58 / 102
第58話 処刑時間前、銀月救出担当『真智子、アニス、ラクシャータ、フォルテ、アプリコット 』
しおりを挟む処刑開始時間前、
「なんか、おかしくない?」
闘技場に来賓席で銀月が出てくるのを待っている。フォルテ、アプリコットと一般席にいる真智子、アニス、ラクシャータが通信していた。
「闘技場の中に配備されてる兵士が少な過ぎる。本当に最低限の人数しかいないみたいよ」
「少ないのは良い事じゃないのかい?」
「なら配備される予定だった兵士はどこに行ったって話よ!まだ処刑時間じゃないから、ちょっと聞き込んでくるから」
そう言うと真智子は席を立ち上がり、一般席から離れた。
「お嬢、心配しないで。大丈夫だよ!必ず助けてやるさ!」
「・・・・フォルテ!」
アプリコットはフォルテに抱き付いた。
『お嬢・・・すいません、ぶっちゃけ銀月にはここで死んで欲しいのが本音です!白河組長にキツく言われているんです!『俺の可愛い可愛いリコたんに群がる糞虫共を始末しろ!な~に、殺っちまったら山か海にでも捨てちまえ!』田島に殺らせるか?それとも流れ弾で殺るか?助けた後で殺るか?お嬢・・・銀月の命(タマ)獲ったらキッチリケジメつけるんで!お許しを!』
フォルテの心中はこんな感じである。助ける気ゼロである。
「おおい、フォルテ、アプリコット」
「・・・・!なんだ諸星!何があった!」
「いや、普通に通信機越しで話し掛けたのに、何でそんなに慌ててんのよ。もしかして白河さんと百合展開があったの?」
「お前と一緒にするな!この色情魔!で、何か分かったのか?」
「どうやら異世界人が拐われたらしいのよ」
「は?まさか三日月と七瀬が!いくらなんでも早すぎるだろ!」
碧海、三日月、七瀬とは別れて三十分も経ってない。しかも合図を送って作戦を同時進行する予定だったのに。それじゃ王宮側に相手戦力が傾く。こっちの『作戦』としては助かったが、銀月に死んで欲しいフォルテからしては余計なお世話だったが。
「拐われたのは射光矢 月下美人(イルミ ハニー)らしいよ」
「・・・何で、アイツ?」
「と八乙女 夏蓮(ヤオトメ カレン)先生」
「・・・何で?確か光ヶ丘に斬られて重症、しかも意識不明のはずじゃ、」
「先生に付きっきりで看病していた射光矢が一緒に誘拐されたってところね。幸いにも教会でも王宮でもない軍管轄の医療室を使っていたらしいから、今、軍施設で侵入者と交戦中」
「先生達は無事なのか?」
「さあ?そこまでは知らないそうよ。あと、帝国の『雷船車部隊』と共和国の『嵐船部隊』がユステリカ王国、王都に真っ直ぐ向かって来てるらしいよ」
「雷船車?嵐船?なんだいそれは?」
「雷船車っていうのは、簡単に言ったら大地を走る船かしら?まあクルーザー程の大きさで結構速くが走るらしいわよ。で嵐船は大空を飛ぶ船かしら?こっちは帆船程の大きさで速度は遅いけど嵐の中でも進む事が出来るらしいわよ」
「異世界も馬鹿に出来ないな。で、そいつらが同時期に侵攻してきた・・・におうね、もしかしたら帝国と共和国が繋がってる可能性は?」
「ない、とは言い切れないわね。けど今は好都合よ。王都に二国が攻めて来た騒ぎに乗じて逃げればいいわ」
「その雷船部隊と嵐船部隊が来ない可能性は?」
「クルーザー程の大きさで乗用車並みの速さで走る雷船車に大型帆船程の大きさでしかも空を飛んでる嵐船をユステリカ王国が止めれると思う?移動手段が馬くらいしかないのに?」
「・・・よく今まで蹂躙されなかったなこの国?」
「色々理由があるらしいわよ。『公爵家が使役している火竜』に『赤髭の孫』に『赤髭を筆頭に前時代、大陸に名を轟かせた四天王』『魔鏡使いのゼニスドル』『炎獣皇セキチュアーレ』『竜巫女ゲオルギウス』とか国全体は大した事ないけど、個々での強さが厄介な連中がいたからだって」
「じゃあ、何で今回攻めて来たんだ?」
「・・・勇者、とこっちの世界に来てからすぐ三日月さんの暴発事件があったじゃない。古龍のいる山ごと消し飛ばしたやつ。あれの情報が他国にも流れていたらしくてね。さすがにもう見過ごす訳にはいかないって、さっき彷徨いてた敵国の兵士に聞いた無理矢理」
