婚約破棄、絶望~そしてゴブリンの巣穴から始まる再生の物語

アカヤシ

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第3話 毒竜ヒュドラ復活・・・何やってんのアイツ等は!

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翌朝私は村長の使用しているテントを訪ねて村長サザンさんにラジム村に住まわせてほしいと頼んだ。

「村に住むのは構わないだが条件がある」

1、村の皆に黙っていなくならない事。

2、村を去る際には必ず村長に申し出る事。

3、自らの手で死を選ばない、自殺しない事。

「胸の中に刻んでおきます!」

こうして私はラジム村の住人となった。

とりあえず私は村の周囲にたてられた木の柵を見て回る。

「ワイルドボアの突進には耐えれないわね。どうにかならないかな」

すると、

『防御壁設置(800000)』

『課金残高8978299E』

また勝手発動した!

木の柵がなくなり代わりに高さ8m、幅6mほどの石壁にラジム村が囲まれた。

ラジム村大パニックに、まあ当然だろういきなり石壁が出現したのだ私だって驚きだよ!

村長サザンが私の所に走って来た。

「ヤミ!誰かしらの攻撃かもしれん!早く逃げるのだ!」

「あ~、えっと、私の魔法です。そう石魔法です!」

誤魔化せるか?

「・・・魔法とは大したものだな!ところでこの石壁はいつまで持つ?時間が経って崩れてしまわんのか?」

「あ、大丈夫です、はい」

この石壁自体を買ったので多分消えないはず。

「次やる時はせめて一声かけなさい驚きすぎて心臓が飛び出るかと思ったよ」

なんとか誤魔化せた!

サザンさんは村の皆に説明するために戻っていった。

私は石壁に登ってそこからの景色を眺め、そして自分の両腕にはめられた罪人を示す黒色の腕輪を見る。

「私は誰からも所有される事はなくなったのに、完全には自由になれないのね」

この黒色の腕輪をはめている限り私の行ける場所は限られる。昔は罪人にはめる腕輪の事は詳しくは広がっていなかったはずだが村長のサザンは腕輪の効果まで知っていた。ラジム村という小さい村の人でも知っているほど罪人の腕輪は世間に知れ渡っているのだろう。
重犯罪者を示す黒色の腕輪をしている私なんて彷徨いていたら高確率で脱走犯と勘違いされそうだ。
こんな腕輪をはめられるような奴を知っていて住まわせてくれる場所なんて限りがある。

底なしのお人好しか同類かくらいだ。

「ヤミさん!どうしたの黄昏ちゃて」

「・・・気配を消して近づいて急に肩を叩かないで、心臓が飛び出るかと思った」

「気配を消すなんてできないよ私?声かけたけど反応ないから無視されてるのかと思っちゃて。ヤミさんは考え事してたの?」

「・・・空を眺めて黄昏てただけよ」

石壁に登って来て私の後ろにいたサミちゃんが座っていた私の横にやって来て寝っ転がった。

「ありがとねヤミさん」

「急にどうしたの?」

「こんな立派な石壁なんて作ってもらって、これで魔物に怯えずにゆっくり寝れるよ」

「・・・サミ、私、朝に貴女のテント訪ねたらいびきかいてたわよね、毛布を蹴り飛ばして涎垂らしてぐっすり寝てたわよ」

「なぬっ!もうヤミさん!来てたなら起こしてくれればよかったのに!」

「ごめんね、あまりに気持ち良さそうに寝てたから起こすの可哀想だと思って、けど大きく口を開けて涎を垂らしてお腹をポリポリ掻いているサミは可愛かったわよ。寝顔もね」

「もうヤミさん!」

サミとヤミは他愛ない会話を楽しんでいると。

べちゃっ!

ヤミの肩に白いべちゃべちゃした何かが落ちてきた。

「うえっ!何コレ!くさっ!」

空を見上げると一羽の鳥が見えた。

「あのクソ鳥が!」

私は肩にかかった鳥の糞の見た目がかつてのトラウマを呼び起こし体から黒い闇の魔力がフツフツと漏れ出てくる。

「ヤミさん!あれは文春鳥といって、」

「文春鳥?何、食用じゃないの?けど大丈夫、狩りの練習をするだけだから!」

「ではなくてあの鳥は、」

べちゃっ!

