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第66話 射光矢&八乙女奪還失敗!漆黒の獅子『炎獣皇』参戦!

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くっそおおおおおおお!銀月!死んでしまえ!

フォルテは軍施設に全力疾走していた。

射光矢月下美人(イルミハニー)と八乙女夏蓮(ヤオトメカレン)の救出のために。

私の任務はお嬢の護衛なのに!ぶっちゃけあんなコギャルと堅物教師なんてどうでもいいのに!

軍施設に突入したフォルテだったがそこは大混戦だった。

王国、帝国、共和国の三国入り雑じっており、中には平民になりすましていたのか鎧を着ていない一般人の風貌をしている者から王国の鎧を着た兵士が王国兵士を斬り殺している者までいる。恐らく鎧を他国の兵士が奪ったのかもしれないがとにかく統率が全くとれていなかった。

これじゃあ、射光矢や八乙女のどこにいるかどっちに向かったかすら分からない。

なら!この軍施設での戦闘を早々に終わらせるしかない!

フォルテは眼帯を外して、大きく息を吸い込む。

「ユステリカ王国兵士諸君!私の声を聞けええええええ!」

フォルテ=マイヤーズが喧騒で煩い戦場の全体に響き渡るほどの大声を上げる。

「私はフォルテ=マイヤーズ!異世界人だああああああ!」

その言葉を聞いた他国の兵士達は目の前の戦っていた兵士を無視してフォルテの確保に動き出す。

「やはり奴等は異世界人の確保が最優先のようだ。『はっきり見たし覚えたぞ』!召喚魔法発動!『ガミーベア(不思議の森の熊さん)』!!」

大規模な陣が大地に描かれそこから小さいものは20cmから大きいものは1mほどの熊のヌイグルミのようなモンスターが現れた。
可愛らしい顔とは裏腹に、鎧を着て剣や槍や大盾を装備した戦士風の熊さん、とんがり帽子に黒いマントを着て杖や短杖を装備した魔法使い風の熊さん、ラッパ銃や手投げ弾を装備したバンダナを着けた海賊風の熊さん、鞭や笛を装備して巨体の狼や大蛇や象に操るシルクハットに燕尾服の猛獣使い風の熊さんが出てきた。

「蹂躙しろ!」

フォルテの合図にガミーベア達は一斉に敵兵士に襲い掛かる。

帝国兵士も共和国兵士も最初は笑っていたし、ふざけるなと怒っていたが1分もしない内にその笑いは消え、絶叫や怒号に変わる。

全く歯が立たない。

戦士風の熊さんとは武器の性能が違い過ぎる。一合もたず叩き折られ斬り殺される。

魔法使い風の熊さんには近づけもしない。杖を持った熊さんに大きな火の弾や水の弾や雷の弾などの魔法をくらい。
短杖を持った熊さんには弾が小さいがまるでマシンガンのような連射する魔法をくらい。

海賊風の熊さんには近づかれて、ラッパ銃を撃たれり銃を棍棒のように扱い殴られ死んだり、小さい壺のようなものを投げつけられその壺が割れると爆発して火の海になり巻き込まれ死んでいく。

猛獣使い風の熊さんにも近づけもしず、そもそも周りを固めている猛獣が強すぎてどうにもならない。
巨体の狼には肉体を噛み千切られ、大蛇には丸呑みか肉体に巻き付かれ全身を骨を砕かれるか、象には鼻で殺されるか踏み潰されて殺された。

あっという間に敵兵士を全滅させた。

「・・・・私の召喚魔法が強くなってる?いや、今はいい!おいそこのお前!」

「はいいいいいいいいい!」

「射光矢と八乙女はどこにつれ去られた!」

「連れ去った者はゴルディエス帝国でもドミニオン共和国でもありません!『バウリンガル公国』でした!」

「・・・・勘弁してくれ!どんだけ人気者なのユステリカ王国は!ふざけんなよ!絶対無理だろ!どんだけ恨まれてんの!周り敵だらけじゃん!」

「二人を拐った能力者が着ていた服に『ゼルコティーネ』の家紋がありました!」

「ゼルコティーネ?」

「はっ!犯人の中にゼニスドル公爵様の弟君であられるお人が使っている家紋を着けた者がおりました!ゼルコティーネ様は公国に行き、ゼニスドルからゼルコティーネに名を変えていました!」

頭が痛い!ややこしいわ!本当にそのゼルコティーネの者かも分からない。そもそも人を誘拐するのにわざわざ家紋を着けた服を着るとは思えないと思わせるものなのか?
結局はどこに行ったのか分からず、手掛かりはあまりに信憑性が低いものしか手に入らなかった。

