最強の魔砲師が失墜して行き着いた200年後の世界

アカヤシ

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第12話 弟子の魂の行方は!!!

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「というわけで!リース=ベラトリックス!貴女は選ばれたの!史上最強の女である貴女なら必ずあの憎き塔を滅ぼせるはずよ!」

代理神である九重神の話を聞き終わったリースは無言のまま再び空を見上げ始めた。

「・・・えっ、無視、無視してんじゃないわよ!」

「一つ聞く、私が死んで二百年以上経っていて、死んだ人間の魂は必ずここに廃棄されると言ったな。なら私の弟子は二百年経ってんのにまだ生きてんのか?」

「あ~、確かに探したけど見つかんないから、もう石になったんじゃ、ばひゃ!」

九重神の顔面にまたも石がクリティカルヒットし地面に倒れ込む。

「私は二百年以上ずっと空の穴を見続けてんだよ。アイツがコッチに来たら私が気付かないわけがないだろボケカスコラ、ちゃんと探せよ役立たずの神様、このインポ神が」

「神に向かって何その態度!何様のつもり!ぼきゃああ!」

地面に倒れていた神に追い討ちを掛けるリースはエルボードロップを九重神の腹へと叩き込む。

「へぶっ!分かったから暴力はやめなさい!ちゃんと探すから!そこを退きなさい!・・・あれ?いた?」

「は?もう見付けられたのか?本当にお前はテキトーにしてんなあ、というか生きてるのか?」

「ちょっと様子がおかしいわね」

「わかんねえからちゃんと説明しろよ」

「神をバシバシ叩くな!私の背中に掌をあてて目を閉じなさい。そうすれば私が見ているものが見えるから」

リースは黙って言われた通りに九重神の背中に掌をあて目を瞑る。するとある光景が浮かび上がってきた。

薄暗い部屋、部屋の中心には液体が満たされた円柱状のガラスの中に黒髪の少年、そのガラスの前に立つ黒いローブを着ており顔はフードで見えないがおそらくは少年?。

『なんで!なんで目を覚まさない!僕の術は完璧なはずなのに!禁術にまで手を出したのになぜ!なんで目を覚ましてくれないの!ねえ!恨んでるの!僕を!国を!世界を!』

少年?が何やら涙を流しながらガラスの中の少年に叫んでいるが反応は返ってこない。

「ガラスの中の少年からアンタの弟子の魂の反応があるわね」

「つまりあの中に閉じ込められてからコッチに来れなかったってことか?」

チュドオオオオオ!!!ドゴオオオオオオ!!!

「・・・爆発音?おいおい!なんかヤバいことになってね?」

『また奴等か、鬱陶しい連中だな。もううんざりだ、皆殺しにしてやる。待っててね・・・っ!』

『おっと、当たり引いたねえ~やらせないよ~、それっ!』

ボロボロのローブを着た30代くらいの男が部屋の壁を『すり抜け』ながら現れ、両者がお互いに気付いた瞬間に同時に魔法を行使したが僅かに現れた男の方が早くに魔法が完成した。

『なっ!これは!まさか、転送魔法!僕以外に使えるはずが、』

『悪いね~、アンタの研究成果を使われるのはいいが、アンタ自身を雇い主に渡すわけにはいかんのですよ~ちなみにすぐに戻ってこれないように念入りに小細工して跳ばすんで~』

『クソっ!その人に指一本触れてみろ!お前らを必ず滅ぼす!確実にだ!1人残らず皆殺しにしてやる!』

少年?の姿が消えたすぐ後に完全武装した兵士達が雪崩れ込んできた。

『おい奇術士!バーゼルはどこだ!貴様のような胡散臭い奴を高い金を出して雇ったと思ってる!バーゼルに対抗するためにだぞ!』

『・・・その奇術士ってのやめてくれませんかね~、奴なら逃げてしまいましたよ~、慌ててたようなんで研究資料等は残っているようですよ~』

『ちっ!おい!回収しろ!全部だ!』

『部屋の真ん中にあるやつは触らない方がいいと思いますよ~、触れたら殺すって言ってたよ~、お~怖い怖い』

『く、く、はははははは!!!逃げてばかりの研究者風情が俺を殺すだと!この俺を、ははははは!!!笑わせてくれるは!』

『(戦争どころか実戦経験もろくにないくせにその根拠のない強がりはやめてくれませんかね~、はっきり言って不意討ちが当たってなかったらヤバかったよ~、いやマジで、アンタらなんて見捨て全力で逃げますからね~)』

『くはははははは!伝説のジンバック=ゼノサーガの血をひく俺が!負けるわけないだろ!この公爵家の、、、』

『(いやいや、もうゴルオレス帝国は貴族制度が廃止されたのにいつまで貴族ぶってんのコイツ?というよりアンタが生まれた頃にはとっくに貴族じゃないよね~、平民だよね~、金ないくせに、聖剣の正当後継者の妹に家を追い出された挙げ句に十分にもらった手切れ金を1週間で使い果たして、そのまま借金苦、何処の誰かも分からないやつに目の前に大金ぶら下げられて犯罪者に堕ちたくせに。コッチがタダ同然の契約金で従ってんのは主の為だからね~アンタに従ってるわけじゃないから)』

