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32.温泉旅行(Side百合)
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忙しかった1月が過ぎ、2月がやってきた。
亮祐さんの仕事もだいぶ落ち着いてきたとのことで、私たちは予定通り週末に遠出することになった。
今回の行き先は箱根だ。
疲れを癒すために、1泊2日で温泉に行くことになったのだ。
久しぶりに亮祐さんと出かけることになり、私の気分は上昇する。
しかしこの旅行中に思わぬ人と再会することになるとはこの時想像すらしていなかったーー。
「なんだかすごく久しぶりな気がしますね」
「本当だね。1月は残念ながらお互い忙しくて、なかなか時間取れなかったからね」
マンションまで迎えに来てくれた亮祐さんの車に乗り込むなり、私たちは会えなかった時間を埋めるようにお互いの顔を見つめ合う。
そしてどちらともなくハグをする。
「久しぶりの百合の匂いだな‥‥」
「亮祐さんの匂いもしますよ。なんだか落ち着く‥‥」
存在を確かめ合うように、お互いの体温を感じ合った。
「じゃあそろそろ行こうか。向こうに着いてからゆっくりしよう」
「はい!」
箱根まではここから高速を使って車で約2時間だ。
亮祐さんも疲れてるだろうから電車移動でも私は良かったのだが、運転は苦にならないらしく、車で向かうことになった。
(車だと2人きりだから嬉しいな!)
私は浮かれる気持ちを抱えながら、助手席から運転する亮祐さんの横顔を眺めた。
相変わらず端正な顔立ちで、横顔まで美しい。
すっと通った鼻筋は芸術的だとすら思う。
「そんなに見つめられると視線が気になるんだけど。どうしたの?」
「いえ、特になにもないです。ただ見ていたかっただけ。亮祐さんって本当にきれいな顔立ちですね」
「百合がそんなこと言うなんて珍しい。百合に褒められるのは悪くないね」
最初に亮祐さんに出会った頃は、その顔立ちの美しさよりも、春樹にそっくりなことに動揺して意識が向いていた。
今はもう春樹に似ていることは意識的に思い出さないと忘れるくらいだ。
春樹に似てるからではなく、亮祐さん自身を好きになった今、改めて彼の顔を見るとその端正さに目が引き寄せられるだけだった。
到着したのは、箱根にある高級旅館だ。
客室は一つ一つが別荘のように敷地内に独立していて、そのすべてに露天風呂がそれぞれ付いているそうだ。
仲居さんに案内された客室は、畳と木の香りが心地よい落ち着いた雰囲気の和室だった。
(わぁ、素敵!心も身体もリラックスできそうな雰囲気だなぁ)
「お部屋にある露天風呂は、箱根の自然を眺めながらゆっくりお楽しみ頂けます。昼と夜では違った趣きがありますよ。本館にも大浴場がありますので、そちらもよろしければぜひご利用ください」
ニコリと微笑みながら仲居さんが説明してくれる。
仲居さんに入れて頂いたお茶を和室ですすって一息つくと、私たちはさっそくまずは大浴場を堪能することにした。
「私の方が時間かかると思うんで、私のことは待たなくて大丈夫。亮祐さんは先にお部屋に戻っていてくださいね」
「分かった。ゆっくりしておいで」
私と亮祐さんは大浴場の前で男湯と女湯に別れる。
私は軽く手をヒラヒラと亮祐さんに向けて振りながら女湯へ進んだ。
(もともとお風呂時間が長いし、髪を乾かしたり、メイクをしたりすると、亮祐さんを結構お部屋で待たせちゃうかもな。あまり待たせすぎないように気をつけよう!)
