追い出されたら、何かと上手くいきまして

雪塚 ゆず

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ユニコーン編

第百十五話 急がば回れ(強制)

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「嫌だ! 俺はすぐにでも行く!」

これに反発したのは少年であった。
そんな少年に、まるで面倒なものを見るかのような目線をユリーカが寄越す。

「あのね……悪いけど、私達疲れてるの。ちょっと休憩させて欲しいのよ」
「じゃあ俺一人で行く!」
「待ってよ!」

アレクは少年の腕を掴んで止めた。

「僕は君を、村の人達から預かってるんだ! 死なせるわけにはいかない!」
「誰が死ぬか! 俺だってやれる!」
「ちょっとは戦った?」

そこにアリスが口を挟んだ。
アレクには決して向けないような、呆れたと言わんばかりの目線であった。

「お兄さん達が戦ってる間……あなた、何もしてなかったじゃん」
「それは」
「弱いんだから言うこと聞いてよ」
「なっ」

ムキになって少年が言い返そうとした瞬間、シオンがパンと手を合わせた。

「ご飯食べよう! お腹空いてるからイライラしちゃうんだよ」

これには同意見である。
ライアンが地面に座り込むと、少年に笑いかける。

「確かに父ちゃん殺されて焦ってるかもしれねーけどさ、ちょっと休憩もいると思うぞ! ほら、俺らが作ったサンドイッチ食べろよ! 美味いぞ!」

ライアンの圧に押され、渋々といった様子で少年も座る。
ここで一旦ランチタイムとなった。
アレクが〔収納〕というスキルから、サンドイッチの入ったバスケットを取り出す。

「うわっ!? 何か出てきた!」
「僕のスキルでしまってたんだ」
「スキル……?」
「うーん、特技みたいな感じ」

不思議がる少年に説明しながらも、アレクはサンドイッチを差し出す。
まじまじとサンドイッチを眺めた後、少年はそれに齧り付いた。

「! 美味い……!」
「へへ~ん、だろ!?」
「わっ」

ライアンが少年の肩に腕を回す。

「これさー、こっち来る前に準備してきたやつなんだぜ。作るの大変だった!」
「シオンがほとんど作ったでしょ」
「言うなよユリーカ!」

あはは、とその場が明るい雰囲気の笑いに包まれる。
そんな空気に絆されたのか、少年がそっと力を抜いた。

「ごめん……確かに、急いでたみたいだ」
「落ち着いた? ならよかった」
「チビもすまん」
「チビじゃない」

アリスとの仲は相変わらずのようだ。
両者共に火花を散らしていたが、やがて少年は悪魔、リリスのことを語り出す。

「俺達の村に急に来てさ……全部壊していったんだ。建物もめちゃくちゃに破壊してさ。父ちゃん殺されたし、他のみんなも」
「……酷いことするね」
「悪魔って最低だな。俺、悪魔なんて初めて見たけどさ」
「ーーっあの」
「違う」

アリスが何か言いかけた瞬間、少年の言うことをアレクが即座に否定した。

「悪魔だって、みんながみんな悪いってわけじゃないんだよ。人間と同じ」
「そっか……そうなんだな」
「うん。仲良くできたら仲良くするのが一番なんだけどね」

そんな話をしている内に、サンドイッチを食べ終わった。
後片付けをしている間に、アリスがアレクのそばに寄る。

「お兄さん」
「ん?」
「……ありがと。悪魔がみんな、悪いってわけじゃないって言ってくれて」
「アリスは悪い子じゃないでしょ。僕は本当のことを言っただけだよ」

アレクがあっけらかんとして言うものだから、アリスは少したじろいだ。

(悪魔にここまで偏見がない天族なんて、この先お兄さん以外で見ることないんだろうな……)

「アリス?」
「……ううん、なんでもない」

アリスは服を整えると、扉の前まで歩き出す。
物言わぬ扉はどこか重い空気を纏っていて、見ているだけでなんだか息苦しい。

「開けるよ」

アリスがブツブツと、何かの呪文を呟く。
扉がゆっくりと開いた。

「……!」

扉の先には、禍々しい姿をした魔物がこちらを凝視していた。
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