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Bルート銀月

第2話 ????

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「兄さん、逃げて!!!今の貴方じゃコイツには勝てない!!!」

白い髪の褐色の肌の女性。黒い軍服に両手に刀を背中に6本の軍剣を背負っている女性。

燃え盛る崩壊寸前の廃工場らしき場所。

その女性の前にいる金髪金眼の美青年。

「聖帝、聖人最強の男のクロード=ミームングは殺せない。この男を倒せるのはアイツだけ!!!」

彼女は後ろにいる5人を逃げろと叫ぶ。

『黒人の青年』『車椅子の女性』『白い杖を持つ女性』『スーツの女性』『銀髪の青年』

彼女の横にいた老紳士が微笑みながら銀髪の青年に剣を手渡す。

「コレは返そう、君の『聖剣』だ・・・今は逃げたまえ。逃げるのは得意だろ?」

5人の後ろからゾロゾロと銃器で武装した大勢の人間がやってくる。

「ほら、行きな・・・ここは任せとけ!」

「坊主共、未来はお前達に託すぜ!」

「さあ、行け少年達!ここは俺等が請け負った!」

全員が笑っていた。これから絶望を味わうことになるというのに。

小さい虫ケラ『蟻』が巨大な『星』に勝負を挑もうとしているのだ。

勝利率0%、敗北率100%。

奇跡なんて起きない。希望もない。

「希望ならあるさ。君等が希望だ!!!」

「我等はレオパルト閣下と共に!!!」

「地獄だろうとお供致します!!!」

「行くぞ野郎共!!!!!!!」

「革命軍『イスラーン』最後の大仕事だ!!!」

「1人1秒がノルマだ!!!奴相手に1秒持てば大金星だ!!!いけいけいけ!!!!!」

「撃て撃て撃てえええええええええ!!!後の事は考えるな!!!」

5人は走り出した。

黒人の青年はボロボロと涙を流しながら。

「逃げ切れると思っているのかな?僕を相手に、君達も馬鹿だよね。聖人相手に銃器なんて効くわけないだろ?ベルゼリュウス、あんな無能に剣を渡して意味なんてないだろうに」

金髪金眼の美青年がうんざりした顔で問い掛けてくる。

「ありますよ、断言しましょう。『ビクター=セス=アーカム』は君を越えて行く男ですよ・・・いずれですがね」

「・・・ハハハハハハハハ!!!」

全方位から銃弾を浴びながらその場から動こうともせず顔を邪悪に歪め大笑いする金髪金眼の美青年。

「・・・まあ、こんなものかな」

4分経過、100人以上いた兵隊に息がある者はもういない。老紳士、ベルゼリュウスと呼ばれた男も光と闇の槍が体を穿ち既に息をしていない。

今や立っているのは褐色の女性だけ。

身体中傷だらけ、腹からは内臓が飛び出している。既に死に体。
しかし相対する金髪金眼の美青年は無傷。かすり傷一つない。

初めから分かっていたことだ。

全ての武器を折られた。仲間ももういない。彼女の持つ全てが破壊された・・・・否!!!!!!

「もう一度、もう一度だけ力を貸しなさい!!!ウツガナク!!!」

空から身体が黒い骨だけの竜が飛来してきた。

「くくく、精障竜か・・・力の尽きた燃えカスが、嘗ての姿とは程遠いな。コイツのせいで『計画が崩れた』と思うと複雑な気分だよ。まあ、ここで確実に消してやるけどね」

褐色の女性は黒骨竜を纏い、骨でできたような軍刀を作り出し構える。

「・・・ハア、ハア、ハア、私達は消えてしまうのは仕方ない。私達は多くの人間を虐殺した。邪神の家畜、邪神のエネルギーになる旧世界人を。神界で邪神と戦っている覇吐慶次を援護するために。邪神から世界を解放するために・・・10年前から毎日同じ夢を見る。何でお前は生きてる?何で自分だけ幸せそうにしてる?私達を殺しておいて!、と」

30秒後、首だけになった女性。黒い骨竜は粉々に砕かれ消滅した。

金髪金眼の美青年の姿は既に消えていた。

首だけとなった女性の顔は穏やかな笑みを浮かべていた。

『兄さん、ありがとう・・・この10年、幸せだった。血にまみれた私に相応しい最後ね。さよなら、兄さん。愛してる。押し付けてゴメンね。こんな事を私が言うのもなんだけど幸せになってね。一人で勝手に決めて飛び出してゴメンね』

燃えて、崩れていく廃工場。死体の山だけが残った。
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