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第1話 異世界に外道降臨する

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あん?なんだ、ここは?

周りを見回すとテレビとかでしか見た事がない。雄大な草原が広がっていた。
そこには、俺が所属していた学校のクラスメイト22人と教師1人がいた。
つまり、24人が草原に突っ立ってる状況な訳だが。

グイグイ、グイグイ

「竜一、竜一」

ん?誰だ俺のズボンを引っ張る奴は?

「ん?何だトモか?どうしたんだ?てか夢ではなかったんだな」

俺の身長は190cmに対して今、トモと呼んだ140cmあると言い張るがそれ以下のチビ女。

こいつの名前は三日月 友(ミカヅキトモ)。
俺の幼馴染で廃人ゲーマーであり、現在訳有りで俺の家で一緒に暮らしいる。

「良かったね」

「何が?」

「どうやら悪い異世界転移では無さそう。だから、良かったね」

何がいいのか全然分からないんだが。

「異世界転移?最悪?」

「うん、最悪は呼び出されて召喚された場合だよね。王様次第で次のイベントが決まっちゃうから」

「お前が何故冷静かは知らないが、とりあえず、お前ここにくる前何してた?ちなみに俺は体育館裏で先輩ボコってカツアゲしてた」

「私は学校のトイレで全裸になって2穴にバイブ突っ込んでオナニーしてた」

学校でなにしてんだよ!!

「う、そ、屋上でゲームしてた」

こいつ!けど、

「場所はバラバラだったんだな。何で俺等のクラス?まさか他のクラスも見当たらないが、どこかに跳ばされたのか?」

「さっきからステータスを見たいんだけど見れないんだよね。お約束のステータスは。もしかしてプレートや水晶みたいな特殊なアイテムが必要なのかも?」

ふ~ん、ちなみに何で異世界なんて分かるんだ。

「だって、あれ」

「・・・・・・・は?」

トモが指を差した方を見る。
俺は空を見上げるとゲームでよく見るワイバーン?が飛んでいた。何十匹も、それだけなら凄いやらやっぱ異世界なんだなとはしゃいでやるんだが。

「おい、あれなんだ!」

「ワイバーン?嘘だろ!」

周りの連中が空に飛んでいるワイバーンに気付き騒ぎ出す。そりゃそうだろうな!何か全速力でこっちに飛んで来てんだからな!

「来るぞ!皆逃げろ!」

誰かの声を皮切りに皆が一斉に走り出した。
誰もが自分が助かりたいとバラバラに逃げていく。

「くそっ!おい!!三日月!」

いつの間にか三日月の姿を見失った。

ワイバーンが次々に襲いかかってきたので俺も逃げざるをえなかった。

気付くと周りには誰もいない。

必死で走ったのであの場所がどっちにあるか分からなくなってしまった。

いや、むしろ好都合かも。

なんせウチのクラスは真面目ちゃんが多いからな。せっかく異世界に来たんだ楽しまないとな。色々、な。くくくはははははは!
さて、幸いにも人が通った形跡のある道を見つけた。
ミッキーともう1人、幼馴染の2人は恐らく無事だろうからな。生きてりゃその内会えるだろう。

ビュッ!ガシッ!

うおっ!あぶねえ!
突然近くの草むらから俺の眉間目掛けて矢が飛んできたので思わず掴んでしまった。

草むらから出てきたのは・・・ゴブリンか?
あれだよな。醜悪な鬼面に肌が緑で小さい体躯の腰布1枚と・・・ファンタジーの王道ゴブリンさんですよね!

