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Cルート光が丘&田島

第2話 ユステリカ王国の現状はあまりよろしくない

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「うおおおおお!!!お?何だよ夢かよ」

田島獅子王丸が目覚めると既に昼近く。田島はベッドから出ると窓へ近付き外を見る。

田島は現在『無職』である。

彼はユステリカ王国の勇者の一人に担がれていたが先の王都襲撃事件でユステリカ王と第2王子サンライズが死亡。宰相が行方不明。

新しくなった王となったのは第1王子のサーシャである。

新たな王の方針で帝国との戦争は『後回し』。

俺は闘技場で拳闘士の真似事もしていたが、今は家屋が崩壊して住む場所がなくなってしまった連中の避難所と化し闘技場にいた犯罪を犯して拳闘奴隷になっていた奴等も労働奴隷となり王都復旧に駆り出されたため戦士がいない。

事実上のコロシアムの廃止である。

光が丘は異能力集団である聖騎士達の通常団員に降格されユステリカ王国内の治安を守るため国中を飛び回っている。

光が丘はクラスメイトを殺害した。光が丘はこの国の人間を殺害した。光が丘は他国の人間を殺害した。

光が丘は大勢の人間に手を掛けた。

光が丘は王都襲撃事件の後から罪滅ぼしでもするかのように寝る間も惜しんで働き続けている。

いや、今までおかしかったのが正気に戻ったよう見えた。

今までの鬱陶しいほどのキラキラが失せて、自分の歩む道こそ正道というような態度も行動も取らなくなった。

光が丘は異世界に来る前からどこかおかしかったのが治まったみたいだった。

今、王都にいる異世界人は『俺』だけだ。

教会の地下に保管されているはずのクラスメイトの死体がなくなり、無能力者だった奴等のほとんどが今回の騒動で『行方不明』になった。

俺の舎弟だった三人も行き先も告げずに消えた。

そして俺は・・・獅子化の能力が消失してしまった。

王都襲撃事件の後から徐々に変身ができなくなってしまい、身体強化されていた肉体も今では地球にいた頃とほとんど変わらない状態。ちょっと力はあるかなくらいしか発揮できないのだ。

光が丘の聖剣を作り出す能力も能力値が下がり、味方回復能力や味方能力値上昇や流動体を斬る能力が消失。今や通常の剣より頑丈な剣を作り出すくらいの能力しかない。分身剣はまだ作れるようだが数を増やせば増やすほど剣の強度は下がるようだ。

異世界人の能力が弱体化した原因は不明。

更に王国の戦力は異世界人を取り込む前より低下している。

そんな中で新王サーシャはある人物を王都に召集したいようだが中々うまくいっていないようだ。

ある人物とはユステリカ王国内における真の最高戦力。

ゲオルギウス公爵家である。ゲオルギウス公爵家の家紋には『火を吹く赤蜥蜴』が使われているおかしな家紋を持つ一族。
ユステリカ王国ができる前からその土地に住まう者達。
ゲオルギウス公爵家に仕える兵隊は一騎当千の猛者達が集うと云われるほどである。

しかしゲオルギウス公爵家とユステリカ王家は代々不仲である。

そしてトドメに前ユステリカ王はゲオルギウス公爵家を騙し(サンライズの企み)により、ゲオルギウス家の家宝『雷炎天下』と呼ばれる物を取り上げたため、王都が他国に襲撃されていたのを気付いていても駆け付ける手段があってもゲオルギウス公爵家は兵隊1人すら送らなかった。

新王サーシャはゲオルギウス公爵家に謝罪の文と品を送るが返事はない。家宝を返還すると言っているがそれも無視。使い者を送るがそもそもゲオルギウス公爵領に辿り着けない。ゲオルギウスの領域は普通の手段では行き来すら難しい領地なのだ。

完全にゲオルギウスを怒らせてしまっている。

ユステリカ王国は今や瓦解寸前であり一刻も早くに立て直さなければ他国の餌食になってしまう。

内輪揉めをしている場合ではない。

『能力に目覚めた』新王サーシャと一新された国の上層部が必死に国内の立て直しを計るも更なる受難が訪れることになる。

傷が癒えきってない王都がまた襲撃される。

ただし相手は先の王都襲撃犯であるドミニオン共和国でもゴルディエス帝国でもない。

光が丘達とは違う新たなる異世界人によるものである。
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