大浴場は広々としていて、お客さんも数えるほどのためのんびりとした雰囲気だ。
大浴場にも露天風呂があり、ここも客室に負けじと絶好のロケーションである。
自然の一部に溶け込んだような解放感だ。
(2人でまったりもいいけど、1人で温泉も至福の時間だなぁ)
お湯に浸かっていると、ほぉと光悦のため息が漏れた。
しばらくそうして1人で極上の時を過ごしていると、後から大浴場に入ってきた女性グループの声がふと耳に飛び込んできた。
「やっばぁ~い!なにあれ、超絶イケメンだったね!」
「浴衣姿が色気ダダ漏れでしょ」
「一人だったけど彼女と来てるのかな~?さっきは思わず見惚れちゃって声かけられなかったーー。もったいないっ!」
きゃあきゃあと黄色い悲鳴を上げている。
それを聞いて直感的に亮祐さんのことだと思った。
もうお風呂に入り終えて大浴場から出たのだろう。
(亮祐さんを一人にしておくと女の人に囲まれちゃいそう!私もそろそろ出よう)
女性グループの声をきっかけに私は大浴場をあとにすると、急いで髪を乾かしメイクを施して部屋に戻った。
部屋に戻ると浴衣姿の亮祐さんが、和室の座椅子に座りのんびりしているところだった。
(亮祐さんの浴衣姿の破壊力がすごい‥‥。あの女性が言ってたとおり、色気が漏れてる‥‥!)
お風呂上がりのちょっと気だるい雰囲気と浴衣からのぞく鎖骨が色っぽい。
そんな亮祐さんの姿にドキドキ胸が高鳴る。
勝手に目が吸い寄せられ、食い入るように見つめてしまった。
「百合?戻ったの?」
「‥‥!あ、はい。お待たせしました!」
声をかけられてハッと我に戻る。
「大浴場はどうだった?」
「えっと、大浴場の露天風呂もすごく良かったです。見晴らしがよくて癒されました」
「男湯も人が少なかったからのんびりできたよ」
「そ、そうですか!」
ドキドキしてしまって若干声が上ずってしまったが、変に思われなかっただろうか。
私は平然を装いながら、すまし顔で亮祐さんの向かいの座椅子に腰をかけた。
「さっきから百合の態度がちょっと変だね。俺がいない間に大浴場で何かあった?」
「え、何もないですよ?ただ‥‥」
「ただ?」
「ただ、亮祐さんのお風呂上がりの姿が色っぽいくて、ど、動揺しちゃっただけ!」
「お風呂上がりなんて今更じゃない?いつも見てるのに」
「今日は浴衣姿じゃないですか」
「へぇ。百合は俺の浴衣姿が好きなんだ?あとで百合が脱がせてくれていいよ?」
ニヤニヤと楽しそうに亮祐さんは笑いながら、私をからかう。
脱がせるところをちょっと想像してしまい、恥ずかしくて真っ赤になってしまった。
「もしかして想像した?顔真っ赤だけど」
「‥‥もう!からかわないでください」
「百合が可愛いのが悪い。からかいたくなるんだよ。食事の後、部屋の露天風呂には一緒に入ろうね。浴衣脱がし合いながら」
「‥‥!」
亮祐さんは私の羞恥を煽るような言い方が本当にうまい。
耐え切れず俯いてしまった。
そんな私を眺めながら、亮祐さんは破顔している。
そういえば、亮祐さんは以前よりよく笑うようになったなとその時思った。
ほどなくして仲居さんがお部屋に夕食を準備してくれる。
四季折々の食材を活かした、美しい本格懐石料理だ。
鮮度の良い魚介や、地元産の野菜、全国から選りすぐった素材を季節ごとに提供しているらしい。
2人で感想を言い合いながら、一つ一つ美味しくいただく。
亮祐さんは食事に合わせて地元のお酒も楽しんでいる。
アルコール度数が高いらしいが、私もせっかくなので少しいただくと、スッキリと爽やかで飲みやすい。
贅沢な料理に舌鼓を打ちながら、お酒も入りほろ酔い状態になった私は、ものすごく気持ちが高揚し、最高に楽しい気分だった。