ゴブリンは弓を投げ捨て腰にある棍棒に持ち替え襲ってきた。
俺はそれを最小限の動きでかわしてゴブリンの頭を掴んで顔面に思い切り膝蹴りをくらわす。

『ギャア!ギャア!ギャア!』

潰れた鼻を抑え転げ回るゴブリンの上に馬乗りになってひたすら顔面を殴り付ける。

「おらおら、抵抗してみろよ!ゴブリンさん!おらおら!」

しばらくするとゴブリンは完全に動かなくなった。
はっきりいって地球のチンピラの方が強かったな。
さて、死体は消えないんだな。
もしかして体内に魔石があるタイプの魔物なのか?
討伐した印に耳を切り取るなんて漫画や小説にあったな。
けど面倒なのでゴブリンの死体は道端に放置して先に進む。

20分くらい歩いていくと3台の馬車を見つけた。2台は普通のシンプルな馬車だが、1台だけ豪奢な馬車が俺が来た道とは反対側からやって来ていた。
30人くらいの鎧を着た屈強そうな男達付きで。
どっかのお偉いさんでも乗っているんだろうか?

「面倒そうだしここはスルーするか」

俺は馬車の進行の邪魔にならないように道の端によった。

ぷっ!ぷふふ!

あん?馬車の周りにいた鎧を着た連中が俺とすれ違い様に笑いやがった!

『おい、見たかよ今の平民!よくあんな薄汚れた格好で平気だよな』

『もしかしたら奴隷が逃げ出したんじゃねえか?』

『しかも臭かったしな。生きてて恥ずかしくねえのか?まさかあのまま町まで行く気じゃねえよな?』

『ははは、入れて貰える訳がねえじゃねーか。身分証すら持っていなさそうだしな』

小声で喋ってるつもりなんだろうが聞こえてんだよ!
くくく、ちょうどいいや!チュートリアルと行きますか!人殺しのな!

ドッカン!

俺は豪奢な馬車が目の前を通り際に馬車を蹴りあげ横転させた。

「なっ!貴様何をした!」

「なんて事をするんだ貴様!」

「生きて帰れると思うなよ!」

流石に行動が早いな。まあ、馬車に蹴り入れるのを止められない程度の連中だ。恐れる程でもないだろう。

「うおおおおおおお!」

1人が斬りかかって来たので落ちて木の枝を拾って攻撃を避けるついでに目玉に突き刺してやった。

「ぎゃああああああ!」

おいおい、ぷぷぷ!さっきのゴブリンみたいに転げ回ってんじゃないですか?ウケる!
おっと!さっきはゴブリン1匹だったけど残り29人はいるからな。さっさと片付けるか!

「ぎゃああああああ!」

「くそっ!貴様!我々にこんなことしてタダで済むとでも!ぐはっ!」

「私は貴族だぞ!こんな!ぎゃああああああ!」

「馬車に乗っている方を誰だと!」

10分もかからずに残りは無力化する事が出来た。

さてさて、中身の確認をしますか?

俺は馬車の扉に手を掛けようとするが手を止める。
気配を感じる。増援か?早すぎるだろ?別動隊でもいたのか?
俺は馬車の護衛が装備していた剣を拾うと一番近くから気配を感じる方に投げようとする。

「待って!待ってくれ!」

あん?

出てきたのは明らかに馬車の護衛のような立派な鎧ではない。どちらかというと盗賊風の男が出てきた。

「俺達はここいらで盗賊をやっている者で!俺は頭のギースってもんだ!」

盗賊風じゃなくてマジもんの盗賊だった。

「たった10人でか?」

「うっ!人数まで把握されてんのかよ。おいっ!お前ら!武器は全部捨てて出てこい。ゆっくりだ!」

ギースという男がそういうと草むらから残りの9人が出てきた。

「で?獲物を掠め取ろうという訳か?」

「いやいや、ちょっとでいいからおこぼれを貰おうと。ほら、ダンナだって1人じゃ戦利品やらを運べないでしょ?俺達が一緒に運んでやるから少しでも貰えたらなあって?ははは」

