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14歳~男装王子編

第1話 今世の私は・・・

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カツン!カツン!

「お、アダマンタイト」

ダンジョン第78階層で私は採掘をしていた。
私は取れたアダマンタイトとピッケルを『異空間収納』に収納する。

「さて、そろそろ帰ろうか」

二時間程で採掘をして切り上げる。
私は面倒なので空間転移で地上に出てそのまま冒険者ギルドに向かう。
ダンジョン出入口から冒険者ギルドに向かう最中街並みを見回した。
そう、街並み。
私が生まれた頃はドがつく程のド田舎だったイルド村だったが8年前、突如村の中心部にダンジョンの入口が現れた事から変わってしまった。
国が調査団を派遣してきたりダンジョンの宝目当てに冒険者が来たりそれ相手に商売しようと商人が集まった。
イルド村はたちまち飲み込まれ開発が進み続けた。
もう村の面影が全くなくなってしまった。
私の家は鍛冶屋を経営していてお父さんは鍛冶の腕はいいのに村の鍬等の農具や包丁等の調理器具の手入れくらいしか仕事がなく、はっきり言って超貧乏だったが今は冒険者が来てくれるおかげで裕福になった。
私も昔は鍛冶屋になりたかったが昔お父さんに『私大きくなったら鍛冶師になる~』って言ったら『鍛冶師は男の仕事だからお前は自分の本当にやりたい事を見つけなさい』と言われてしまって鍛冶場にも入れてもらえなかった。
昔は畑仕事を手伝っていたが都市開発のせいで畑がなくなったのでやることがなくなってしまったので冒険者になった。
おっと、考え事してたら冒険者ギルドに着いたようだ。
私が冒険者ギルドに入ると賑やかだったギルドが静まり返った。

「どうしたんだ急に?」

「バカ!知らねえのか!あの人はソロでクラスAになった冒険者だぞ!」

冒険者の階級はクラスS→A→B→C→D→E→F→Gの階級に分かれているぞ。

「はあ?まだガキじゃねえか」

「間違いねえよ!顔が小さくドワーフ特有の褐色の肌にドワーフの血が入ってんのにあの歳で身長167cm!足の長さが80cmで短足じゃねえ!腰まで伸びた艶のある桃色の髪!上から88!56!86!のあの姿は間違いねえよ!」

どこからか聞こえた声に、

『なんで私のスリーサイズが出回ってンの!』

もう、いいや。

私は受付に向かう。

「お疲れ様です。テティさん」

そう、私の今世の名前はテティ=ペルディーダ。

「なんか面白い話ない?私以外の!話題で」

「あるわよ!なんと!」

「なんと?」

「王子様が来るんですよね~!」

受付嬢のエダさんが赤くなった顔を両手で隠してイヤンイヤンと左右に首を振る。

「はあ、王子ってこの国の?」

「そうなんですよ!!テティさん!!」

凄い興奮気味でちょっとウザいよエダさん。

なんでもエルドラド王国の第2王子が王国騎士を率いて今日このダンジョン都市イルドに到着するらしい。

「なんでまた・・・こんな王都から離れた場所に?もっと近いダンジョンはあるでしょう?」

「さあ?けど第2王子は超イケメンらしいんだよね!」

マッチョ!!!!

マッチョ!!!!

マッチョなんですか?その人!!!!

「はあ、テティさん・・・本当残念な人ですよね、いろんな意味で!」

どういう意味だ!

「で、王国騎士からテティさんに指名依頼が入ってますよ」

依頼人はその王子が率いている王国騎士の隊長からでダンジョンの第65階層に出る階層主まで。モンスターからでる階層主のドロップアイテムは全て依頼主の物。依頼料金は金貨100枚か。安すぎる!!

「は?まさかとは思うけど階層主に挑む気?」

「そうかも知れませんね」

このイルドのダンジョンの第65を中心に階層無視して徘徊する階層主『ギガントロックゴーレム』少なくともランクが5はないとキツいぞ。

「パス!マッチョがいないなら受けないっていったよね私!この前の指名依頼だって!」

「十分マッチョだったじゃないですか!」

「ぜん!ぜん!足りないよ!ガッチガチじゃなきゃ!」

とにかく今回はパス。しかもギガントロックゴーレムは石化のガスを吹き出すからな。私みたいに『異常無効』が無いとキツいよ!

「もしかしたらゴーレムからドロップする宝石が目当てでは?」

「あ~、あれか」

私がゴーレムから取れた宝石を何個か貴族に金貨500枚で売ったあれか。

「今、王都で話題になっているらしいですよね」

マジかー!もっと高く売ればよかったかな。
そしたらその大金でマッチョを侍らせてたかも。

ぐへへへ!

「とにかく私はパス!帰ってお父さんからマッスル分を補給しなきゃだし!」

「そんな!第65階層なんて行けるのテティさんしかいませんよ」

そりゃそうだろう。私以外の冒険者は今の所は最高進行度は第48階層だったはず。第65階層なんて私は転移できるからいいけど、私の『空間転移』は魔力無し回数制限無しで使えるが一人用なので徒歩で行くことになる。そうなると往復で1ヶ月はダンジョンの中だ。それは非常にイヤだ。マッスル不足に陥ってしまう。

さあ!帰ってお父さんでマッスル分を補給しなきゃ!

「じゃあ強制依頼じゃないなら断っておいてね」

私が入って来た事により静まり返っていたギルド内は賑やかさが戻っていたがいっそう騒がしくなった。
ギルドの入口に視線をやると高そうな鎧を着た集団が入って来た。あれが噂の王国騎士と言われる連中なのか?

私は先頭の男に『鑑定』を使ってみた。

マルクス=ペルディーダ    格(ランク)4
力150防145速300魔505運123
①種族
『ヒューマン』
②スキル
『達人の御技・剣』『異常耐性 中』『動作加速 中』『疲労軽減 小』『物理耐性 小』『魔法耐性 中』
③武器適性
『剣・大』『盾・小』
④魔法
『光属性攻撃魔法 中』『火属性攻撃魔法 小』『回復魔法 大』

へえ、そこそこは高いんだ。ん?ペルディーダって私と同じなんて奇遇ですね。
先頭にいたマルクス=ペルディーダが受付にやって来てエダに話しかけようとした時、横にいる私に気づいたのか私の顔見て固まってしまった。大丈夫かコイツ。

「ルーエル・・・ルーエルなのか?」

「は?私はテティなんですけど」

「会いたかったぞ!!」

筋肉が足りない男が抱きつこうとしてきたので私は反射的に、

『無天・神堕とし正拳』!!

思わず正拳を食らわしてしまった。

あ、やばっ!!

ギルドの壁をぶち壊しながら飛んでいった。
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