食事を終えると、亮祐さんのスマホに着信が入り、私に断りを入れると亮祐さんは席を外す。
その姿を見届けると、少し気の抜けた私はそのまま畳に横になった。
(あ、畳の香りが落ち着く。気持ちいい)
ちょっとだけ休憩するつもりだったのに、その心地よさに誘われ、私はそのまま目を閉じたーー。
亮祐さんの仕事もだいぶ落ち着いてきたとのことで、私たちは予定通り週末に遠出することになった。
今回の行き先は箱根だ。
疲れを癒すために、1泊2日で温泉に行くことになったのだ。
久しぶりに亮祐さんと出かけることになり、私の気分は上昇する。
しかしこの旅行中に思わぬ人と再会することになるとはこの時想像すらしていなかったーー。
「なんだかすごく久しぶりな気がしますね」
「本当だね。1月は残念ながらお互い忙しくて、なかなか時間取れなかったからね」
マンションまで迎えに来てくれた亮祐さんの車に乗り込むなり、私たちは会えなかった時間を埋めるようにお互いの顔を見つめ合う。
そしてどちらともなくハグをする。
「久しぶりの百合の匂いだな‥‥」
「亮祐さんの匂いもしますよ。なんだか落ち着く‥‥」
存在を確かめ合うように、お互いの体温を感じ合った。
「じゃあそろそろ行こうか。向こうに着いてからゆっくりしよう」
「はい!」
箱根まではここから高速を使って車で約2時間だ。
亮祐さんも疲れてるだろうから電車移動でも私は良かったのだが、運転は苦にならないらしく、車で向かうことになった。
(車だと2人きりだから嬉しいな!)
私は浮かれる気持ちを抱えながら、助手席から運転する亮祐さんの横顔を眺めた。
相変わらず端正な顔立ちで、横顔まで美しい。
すっと通った鼻筋は芸術的だとすら思う。
「そんなに見つめられると視線が気になるんだけど。どうしたの?」
「いえ、特になにもないです。ただ見ていたかっただけ。亮祐さんって本当にきれいな顔立ちですね」
「百合がそんなこと言うなんて珍しい。百合に褒められるのは悪くないね」
最初に亮祐さんに出会った頃は、その顔立ちの美しさよりも、春樹にそっくりなことに動揺して意識が向いていた。
今はもう春樹に似ていることは意識的に思い出さないと忘れるくらいだ。
春樹に似てるからではなく、亮祐さん自身を好きになった今、改めて彼の顔を見るとその端正さに目が引き寄せられるだけだった。
到着したのは、箱根にある高級旅館だ。
客室は一つ一つが別荘のように敷地内に独立していて、そのすべてに露天風呂がそれぞれ付いているそうだ。
仲居さんに案内された客室は、畳と木の香りが心地よい落ち着いた雰囲気の和室だった。
(わぁ、素敵!心も身体もリラックスできそうな雰囲気だなぁ)
「お部屋にある露天風呂は、箱根の自然を眺めながらゆっくりお楽しみ頂けます。昼と夜では違った趣きがありますよ。本館にも大浴場がありますので、そちらもよろしければぜひご利用ください」
ニコリと微笑みながら仲居さんが説明してくれる。
仲居さんに入れて頂いたお茶を和室ですすって一息つくと、私たちはさっそくまずは大浴場を堪能することにした。
「私の方が時間かかると思うんで、私のことは待たなくて大丈夫。亮祐さんは先にお部屋に戻っていてくださいね」
「分かった。ゆっくりしておいで」
私と亮祐さんは大浴場の前で男湯と女湯に別れる。
私は軽く手をヒラヒラと亮祐さんに向けて振りながら女湯へ進んだ。
(もともとお風呂時間が長いし、髪を乾かしたり、メイクをしたりすると、亮祐さんを結構お部屋で待たせちゃうかもな。あまり待たせすぎないように気をつけよう!)