「「・・・・・・・」」

今度はサミちゃんの頭に特大の糞が直撃した。

「ヤミさん、私ちょっとテントに弓矢取ってくるんであの鳥を逃がさないでもらえます?ほんとダッシュで取ってくるんで!」

「大丈夫よサミ、致命傷は避けて撃ち落としてあげるから包丁を持って来てくれるかしら。鳥の解体方法を教えてあげる」

「「ぶへぇ!!!」」

今度は二人の顔面めがけて新聞が飛んできた。

「何よアレ!これで拭けばクソ共ってか!というか何で新聞持ってんのあの鳥!」

「あれは文春鳥と呼んでいる鳥です。正式な名前は覚えてないんですけど。国中を飛び回り新聞を届けてるんです。けど気をつけて下さい無料と有料の鳥がいますから」

「覚えておきなさいよあの鳥!」

私は奴が落とした新聞で肩の糞をゴシゴシと拭う。

「ああ、水で洗い落としたいわねサミ、今から水を汲みに行くついでに水浴びに行かない?・・・サミ?」

サミの方を見るとサミは頭に落とされた糞を放置して体をプルプル振るわせて新聞をかじりつく勢いで読んでいたので私は自分の残りの新聞でサミの頭の上の糞を拭ってあげる。

「どうしたのサミ?なんか面白い事でも書いてあったの?」

「ヤミさん・・・これ!」

サミに新聞を渡されたので指定された箇所を読んでみる。




『毒竜ヒュドラ復活!!!』



ライオネル殿下と聖女ナオミ様が泉の精霊『ディーネ』を怒らせてしまう。
泉の精霊の加護を無くした泉から毒が噴出し中から毒竜が現れた。
毒竜が現れた後も毒が噴出し続けて旧ラジム村を中心に毒界となっている。
この事態にライオネル殿下は聖女に守護者に任命されていたにも関わらず任務を放棄して逃げ出した旧ラジム村の住人に全責任があると発言した。

その発言を聞き記者が、

『しかし旧ラジム村の住人はライオネル殿下の権限で退去命令を出してますよね?つまりライオネル殿下は聖女が任命した守護者を追放したという事ですよね?』

記者のその質問に対してライオネル殿下は、

『それは・・・そう!試したのだ!彼等が本当に守護者に相応しいのかを!』

『聖女の選んだ守護者を王族とはいえ試したんですか?それは聖女に対して不敬では?』

『貴様も王族に対してその態度は不敬だろうが!』

『それは失礼しました。しかし殿下は知っていたという事ですよね毒竜ヒュドラの存在に?』

『それは・・・しらな、いや、』

『知らないわけないですよね?ライオネル殿下は旧ラジム村の住人を守護者と言いました。なら彼等が何かを守っていると最低限知っていたはず!』

『だから・・・それは!』

『彼等を追放した。その時点で守護者の資質は判断は下せるのでは?なぜ彼等がいない今になって泉の精霊ディーネを怒らせる必要があるのですか?更に言えばディーネは何に対して怒ったのですか?噂では聖なる泉を目玉にした観光地化を進めていたとか?ライオネル殿下とナオミ様が提案なされたとか』

『そそそ、そんなわけないだろ!テキトーな事をいうな!』

『毒竜の存在を知っていたんですか?どうなんですか?既に死者が三千人を越えているんですよ!毒界は徐々に広がっていっているんですよ!国としてどう対処するつもりですか!』

『うるさい!うるさい!黙れ!とにかくだ!今回の事件は全て旧ラジム村の住人の責任だ!ラジム村の村長は斬首の後に聖都に晒しラジム村の住人に毒竜ヒュドラの討伐と毒界の解放と泉の精霊ディーネに謝罪させよう!』

『・・・今こそ聖女ナオミ様の出番では?』

『は?なんで私なのよ!』

『だって聖女なら毒を無効化出来ますよね?更に他者に一定時間毒無効化の魔法を掛けれるとか解毒や浄化も聖女の力にありますよね?そろそろ民衆に聖女の力を見せて貰えませんか?』

『はあ?首都でやってあげたでしょ!何?まさかアンタ疑ってるの?』

『いえいえそんな事は私もあの時中央広場にいましたが王族や貴族が聖女の力を理解出来ても我々一般人では判断は出来ませんでした。それでそろそろ我々民衆でも分かりやすい目に見えた実績を示してほしいのです』

『う、それは・・・・・』

『これはある都市で聖女ナオミ様について千人にアンケートを取ったのですが、』 

聖女である→5%
聖女ではない→65%
まだ判断出来ない→25%
白紙回答→5%

『と、このような集計結果がで、』

『思い切り疑ってんじゃない!』

『しかしここでナオミ様が毒竜ヒュドラを倒して下されば聖女だと認めてくれるかも、』

『ライオネル様が、この国の王族が私を聖女と認めてくれているのですよ!今更民衆に示す必要性はありません!そんな危険な事はラジム村の連中にさせればいいのです!』

『ならせめてラジム村の住人に協力すべきでは?聖女の力で毒を無効化して、』

『今は・・・ちょっと調子が悪くて毒無効化の魔法が使えないの!女の子の日なの!気を使いなさいよ!これだから平民は!』

『とにかくだ!全責任はラジム村の住人にある!村長は斬首!毒竜ヒュドラの討伐は住人にやらせる!泉の精霊の謝罪もな!貴様等はそう記事に書けばいいのだ!』



『そこでライオネル殿下に取材を打ち切られてしまった』




・・・・何このクズ共、それより不味い!

このままではサミの父であるサザンさんが処刑されてしまう!

それにラジム村の人達が特攻させられ無駄死にしてしまう!

・・・・私が行くしかない!

いや、私しかいない。私の闇魔法なら毒素を『分解』することが出来る!やってみるしかない!
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