「おいおい不味くないか!このままだと連れてかれちまうぞ!」

「・・・?別に私には関係ないわよね?アンタがダンジョンを攻略すればいいだけで、ぶぎゃは!!!」

「ふざけんな駄神!!!ぶち殺すぞ!!!なんとかしろ!!!神のくせにそれくらいの力もないのかよ!」

「そこまで地上に干渉出来るならアンタに頼らず自分で塔を破壊しに行ったわよ!!!」

「なんだ!何か方法はないのかよ!早くしろよ!駄神!」

『よし!さっさと割って取り出せ!』

兵士の一人が装備していた盾をガラスにぶつけて破壊しようとした瞬間、中にいた少年が突然姿が消えてしまった。ガラスを割って出てきたのは中の液体だけ。

『何が!起きた!奇術士!敵か!敵の魔法か!俺を守れ!俺はこんなところで死んではいけない人間なんだ!俺は逃げるぞ!いや戦略的撤退だ!』

偉そうにしていた兵士の一人が人を掻き分け全力疾走で部屋から出ていった。

『・・・・えっと、我々はどうすれば?』

『はあ~、とりあえず資料を運び出してくださいよ~、急がないと戻って来てしまいますよ~』

兵士達は床に散らばったメモ紙や本棚の本、ゴミ箱に入っているゴミすら運び出す。

『あの、マーリン様』

『奇術士と呼ばれたくありませんが様付けも勘弁してくださいよ~』

『・・・さっきの現象は貴方が?』

『違いますよ~、どうやら奴も来ていたみたいですね~、もう気配は探れませんが、怖い怖い』

『奴等?』

『ゴルオレス帝国敗戦以降に元魔竜師団メンバーが作ったテロリスト集団・虹蛇(ユルングル)でしょうね~おそらくですけど』

『噂には聞いた事があるのですが、その、なんといいますか、信じられないような内容ばかりのですけどね』

『まあ、構成員は20~30人くらいの集団ですが、構成員全員が希少な魔法使い、奴等の中には大陸全土で見ても他の追随を許さないほどの圧倒的な強さを持つ者がいますからね~、そんな奴等を相手にしたくないのでもう切り上げて帰りましょうか~』

『確かに相手にしたくないですね。(狂喜竜)(憤怒竜)(悲哀竜)(淫楽竜)にリーダーの(強欲竜)の五竜は神の寵愛を受けし者と渡り合えるとか聞きますけど本当なんですかね?』

『相性もありますが渡り合えるでしょうね~、彼等なら』

『ん?マーリン様は見た事があるんですか?』

『え?自分とバーゼルは元虹蛇(ユルングル)のメンバーですけど?』

『『『『『『えええええ!!!!』』』』』』

聞き耳をたてていた周りの兵士も驚愕のあまりに声を上げる。

『白老師バーゼルが虹蛇のメンバー!それにマーリン様まで?しかし、なんでマーリン様がバーゼルを捕縛しようとするあの馬鹿の味方をするんですか?元仲間だったんですよね?』

『仕事に私情を挟むつもりはありませんよ~ちなみに自分は黒蛇、バーゼルは白蛇と呼ばれてました~よ』

『あれ?なんで二人だけ蛇なんですか?』

『ああ、それはですね~。将来有望そうな少年を勧誘する際に蛇じゃ迫力不足だから竜を名乗らせてくれるなら虹蛇に入っても言いと、だから暴力担当で戦闘能力が実力トップ5の五人を竜に改めたんですよ~。自分とバーゼルは滅多に現場に出なかったんで蛇のまま、作戦参謀的な立ち位置だった自分が黒蛇、白蛇のバーゼルは虹蛇の創設者の内の一人ですが、実質は資金提供だけして、バーゼル自身は研究専念してましたからね~虹蛇の活動には全く興味がなさそうでしたよ~』

『・・・え?今の言い方、まるで二百年の創設者と今のバーゼルが同一人物のように聞こえるんですが?』

『あれ?聞いてないんですか~?同一人物ですよ~、白老師バーゼル、いや、白蛇バーゼルは二百年を生きる魔法使いです』

『『『『『『えええええ!!!』』』』』』

「おい!こんな奴等はどうでもいいだろ!さっさと追えよ!駄神!!!」

「今、探してるから!叩くな!あ、いた!さっきいた場所よりだいぶ離れた所に、」

新たに映された光景はおそらくは洞窟内、リースの弟子の魂が入った少年は布を敷いた上に寝かされていた。

コツ、コツ、コツ、コツ、

足音が聞こえてきた。

艶やかな黒髪で肩につく程度のセミロングに長い前髪ごと赤のカチューシャで留め、黒のスーツにコートを肩掛けした男が床に寝かされた少年に近付く。

『バーゼルの奴が生涯を賭けてやっていた事がまさかこの子供を目覚めさせる事だったとはな・・・意外だな、アイツは他人の為なんぞで動く奴ではないと思っていたんだがな』

男は少年を観察する。

『なるほど・・・肉体は作り物だな、肉体が魂の質に比べ大分劣っているな。これでは百パーセントの力を発揮出来まい。どれ、俺も手を加えてみるか、まずは目覚めさせよう』

男は少年の胸の左側、心臓の位置に手を添える。すると男の手から青磁色に輝く光が発生し少年を包み込む。

『さあ、目覚めるがいい』
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