大浴場は広々としていて、お客さんも数えるほどのためのんびりとした雰囲気だ。
大浴場にも露天風呂があり、ここも客室に負けじと絶好のロケーションである。
自然の一部に溶け込んだような解放感だ。
(2人でまったりもいいけど、1人で温泉も至福の時間だなぁ)
お湯に浸かっていると、ほぉと光悦のため息が漏れた。
しばらくそうして1人で極上の時を過ごしていると、後から大浴場に入ってきた女性グループの声がふと耳に飛び込んできた。
「やっばぁ~い!なにあれ、超絶イケメンだったね!」
「浴衣姿が色気ダダ漏れでしょ」
「一人だったけど彼女と来てるのかな~?さっきは思わず見惚れちゃって声かけられなかったーー。もったいないっ!」
きゃあきゃあと黄色い悲鳴を上げている。
それを聞いて直感的に亮祐さんのことだと思った。
もうお風呂に入り終えて大浴場から出たのだろう。
(亮祐さんを一人にしておくと女の人に囲まれちゃいそう!私もそろそろ出よう)
女性グループの声をきっかけに私は大浴場をあとにすると、急いで髪を乾かしメイクを施して部屋に戻った。
部屋に戻ると浴衣姿の亮祐さんが、和室の座椅子に座りのんびりしているところだった。
(亮祐さんの浴衣姿の破壊力がすごい‥‥。あの女性が言ってたとおり、色気が漏れてる‥‥!)
お風呂上がりのちょっと気だるい雰囲気と浴衣からのぞく鎖骨が色っぽい。
そんな亮祐さんの姿にドキドキ胸が高鳴る。
勝手に目が吸い寄せられ、食い入るように見つめてしまった。
「百合?戻ったの?」
「‥‥!あ、はい。お待たせしました!」
声をかけられてハッと我に戻る。
「大浴場はどうだった?」
「えっと、大浴場の露天風呂もすごく良かったです。見晴らしがよくて癒されました」
「男湯も人が少なかったからのんびりできたよ」
「そ、そうですか!」
ドキドキしてしまって若干声が上ずってしまったが、変に思われなかっただろうか。
私は平然を装いながら、すまし顔で亮祐さんの向かいの座椅子に腰をかけた。
「さっきから百合の態度がちょっと変だね。俺がいない間に大浴場で何かあった?」
「え、何もないですよ?ただ‥‥」
「ただ?」
「ただ、亮祐さんのお風呂上がりの姿が色っぽいくて、ど、動揺しちゃっただけ!」
「お風呂上がりなんて今更じゃない?いつも見てるのに」
「今日は浴衣姿じゃないですか」
「へぇ。百合は俺の浴衣姿が好きなんだ?あとで百合が脱がせてくれていいよ?」
ニヤニヤと楽しそうに亮祐さんは笑いながら、私をからかう。
脱がせるところをちょっと想像してしまい、恥ずかしくて真っ赤になってしまった。
「もしかして想像した?顔真っ赤だけど」
「‥‥もう!からかわないでください」
「百合が可愛いのが悪い。からかいたくなるんだよ。食事の後、部屋の露天風呂には一緒に入ろうね。浴衣脱がし合いながら」
「‥‥!」
亮祐さんは私の羞恥を煽るような言い方が本当にうまい。
耐え切れず俯いてしまった。
そんな私を眺めながら、亮祐さんは破顔している。
そういえば、亮祐さんは以前よりよく笑うようになったなとその時思った。
ほどなくして仲居さんがお部屋に夕食を準備してくれる。
四季折々の食材を活かした、美しい本格懐石料理だ。
鮮度の良い魚介や、地元産の野菜、全国から選りすぐった素材を季節ごとに提供しているらしい。
2人で感想を言い合いながら、一つ一つ美味しくいただく。
亮祐さんは食事に合わせて地元のお酒も楽しんでいる。
アルコール度数が高いらしいが、私もせっかくなので少しいただくと、スッキリと爽やかで飲みやすい。
贅沢な料理に舌鼓を打ちながら、お酒も入りほろ酔い状態になった私は、ものすごく気持ちが高揚し、最高に楽しい気分だった。
食事を終えると、亮祐さんのスマホに着信が入り、私に断りを入れると亮祐さんは席を外す。
その姿を見届けると、少し気の抜けた私はそのまま畳に横になった。
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