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Aルート月島

第5話 月島竜一・・・取り憑かれました!!

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「・・・なにも殺すことはなかったのでは?」

月島は足の爪先でギルド長の遺体をつついた。

「なら生き返らせてやろうか?そしたらお前ら冒険者はコイツの捨て駒として扱われ、討伐失敗しても一握りでも生きて帰って来たらコイツはお前等が持ち帰って得た情報を他者に売り付け金を得るか、万が一にも討伐成功しようとうまい所は全部持っていかれる可能性だってあった。それで良かったのか?心の中で思ってたんじゃねえか?だったらてめえがやれよみたいなことを」

冒険者や職員は誰も何も答えない。月島は沈黙を答えと受け取り。

「源氏!月光会の戦闘員を連れてこい。トモに言って必ず回収できる武器を用意させて戦闘員に持たせてな。あとマサ!能力が使えるなら飯を出せ!まずは腹を満たさんとな!羅漢!職員から冒険者のリストをもらって来なかった冒険者を引きずってでも連れてこい!リンクス!人狼の情報を今から来る連中に叩き込んどけ!氷狐にも来させろ!アニスとラクシャータは事務所で待機させとけ!」

・・・リンクスさんにギルド長を押しつけた意味あったのか!

「おい、リンクス!」

「ひゃい!何でしょうか!」

「サーべラスの戦闘があった場所の位置を教えろ」

リンクスは地図を持ち出して来て、位置を記した。

「・・・50kmも離れてないな」

「はい、人狼の速さなら1日も掛からずこの町にこれるはず、来ないのは恐らく、」

「サーべラスとの戦闘で負った傷を癒しているのか、群れを再編成しているのか、他にも理由があるのか?ン?そういえばサーべラスや人狼のことをどうやって知ったんだ?」

「それはですね、最近レアス山が冒険者達に開放されたのはご存知ですか?」

「それなら聞いたことはあるが?」

「大きな声では言えないんですが、ぶっちゃけレアス山で採れる風石をちょろまかしてギルドに売りに来る冒険者がいるんですよ。その風石を加工して作られた『風声機』を使ったんです。ナイショですよ」

「その風声機はどの程度の距離を交信できるんだ?」

「距離は問いません。王族や貴族や議員達のような上級階級の人達が保有している従来の魔道具よりも性能は上です。ただ、」

リンクスは懐からその風声機を取り出し月島に渡した。
風声機はスマホのように長方形に厚さが1cm程度に加工された透き通った綺麗な碧色の石で、表面に見たことがない文字が石に浮かび消えたりを繰り返していた。

「これ一つ一つが『ある人』の手作りではっきり言って冒険者ギルドのギルド長クラスの人間しか行き届かないのが現状でして。ちなみに私が持っていた理由は、ギルド長が他の支部に信用されてなくて、その、私が保持しておけと言われたので」

「ギルド長クラス?ふっ、なるほど、国の上層部連中にも知らせていないと?」

「まあ、一部にはバレてるっぽいんですけどね。違法は違法ですし」

月島は風声機をリンクスに返す。

「お前等は人狼共の迎撃準備を整えとけ、俺はサーべラスの戦闘跡を見てくる」

月島は次元跳躍を使い、跡地へと跳んだ。

「・・・もう少しこの邪法は改良余地があるよな。敵勢生物より離れた位置に跳躍するとか」

戦闘跡地に一瞬で着いた月島だったが・・・そこで100匹以上の人狼に取り囲まれガン見される。人狼の顔はまんま狼だったが、突然気配なく俺が現れたのに驚き過ぎて膠着してますって感じさせる表情だな。 

「「「「「ガオオオオオオ!!!」」」」」

少しの膠着の後に正気を取り戻した人狼が一斉に跳び掛かってきた。

「はあああ~、面倒だな」

俺は『竜の宝物庫』から尖った襟が特徴的で丈が2m以上ある赤色のマント『火竜の炎城外套』を取り出し身に纏う。

ゴオオオオオオッ!!!

『火竜の炎城外套』から炎が噴き出し襲い掛かって来た人狼を焼き殺していくが人狼は怯むことなく月島に向かってくる。人狼の牙や爪が月島に届かないのは承知でけして逃げることなく。

「下らねえな、二足歩行が出来ていい気になったのかあ?ああん!野生を残さなきゃダメだろ?獣ならよおおお!!!獲物の実力を正確に計るのは無理にしても絶対に敵わねえと直感でわかるくらいの野生の勘くらいはよお!!」

黒焦げになり死に体になりながらも炎を突破してきた人狼に月島は右腕から火竜の炎を噴き出させ、更に『火竜の炎城外套』の一部が千切れ、月島の右腕に巻き付き炎の火力が上昇させる。千切れた外套は炎と共に再生した。

『バーニングブローーーーー!!!」

死に体の人狼のトドメとばかりに強烈な炎拳を叩き込む。周りにいた人狼達がその衝撃に巻き込まれ吹き飛んでいく。

「向かってくるなら容赦しねえ皆殺しだ」

数分後には100匹の人狼の焼死体の山が積み上がった。

「こんなもんかよ、ん?あれは?」

結局、遭遇した人狼は一匹残らず月島に挑み、始末された。その後月島は周囲を探索しているとサーべラスの死体を発見した。
そう発見したのだ。戦闘跡地は猛吹雪で、止むこと降り続けている。先ほど始末した人狼などあっという間に雪が積み上がり飲み込んでいったというのにサーべラスの死体の周りは雪が一切積もっていなかった。

ボシュウウウウウウウウウ!!!

いや、雪が積もっていないわけじゃなくサーべラスの死体から熱が発せられ溶かしているようだ。

「これ、本当に死んでんのか?」

月島はサーべラスの死体に近づき、そして触れてみた。

「ッ!何だ!何かが流れ込んで!」

憤怒、激しい怒りが体の奥から突然込み上がってきた。目の前にある物全てを破壊してやろうかという衝動にかられそうになるが何とか抑え込んだ。

「ハア、ハア、何だったんだ今のは・・・何だこれ?」

辺りを見渡すが変化はなかったが、あることに気付いた。

『火竜の炎城外套』には装飾品はついていないシンプルな赤色のマントだったはず、だが今は両肩に碧色のオーブをくわえている狼か犬かよくわからんが頭部を模した肩アーマーがついていた。

『双犬王オルトノスに取り憑かれました』

頭に響いた謎の声・・・今何て言った!!!

『双犬王オルトノスに取り憑かれました』

うお!答えくれたって・・・やっぱり取り憑かれたってのは聞き違いじゃなかったのかよ!そうだマントに取り憑かれたのなら『火竜の炎城外套』を外せばいいだけじゃねえかよ!驚かせんなよもう!

『月島竜一が双犬王オルトノスに取り憑かれました』

・・・言い直しやがりましたよコイツ!何でだよ!ていうか犬なの?人狼って犬なの?何で肩なんだよ!双犬だけに双肩ってか!

すると最初に発見した時は三つ頭の人狼?だったのが今では頭が一つになっており、その死体が光に包まれ小さくなっていき残されたのは首輪をはめている一匹の子犬の死体。

その首輪には子供が書いたような文字で『サーべラス』と書かれていた。
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