「くっ!仕方がない!ここはお嬢と合流して、ああ!お嬢に頼まれた任務が!失敗に終わるなんて!」

「あの勇者様、我々はどうすれば?」

「知るか!そんな物自分で考えろ!と言いたいが、面倒だけど王都の争乱を終息させた方が早いかも。ガミーベア!コイツ等について行って火事消しや町の人間達の避難を手伝え!アンタ等!無茶苦茶な命令じゃなければ聞くから熊さんと協力して町中で暴れてる敵兵士を始末してこい!救助も忘れずにな!」

「「「「「「「了解!」」」」」」」

熊さんと王国兵士が一斉に敬礼をして肯定の意思表示をする。

はああああ!面倒だなあ!このパターンはあれかな?
もしかしたらお嬢が助けに行くって言いかねないよ。
月島と別行動してでも行きそうだなあ。
はっ!まさか、いや、あり得る!銀月が生き残った場合間違いなくお嬢についていくはず!
バウリンガル公国って国がユステリカ王国からどのくらい掛かるか分からないけどその間は二人きり!

させるかああああああああああ!

もしお嬢が行くなら私も絶対についていくぞ!
いや、まてよ。人数が減るなら銀月の暗殺がやり易くなるか?殺っちゃうか?殺っちゃうおう!

フォルテはとりあえずアプリコットと合流するべく闘技場に全力疾走する。

銀月の暗殺を目論むフォルテだったがその頃闘技場では。

「がはっ!」

銀月は地面に両肘と両膝をつき血を吐きだしていた。

上空で見ていた月島とドロシィも驚いていた。

「うふふ、中々素晴らしいですね」

「『何者だ』アイツは?」

銀月の前に立っているのは一言でいうなら『二足歩行の獅子』

しかし田島ではない。

5mを越える巨大な体躯、分厚い筋肉、田島の変身した姿とは異なり体表は黒色、真っ赤な炎の鬣、牙や爪が真っ赤でゴポゴポとまるでマグマで形成されているかのような牙や爪。

田島は闘技場の隅の方で地面に倒れ込んでいた。呻き声を上げているので一応は生きてるようだ。

「どうした?さっさと立て」

銀月がヨロヨロとよろけながらも立ち上がり、全力のパンチを繰り出す。

ドゴオオオオオオオオオオオオオオン!

「悪魔をなめるなよ、」

銀月の全力の一撃、高層ビルを粉砕させるくらいはある一撃を受けても漆黒の獅子は微動だにせず。

次の瞬間、銀月が『今まで受けた事がないほどの衝撃』を味わった。

チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

全身の骨が粉々に粉砕され内臓がぐちゃぐちゃに潰れていく。

「いやああああああ!大虎!大虎あああああああ!」

闘技場に響き渡るアプリコットの悲鳴。

漆黒の獅子の拳は銀月を地面に深くめり込ませてしまうほどだった。

『コイツ、まさか、いや、パワーだけなら月島より遥かに上をいってやがる』

「てめえこそ人間様をなめんじゃねえよ。俺の名はリオン。リオン=セキチュアーレ。人は俺の事を『炎獣皇』と呼んでいる!」

『炎獣皇・・・だと!俺の親父の『魔獣王』を差し置いて獣の王を語るか!』

銀月は立ち上がろうとはするが、身体中がぐちゃぐちゃにされ再生には時間が掛かっている。

「ふっ、驚くのも無理はない。何で女のくせに雄の獅子に変身してんだコイツと思ってんだろ?」

『・・・・女だったのかよ!けどいいよ!誰もそんなもん聞いてねえよ!』

「俺は元々高位貴族の長女だったんだよ!」

周りからは天才だ。幼い頃は神童などと言われていた。
しかし、家を継いだのは後から生まれた、凡人以下の落ちこぼれと言われた弟だった。
俺の才能が一割でも弟にあればマシだった。俺が男ならどれだけよかったかなどと言われていた。
結局、弟の失策で実家は取り潰され、両親と弟は借金を払い続けてる。
世界各国は女尊男卑の傾向で、王や国の代表は皆女なのに、ユステリカ王国は今だに王は男しかなれない。貴族の当主も特別な許可が下りない限り、自身が納める領地もない名ばかり貴族の騎士爵ですら女が当主になれない決まりがある。

「だから知らしめてやるって誓ったんだよ!男なんざ女より劣る存在だってね!強くなりたいと願ってた!けど、俺の心の中に男への憧れが僅かにあったんだろうな。そのせいで能力を授かったら『雄の獅子に変身する能力』だった!」

『ぐっ!勝手に語り出したが好都合だ。今の内に自己再生を』

「アンタ、帝国の回し者だってね?まだまだ楽しめるよな?」

漆黒の獅子は口角を上げて笑みを浮かべる。
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