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Aルート月島

第9話 復活のサーべラス

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「邪皇拳!!黒龍!白龍!」

月島の右腕から邪気で形成された龍、左腕から聖気で形成された龍が放たれた。

「聖邪双龍乱覇!!」

チュドドドドドドドドドドドドドドドド!!

両腕から解き放たれた龍が洞窟内で暴れ回り、次々に人狼を撃破していくが人狼は頭が潰れようが、手足が欠損しようが、逆に手足だけが残ろうが月島目掛けて襲い掛かってくる。最初にして最後の母の命令を遂行しようとする。

「ちいっ!しつけえぞ!」

「きゃあああああああああ!」

ッ!ビックリした!そういえば生き残りが何人かいたな。

痩せ細った人面人狼の後ろにあった檻の中にいる女に襲い掛かるのが見えた。というかいつの間に人面人狼も死んだのか?人狼に食われているのにピクリとも動かないが青い炎が今も絶えることなく壁に沿って燃えている。

「ん?そういえば・・・いつの間にか額の顔がない?」

人面人狼の特徴ともいえる額にあった人の顔がなく穴が空いていた。

匂う!まだ部屋の中にはいるようだ。出口までは行ってない!

隠れてこちらの殺すための隙を狙っているのか、それとも戦闘能力が低いだけで逃げ出す機会を探っているのか。

正直あの町の生き残りなんぞを助ける義理はない。放置でいいか?

ドクン!

右腕から生命の鼓動がする。それは月島のものではない。

ドクン!ドクン!

『竜の宝物庫』から生命反応?竜の宝物庫は生物の収納は出来ないため内部から生命反応があるのはおかしいを通り越してありえない。

「何かが弾き出されてくる?」

竜の宝物庫は生物を収納する機能はない。そのため異物と判断され何かが宝物庫から弾き出されようとしている。

「ワオオオオオオオオン!!!」

竜の宝物庫から弾き出されたのはサーべラスだった。

「は?確かに死んでいたはず!」

しかも子犬だったのが成犬ほどの大きさに成長していた。

狼を小さくしたような精悍な風貌を持ち立ち耳で大変厚い下毛のオーバーコートを持つ大型犬に成長。子犬の時とは違い骨格も筋肉もがっしりとしている。

上部位は濃い黒色で腹部は白く、左目は金色で右目は青色のオッドアイ、左目には縦傷がついている。

月島は『眼』で確認してみる。


ドミニオン・ハスキー(個体名サーべラス)『超犬種』

古の守護神、双犬王オルノトスをその身に宿し続けた犬。
飼い主の為にオルノトスと『契約』しこの地を、『扉』を、死ぬまで守り続けた忠犬。
その報酬として『強靭な肉体』を与えられ『復活』を遂げる。


「ワオオオオオオオオン!!!」

サーべラスの目の前に剣が出現する。

「あれは・・・火剣か?宝物庫から持ち出したのか?」

サーべラスは火剣を口にくわえ、次々に人狼を薙ぎ払い斬り伏せて行き生き町の残りの女性達の下に駆け付ける。そして守るように彼女達の前に立つ。

『彼女達は我に任せろ!』と言いたげな顔をこちらに向けくるサーべラス。

「心底どうでもいいんだけど!!!」

ふっ、まあいいか。だが!犬ごときが俺より目立つな!

「聖人化『聖潔(きよめ)』」

月島が全身に聖気を纏わせていく。そして右腕の義手が一時的に人間の腕に戻り、左腕の義手『エンピレオ(至高天に辿り着いた者)』から白い荊が伸び上腕部にまで侵食して、全身が白色の姿に変貌する。

「聖餐七式秘跡・一式『 バプテスマ・ベレヌス(光神の洗礼)』」

次の瞬間、洞窟内に聖水で満たされた。
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