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第36話 断言しよう!

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ドカッ!

石を当てられた両腕が人のではない男がバルボの腹に蹴りを入れ突き飛ばす。手加減された蹴り、じわじわなぶり殺しにする気か。

「返せよ!母ちゃんと姉ちゃんを返せ!」

バキッ!

バルボはすぐに立ち上がり、殴りかかるが男はバルボの顔に蹴りを入れ、またも突き飛ばす。

「うっ!痛い、けど痛くない!うぐっ!」

ドカッ!

倒れ込んだバルボが再び立ち上がろうするが、今度は男がバルボの体を踏みつけ動きを封じる。

「どけよ、クソ野郎!誰もがお前等の力に屈するなんて思うなよ!いつかお前等はぶっ殺されるぞ!ざまあ見ろ!あの世でお前等が来るのを待っていてやるよ!」

その言葉を聞いた家屋に隠れた人間、この町の警備隊の『マラカス』がバルボを助けようと武器を手にとり、少年の元に行こうとするが警備隊隊長『カールトン』がそれを止める。

「馬鹿っ!何をする気だ?まさか助けようとしてるんじゃないだろうな?やめろ、『聖騎士』に逆らうな!勝ち目なんてありはしないんだ、奴等が通り過ぎるのを大人しく待つんだ」

「バルボが殺されます!子供が死ぬ覚悟をして奴等に向かって行ったのに自分等は指をくわえて傍観を気取るきですか!」

「バルボは!・・・・バルボは、自暴自棄になっただけだ、父親を目の前で殺され母親と姉がヴァームの町民達の目の前で集団性暴行を受けて『聖騎士』共に連れ去られた。だから自棄になって突っ込んだだけ、自業自得だ・・・見捨てろ」

「しかし、」

カールトンはマラカスを睨み付ける。

「お前の奥さんは『前回の襲撃』のさい、運よく助かった、運よくだ!お前が奴等に突っ込んでいけばお前の奥さんがお前のやらかした事の責任をとらされる可能性だってあるんだぞ!」

マラカスの顔に明らかな動揺が見てとれる。

「お前の奥さんはまだ十代で若いし顔もいい。奴等は喜んで俺等への見せしめに見せつけるだろうよ!お前の奥さんが暴行を受ける様をな!それでも行くのか?答えろマラカス!」

マラカスは答えられない。マラカスはその場を動けずにいた。

「無理だろう?だがお前は悪くない、とは言えないな・・・・悪いのはユステリカ王国の上層部の連中に、聖騎士、そして逆らえる力がない、弱い俺等が悪い・・・・仕方がないんだ。バルボは諦めろ」

「・・・・・」

マラカスは自分に問いかける。
妻かバルボか。当然天秤にかければ妻の方に傾くに決まっている。
しかしだからと言ってバルボを、子供を見捨てる行為が赦されるのか?

「・・・・やっぱり俺には出来ません!俺はバルボを助けに行きます!」

「馬鹿野郎!無駄死にする気か?やめろ、やめるんだ!お前だけが悪いんじゃない!さっき言ったろ?全員が、弱い俺等が悪いんだ!」

「すみません、それでも俺は行きます!」

「駄目だ!『聖騎士』と事を構えるくらいなら俺等は始めから『国の強制出兵』を受け入れてた!俺等は国からの招集を拒否したんだぞ?『男爵様』に迷惑をかけてまで戦争に反対したのに!戦う気か?」

「すみません、本当にすみません!」

「待て!待つんだ!マラカス!止まれ!」

カールトンの制止を振り切りマラカスはバルボの元に駆ける。

「そこまでだ!その子を離せ!」

「ん?何だ?このクソガキの親か?とんでもねえクソガキだな、いきなり石をぶつけて来やがって、まあ全然痛くはないが俺は今は機嫌が悪いんでな、口の聞き方に気を付けろよ?一瞬で消し炭にするぞ?」

両腕が異形の男はが何もない空間から剣を取り出す。
その剣は炎を纏っている。

『あれは!確か『世界名剣図鑑』にも載っていた『火剣』か?くそっ!能力者のくせに魔剣なんて持ってんじゃねえよ!』

マラカスは自身の武器に視線をやる。
『ヴァーム』の警備隊に支給される大量生産の剣を見る。

『武器の性能差がありすぎる。しかも相手は十一人、だが他の連中は俺なんて眼中にないと油断しきっている。いや、実際に実力差は目も当てれないが、とりあえず特攻するしかない!俺が殺されている間に上手く逃げろよバルボ!』

ウオオオオオオオオオオオ!

