レオーネ様は婚約者に問いたい

雪塚 ゆず

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第二章

神域へ

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神域とされる山の目の前へとついた。
人里から離れたそこは教会管理地区の一部であり、見張りの目を掻い潜ってたどり着くのにも骨が折れた。
見張りの目を欺くためにも、ルーシーにはその付近で待機してもらっている。
隠密と言うにはあまりにもルーシーは目立った。

「レオーネ様。今から、山に入ります。お覚悟はよろしいですか」

わざわざ物々しい雰囲気を出すのにも、理由がある。
神域に入ることはできる。
女神の祝福がある以上、レオーネ達が拒絶されることなどあり得ない。
問題は、山が教会管轄である、という点である。
教会は王族とまた違った別権力を持ち、その力は拮抗している。
教会の判断次第では、山に勝手に入ったレオーネ達に、厳しい罰が下される。
ーーそんなことなど、とっくに理解していた。

「いいです。入りましょう」

山の麓へ、足を踏み入れる。
トプン、と、水面に入った時のような音が響いた。
受け入れられた証拠だ。
そのまま二人でどんどん進んでいくと、別れ道が見えてくる。

「……どちらに進みましょうか」
「とりあえず、右に」

特に迷うことなく決断したリオンに、後ろからレオーネが声をかける。

「右を選んだ理由はあるんですか?」
「いえ、特に。いつもこういう時は右を選ぶので」

案外脳筋なのかもしれない返答に、レオーネは小さく吹き出した。
どこかヴィジーに似ている。
そういえば、ヴィジーが言っていた魔物の対処は、とうに済んだ頃だろうか。

「……また、別れ道ですね」

再び道が出てきた。
どちらも変わらぬものに見えるが、今度も右に進む。
右へ、右へ、右へ。
幾度も別れ道を繰り返して、レオーネ達は進んで行った。

「これ、進んでますかね?」
「さあ……クリスティーネさんの説明なら、奥で咲いているとのことでしたが」

一向に景色が変わる気がしない。
同じ道のりを繰り返しているせいか、少し酔ってきた。
しかし、この沈黙を打ち破る存在が、近くまで現れていた。

「! レオーネ様、下がって」

リオンがレオーネの前に立つ。
恐る恐る見上げてみると、森の奥深くに何かがいる。
目を細めて見ると、そこにはルーシーがいた。

「ルーシー!? どうしてここに」
「レオーネ様、落ち着いて。あれはルーシーではありません」
「……え」
「偽物です。ルーシーの姿を借りている」

そうは言われても、レオーネには違いが全くわからない。
あの美しい白毛はルーシーのものだと思うし、聡明な瞳に変わりはない。
すると、ルーシーが口を開いた。

『汝、女神の愛し子なるか』
「!」
「話した……」

口ぶりからして、レオーネ達を知っているようである。
咄嗟に、クリスティーネに言われた言葉が脳をよぎる。

『その山には、神獣が住まうとされています』

「あなたが神獣ですか」

そう尋ねるレオーネに、ルーシーの姿をした何かはしばらく黙り込んだ。

『神獣……ではない。我らは精霊。我らは我らの愛し子の想いを汲み、そなたらを導きに来た』
「あなた達の愛し子とは……?」
『ミティス・ウルゲ。彼のため、そなたらを守護しよう』

精霊は天を仰ぐと、そのまま促した。

『気をつけろ。来るぞ、本物の神獣が』


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