「はやっ!えっ?早くない?さっきユステリカの兵士に『配備される兵士が少ない理由』を聞きに行ってたんだよな?」
「まあ、確かに時間がなかったから、『死体は窓から突き飛ばして落とした』から闘技場の外はちょっとした騒ぎになってるかも?」
「・・・怖っ!アンタ容赦無さすぎじゃない!アンタに背中を見せたくないんですけど!刺されそうで怖いんですけど!」
「大丈夫大丈夫、私が貴女の後ろに立ったら、尻の穴にめがけて極太バイブを突っ込むだけだから♪」
「余計に嫌だよ!絶対私の後ろに立たせねえよ!」
「まあ、その話は置いときましょう★」
「置くなよ!冗談だと言ってくれ頼むから!」
「他にも六つの理由があるのよ」
フォルテを無視して話を進める真智子。
1、公爵家の使役していた火竜消滅。『月島関与』
2、赤髭の孫が行方不明。『月島関与』
3、四天王隠居。
4、魔鏡使いのラグレイ=ゼニスドルは娘が死んだショックで体調不良、自領に引っ込んでる。『月島関与』
5、炎獣皇リオン=セキチュアーレは自由奔放でユステリカ王の命令でも従わせる事は出来なかった。
6、竜巫女エルマ=ゲオルギウスはそもそも聖域である山を守るのが使命なので聖域の外には出ない。
全員が沈黙した。
「・・・ああ、うん、分かった、分かってたんだよ!私等『異世界人』がそもそも原因だって事は分かってたんだよ!三日月の大爆破に始まり、光ヶ丘の戦争に参戦宣言、月島の追い打ち!分かってたよ!あえて見ない振りしてたんだよ!今回の銀月救出に託つけて王都の様子を見に来たのだって、ちょっと負い目を感じてるからなんだよ!」
「・・・?そうなの貴女達は?」
「えっ?真智子は違うのか?負い目を感じてるから情報収集して国の危険を知らせようとしてるんじゃないのかい?」
「いやいや、私は私が助かりたいだけよ?死にたくないから?」
「・・・うん、アンタはそういう奴だったね・・・」
そんな中、先ほどまで無言だったアプリコットが発言する。
「・・・この国の人達も助けられないかな?」
「白河さん、貴女は銀月が助かれば他はどうでもよかったんじゃないの?」
「そこまでは、いえ、思ってました、けど!その、なんて言えばいいのか分かりませんけど!」
「お嬢・・・・処刑時間も迫って来てますし、多数決を取ろう!この国もついでに助けるか?否かを」
ラクシャータは、
「・・・・ゼロは好きに動けと言っていた、私はどちらでも構わないわ」
アニスは、
「アニスは、アニスは、どっちでもいいのだ!けど出来れば帝国と戦いたいのだ!」
真智子は、
「・・・・まあ、私は『無能力者』だから何も出来ないから、貴女達が決めていいわよ」
フォルテは、
「・・・・私はお嬢についていくよ!」
アプリコットは、
「助けましょう!この国の人達も!ラクシャータさんとアニスさんは空を飛べるので、ラクシャータさんは『嵐船部隊』を、アニスは、『雷船車部隊』を、真智子さんは引き続き『情報収集』を、フォルテ、貴女は先生達を助けに行って」
「・・・・お嬢一人でどうする気ですか!お嬢だって無能力者なのに!どうやって助けるんですか!」
「バッと助けて、バッと逃げる、かな?」
アハハと笑って誤魔化す、アプリコット。
「・・・フォルテ、ここは何とかするから、先生達をお願い」
『えええええ!ダメですお嬢!銀月救出の成功率が下がるのは賛成ですが、お嬢の生存率が下がるのは看過できません!』
「お願いフォルテ!貴女だけが頼りなの!」
「・・・・本当に大丈夫なんですね?信じて良いんですよね?銀月のやつと一緒に死ぬとかなしですよ」
「分かってる、フォルテ、必ず、」
「それ以上言うのはやめましょう、死亡フラグを建てるのは・・・分かりました!無茶だけはしないで下さい。もしもの時は銀月を盾にしてでも逃げて下さい!」
作戦急遽変更する救出班だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
224
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる