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第68話 飽きたから終わらせに来ました

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「何だ・・・テメエ等は?」

「私達は愛と正義の美少女戦士、セーラ、」

「違うから!何言ってるんだい真智子君!自分が恥ずかしい格好してるからって私達を巻き込まないでくれるかい!」

「恥ずかしい格好って言うのはやめろ!貴女達に掛かっている『能力補正』が減少するわよ!」

「二人とも言い争いはそこまでにするネ!」

「おいおい、黒いライオンが二足歩行してるぜ?しかも鬣燃えてるし、火の輪っかでも潜ってろ!銀月を弱らせてくれてありがとう!あとはこっちで始末する!(銀月を、お嬢の想い人をここまで傷つけるなんて許せない!)」

「フォルテ、君は本音が先行してるよ!」

メキメキ!メキャ!バキバキ!

漆黒の獅子の肩と背中の筋肉が更に肥大化し、肩と背中の赤い結晶体が更に大きくなり歪に進化していく。

「お話はその辺にしておきなガキ共・・・」

漆黒の獅子が一番己に近かった皇神美に襲い掛かる。

高速で迫ってきた獅子の拳を難なく回避し、獅子の懐に飛び込み獅子の顔に掌底を打ち込み、心臓に肘打ちを叩き込み、腹に裏拳の三連撃を繰り出す。

「ごっはっ!」

漆黒の獅子は体を九の字に曲げる。

「何だ、衝撃が体内に?」

「私の邪皇拳はいくら体が固くても意味ないネ!私の拳は内側から破壊するネ!」

「・・・小賢しい!」

更に獅子の巨体が肥大化していく。

「自身の能力に過信して力任せの貴女は愚かしいネ」

「ああん!!!数発入れただけで調子に乗るなよ!」

獅子の額に無数に血管が浮き出る。

コイツ、大したダメージを負ってないネ。体の内側をぐしゃぐしゃにするつもりで邪気を込めて打ったはずなのに内臓まで達してなかったネ。

「下がって皇さん!」

氷狐が体を水と氷に体を変化させ獅子に向け放射する。

「しゃらくせえ!」

漆黒の獅子の結晶体から熱波を放出して一瞬で蒸発させる。

『悪魔の凶弾』

狂ったピエロを始末した弾丸をパイソンに込めて撃ち出す。

「こそばゆいんだよ!」

獅子の体に傷を付けるには至らない。

「シューティング・バスタアアアアア!!」

「そんなもん効くかあああああああ!!!」

真智子の攻撃を気合いだけで跳ね退ける。

七瀬の野太刀と皇の拳が同時に獅子を攻める。

仙気を込めた野太刀や邪気を込めた拳が漆黒の獅子を捉えるが、最初は多少はダメージを与えられていたが、徐々に効かなくなっていく。

「回復する上に攻撃が効かなくなるなんて、どんだけ盛っているんだい!」

「だったらもっと強力なものを叩き込むネ!」

「しゃらくせえ!しゃらくせえ!しゃらくせえええええんだよおおおおおお!更に本気を出してやるよ!」

『炎獣皇』の漆黒の体躯の手足がジュウジュウといって鉄を熱したかのように真っ赤に染まっていく。

ボシュウウウウウウ!ボシュウウウウウウ!

一歩一歩踏み出す度に焼け跡を残し歩んでくる獅子。

「・・・・皆さん聞いて下さい」

「碧海君、君はもう少し離れた方がいい!君の能力はあの獅子とは相性が悪すぎる!」

碧海氷狐の能力は体を水や氷に変化するだ。対してリオン=セキチュアーレは熱波を発生できる。ヘタをすれば一瞬で消されかねない。

「逆です。恐らくあの獅子は水や氷が効くと思います」

碧海が相手に聞こえないように小さい声で全員に話す。

「はあ?一瞬で蒸発させられてるんだが?」

フォルテの言い分ももっともだ。

「そう、一瞬です。あの獅子は皆さんの攻撃をある程度は受けているのに対して私の攻撃だけは必ず熱波を放って蒸発させてるんです。恐らく冷やされるのが嫌なんじゃないんですか?」

「それで私達は何をすればいい?」

「時間を稼いで下さい・・・・・・・!」

碧海は更に小さい声で全員に何をやるかを話す。

「本当に出来るのかい?そんな事?」

「やらなければ完全に詰んでますよ。今の状況は」

「アイツの腕を切り落とした銀月はまだダウン中、アプリコットが介抱しているけど目覚める気配なし、戦力にはならないしね。私達の攻撃も最早撫でてる程度だから。やってみようか?」

ズンッ!

「話し合いはすんだか?」

「わざわざ待ってくれてありがとう。おかげで君を倒す算段が浮かんだよ」

「ほざくなよ!小娘共!」

碧海氷狐は体を人間形態に戻り、碧海以外は一斉にリオンに襲い掛かる。

5分経過、

七瀬万桜はリオンの熱を帯びた獅子の足で体を踏みつけられ動けず、叫び声を上げながら体を焼かれている。

皇神美はリオンの額から生えた角に腹を貫かれピクリとも動かない。

フォルテ=マイヤーズは左目を抉られ手足がグシャグシャにされて闘技場の壁に叩き付けられめり込んでいる。

諸星真智子は変身が解けて、体が真っ黒に焦げて倒れこんでいる。

「そこの娼婦、てめえは来ないのか?」

「・・・・・・・・」

「無視してんじゃねえよ!」

おちょくろうとしたリオンだったが目を閉じて突っ立っているだけの碧海に苛つき指弾を放つ。

バキバキバキバキバキバキ!バキンッ!

「・・・・・・は?」

溶岩の弾を受け、粉々に砕け散った碧海。

「・・・・・・氷?本体じゃないのか?まさか逃げたのか?」

砕け散ったのは本体でなく氷の人形だったようだ。

「ん?何だ、急に暗く、それに・・・寒気が、」

辺りが急に暗くなり気温がグングン低下していく。

ボシュュウウウウウウウウウウウウ!!!

「ぐあああああああああああああ!!!」

叫び声を上げるのは『炎獣皇』リオンだった。

肥大化した筋肉が縮小していき、赤く綺麗に輝いていた結晶体の色がどんどん濁ってきた。熱されたように真っ赤だった手足が真っ黒に戻っていく。

「があああああああああああああ!」

額の角に貫かれていた皇を振り落とす。

「くそっ!何だ、何が起きた!」

その間にもどんどん気温が急激に低下して雪や雨や雹が降り始めた。それらに触れた獅子の体から熱を奪っていく。

バキバキ!ボジュウウウウウウ!

赤い結晶体が割れ、隙間から蒸気のようなものを噴き出しながら砕け散っていく。

「寒い!何で急に!体が冷たく、」

「やっぱりその獅子の体は無敵じゃなかったね」

「てめえ!いつの間に・・・・・ッ!」

パキパキパキパキ!

突然、後ろに現れた碧海に漆黒の獅子の体は氷付けにされ停止した。

「ふう、皆を回復させないとまずは一番重症ぽい真智子さんから、ていうか生きてるコレ?」

全身が焼かれ黒焦げになっていた真智子だったが、真智子を含め何とか息をしていた。

碧海は自身の体から回復薬を作り出す。

但し生成するのに多少時間が掛かるので戦闘中には使えない。

全員に回復薬をかけるが完全に回復できるような高性能な回復薬ではないので全員が起き上がれずに寝そべったままだ。

「死ぬかと思ったよ。今回は本当にね」

「ん?あれ?ワタシ、負けたアルカ?」

「もう帰りたい。暫くゴロゴロしていたい」

「お嬢を置いて私は死なん!だがもし死んでしまう時は銀月も道連れに!」

「あとは三日月か月島の回復薬で治すしかないね」

バキバキ!バキンッ!バキバキバキバキ!

「「「「「ッ!」」」」」

獅子の背中が膨れ上がり、覆われた氷を破壊する。

そして背中を突き破って人間が出てきた。

全員が驚愕する。

出てきた人間、褐色の肌に真っ赤な髪、そして小さい体!

出てきたのは見た目9~10歳の全裸の少女だった。

「ハアハア、勘違いするんじゃねえよ!能力を使い過ぎたせいで体が縮んじまっただけだ!獅子の能力がなくても俺は強いんだよ!」

襲い掛かろうとするリオン=セキチュアーレ。

チュドオオオオオオオオオオオオオオオオン!

だが、突如上空から何かが落下してきた。

「ほう、中々そそる女だな」

両腕に全裸の少女を抱えた、全裸の男だった。

「「「「「「変態だああああああ!!!」」」」」」

その場にいた全員が悲鳴を上げる。

男根をギンッ!ギンッ!に勃起させて現れた変態。

月島竜一が戦場に降臨する。

「てめえ等のぬるいやり方見ていて飽きちまったんでな。さっさと終わらせに来た」
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