「いいだろう」

俺は即決で決める。
定番のアイテムボックスやら魔法袋があれば1人でもいいんだがな。ないなら使える奴等なら使うまでだ。

「その豪華な馬車の中身を無事な馬車に乗せ換えろ!あと護衛の連中は殺して装備を剥ぎ取れ!」

俺は直ぐ様指示を出す。

盗賊達は素直に俺の指示に従って行動する。

「待って!俺は貴族だ!身代金がとれるぞ!生かす価値はある、ぎゃああああああ!」

「やめろ!そうだ!私が知っている事ならなんでも話す!私が、ぎゃああああああ!」

「誰にも言いませんから!どうか!命だけは!ぎゃああああああ!」

ギースの部下達が次々に護衛共を始末していく。俺はそれを見てどうやらコイツらとの繋がりはないものと判断した。

「お頭!護衛の中に女が混じってましたがどうします?」

「ああ?殺せ!いつもなら持ち帰るがダンナの指示に」

「いや、殺さなくていい。そいつはてめらの報酬としてやるよ。ただし!金品での報酬は減らさすて貰うがな」

「仕方がねえか。よし!そいつは生かしとけ!」

「お頭!馬車の中身なんですが」

「あん?ガラクタだったなんて言わねえよな?」

「いえ、豪華な馬車の中身が小娘と従者の女だけで小娘の方が自分は『公爵家の娘』だと言ってるんですがどうします?」

ギースはこちらに視線を向ける。
判断はこっちに任せるようだな。

「二人とも生かしておけ!さて、近くに寛げる場所はあるか?戦利品の確認がしたいしな」

「少し遠くなるが俺らのアジトがある。前まではこの近くにあったんだが騎士団に感づかれてな」

なるほど、前はもっと人数がいたがその騎士団にやられたって訳か。

「よし!そこに移動するぞ!ギースとか言ったな?お前とは話があるから俺と小娘と従者の女でギースで馬車に乗って貰う。護衛の女共はもう1台の馬車に縛って積んどけ!行くぞ!」

俺が号令を出すと急に馬車が浮いて走り出した。

「何が起きた!」

「ダンナ!驚かせて悪い!ありゃ部下の魔法だ。名は『レビテーション』物を浮かせる魔法だ。馬の足跡や馬車の車輪跡を追ってこれないようにするためにな」

魔法か。やはりあるのか?

「どのくらいで着く?」

「4日だな。人目を気にせず行ければもっと早くに着くが」

「で、ギースお前等は盗賊として何をしていた。妙に殺し馴れていたが?」

「ん?ああ、俺達は元々傭兵だったんだが戦争が最近めっきり起きなくてな。かといって冒険者は面倒でなりたくねえしい。で、俺等は盗賊になって主に人拐いで違法奴隷市場に売り捌いてたな」

「ちなみに人間はいくらで売れるんだ?」

そういうと紙に書いた物を見せてくれた。

子供・・・・50万ユース

成人・・・・80万ユース

老人・・・・5万ユース

能力者、魔法使い・・・・200万ユース

うん、わからん!

高いのか!安いのか!

「最近は奴隷禁止令のせいで更に締め付けが酷くなっていってな。それじゃ食って行けなくなって、商人を襲い出したら、運悪く騎士団と鉢合わせになってな。残り人数が10人まで減っちまった」

「能力者と魔法使いがなんでこんなに高いんだ?」

「それは最低価格で能力や魔法によっては更に金額が上がるぞ?なんで高いかなんて決まってんだろ?圧倒的に数が少ないからな?」

「能力者と魔法使いの違いって何だ?」

「何でそんな事聞くんだ?常識だろ?」

能力者は自身の肉体に影響を与える力
魔法使いは自身の肉体以外の外部に影響を与える力

「これって対象が違うだけで同じような力じゃねーのか?」

「ははは、元々は別物と考えられていたんだよ。まあ、別に困らないからそのまま能力者と魔法使いって別けて呼んでるな」

ふ~ん、能力に魔法使い・・・ね。

「それでだ!ダンナ!今後はどうする気なんだ?」

ギースの質問に俺は、

「好き勝手に生きるだけだ」



俺はオンラインゲームでも悪人プレイが大好きだった



ガキの頃からヒーローより怪人が好きだった



弱い奴を痛め付ける事が好きだった



強いと思ってる奴を叩きのめすのが好きだった



持っている奴から奪うのが好きだった



持ってない奴を嘲笑うのが好きだった



さあ、せっかく異世界に来たんだ!



大いに楽しもうじゃないか!


悪人プレイを!!
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