マラカスは両腕が異形の男に特攻する。
マラカスは剣を振り上げ、られなかった。
マラカスは信じられなかった。
思わず足を止めてしまった。
斬りかかろうとした男との距離は約5m、まだ間合いに入っていないはずと思っていたマラカスの握っていた柄を残し消失していた。

『って何してんだ俺は!』

マラカスは自分が足を止めてしまっていた事に気付き慌てて意識を男に向けようとするがその必要はなかった。
男はマラカスの目の前に立っていた。剣を振り上げた状態で。

『しまった!クソっ!バルボは・・・・駄目か』

バルボは倒れたままの状態、拘束はされていないが動けずにいた。

『駄目だ、やられる!』

マラカスは目を閉じる。覚悟を決めたとはいえ、やはり死ぬのは怖い。マラカスは思わず目を閉じてしまった。

「はーい、そこまでにしようか月島君?」

マラカスが目を開けると男の振り下ろしていた剣を黒いスーツ姿にレンズ部が黒い眼鏡をかけた女が太刀で受け止めていた。

「・・・・・わあったよ」

男は剣を引いた。

「申し訳ないね、で?貴方はここの町の住人かな?」

「アンタ等は俺達を始末しにきたんじゃないのか?」

「ん?貴方は何か悪い事をしたのかな?けど私達は犯罪を取り締まるような機関には所属していないので、」

「アンタ等はユステリカ王国に所属する『聖騎士』じゃないのか?」

スーツ姿の女性が振り向き集団を指しながら、

「あの統一性が全くなく、珍妙な集団に見える彼等が騎士に見えるのですか?」

「能力者や魔法使いなんだろ?アンタ等は?」

「確かにいますけど?」

「ユステリカ王国内では能力者や魔法使いは国に所属する義務があるんだ。そして能力者や魔法使いのみで構成された騎士団に所属させ、その騎士団に所属している団員が『聖騎士』と呼ばれている。アンタ等は違うのか?」

「私達は他国の生まれでね。単なる旅人だよ」

能力者の集団の旅人だと!いや、これはチャンスだ!

「頼みます!どう、」

「だが断る!」

マラカスは土下座をして彼等を説得しようとするが、その前にスーツ姿の女性が話を聞く前に断りをいれてきた。

「すまないね、その、ウチの大将は・・・・ちょっとそういう人助けは・・・・下手すると二次、三次、いや四次災害を引き起こすかもしれないよ?それでもいいのかい?この地が二度と人が住めない土地になるかもしれませんけど?」

えええええええええ!

力を貸して欲しいと頼もうとしていたんですけど!

「それならアンタは、」

「私がやると国が崩壊しますよ?」

何する気なんだよ!助けて欲しいのに滅びなきゃならないんだよ!クソっ!駄目か!

「他の人は!誰か力を貸してくれ!」

マラカスが集団の方を見るが、

「ねえ、ゲンジにぃにぃ?お小遣いちょうだい?」

「ああ、いいよいいよ!た~んと使いなさい!」

「ゲンジ兄さんお小遣い下さい。これ買いたいんですが?」

「うんうん、ラクシャータちゃんによく似合いそうだね。お兄ちゃんがそのパンフレットに載っている全部買ってあげようね!」

アニスとラクシャータが浅田からお金を巻き上げてる。

「頼むよ、正満、月島にせめてズボンを履かせてくれって言ってくれよお、なあ、友達だろ?頼むよ、このとお~り!」

「まあ、確かにこれは酷いかな?けど更にグレードが下がって全裸の銀のトレイだけになっても怒らないでね?」

変態装備の釈迦峰は秋月に仲介を土下座している。

「ねえ、フォルテ?何とか力になってあげれないかな?」

「お嬢の為なら仕方ない、この国を私の使い魔『ガミーベア』大軍団で滅ぼしてみせましょう!」

「え?助けるんじゃないの?・・・・結果的に助かるならいいのかな?うん!やっちゃてフォルテ!」

「おうよ!任せてくれお嬢様!」

白河とフォルテがいけない方向へと走り出してしまいそうになってたり。

「あの三日月さん!今日の竜一さんのご奉仕するのまぜて下さい!」

「駄目、今日は竜一と新婚設定のラブラブエッチをしたいから、穴女はお呼びじゃないの。穴女は大人しくこの前あげた竜一のチンコを再現したバイブで一人エッチでもしていなさい」

「そんな!昨日、私のご奉仕日の時、エッチを盗撮させてというお願い受け入れたじゃないですか!凄い、恥ずかしかったんですよ」

「それは、うそ、カメラの位置を教えてあげたら、氷狐はカメラが撮りやすい位置に陣取ってた。フェラチオの時なんてジュルジュル凄い大きな音をたててた。喘ぎ声もまるで動物みたいに鳴いてた。さすがオナホ女、地球に帰ったらAV女優になれば?私が撮影してあげる」

「嫌ですよ!私は、竜一さんの専用オナホなんです!他の人に体を触られたくありません!」

「私は出たことあるよ?男優は竜一で顔モザイクいれてたけど」

「出ちゃったんですか!!うわっうわっ、けどやっぱり私は竜一さん一筋ですから!」

「ふふふ、正妻に勝てると思っているの?穴女風情が、いいよ、勝負は今日の夜に」

「ええ、受けて立ちます!!」

三日月と碧海はもう今日の夜の予定を決めていた。

断言しよう!

月島一行に一人としてまともな人間はいない!!!
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