忙しそうだし、年始だから会合も多いんだろうから邪魔したら悪いなって思って」
「百合のことを邪魔だなんて思うわけないのに。百合はもっと俺に甘えてもいいよ?会いたいとか寂しいとか言ってこないしさ」
「どうだろう。いつも色々甘えさせてもらってると思うんだけど」
「全然だよ」
百合は甘えるのが苦手だと思う。
自分から求めることが少ないと感じるのだ。
以前百合の弟の蒼太くんが言っていたことをふと思い出す。
以前は”来るもの拒まず、去る者追わず”の付き合いをしていた百合なのだ。
もしかするとその弊害で自分から求めたり、甘えたりすることに慣れていないのかもしれないなと思った。
「しばらく忙しそうなんですか?」
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