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「へえー、今週の日曜日、お休みなんだ。」
私は独り言を言いながら逸人さんの手帳を見ている。
この日は確か近くの商店街でお祭りがある。
昨日逸人さんのバックを受け取った際、手帳だけ抜き取っておいたのだ。できればこれも逸人さんコレクションに加えたいのだけどさすがにばれるだろう。だからと言って事務所に届けると逸人さんは間違いなく本気で怒る。やくざの事務所に女学生が丸腰単体で行くのは危険すぎると少し過保護気味なのだ。
(ちゃんと危険がないように逸人さんがいるときに尋ねるのに)
仕方がないと私は逸人さんのケータイのメールアドレス宛にメッセージを入れる。
「ふふっ、これで逸人さんは今日もうちに来てくれる。」
思わずにやけてしまう。昨日逸人さんが風呂に入ったすきにケータイの番号とメールアドレスを控えておいたのだ。
(ケータイのロック番号が私のケータイ番号の下4桁だったからすぐにわかったよ)
逸人さんからの愛情は確かに感じているからケータイのロックも私関連であることはわかっていたんだ。最初に誕生日、西暦、年齢、出会った日付と入れてケータイ番号と入れていった、ややてこずったけど開いた時は感動した。
(さて、今日のご飯は何にしようかな)
昨日は結局、帰るっていう逸人さんにおつまみを進めて、アーモンドフィッシュを出したんだよね。
その時にうっかり酒をこぼしちゃって、ブスくれた逸人さんに風呂に入ってもらった。着替えがない逸人さんは必然的に私の家でお泊りすることになった。布団もひとつしかなかったので布団を敷いて笑顔で逸人さんを向かい入れた。逸人さんは往生際悪く、ソファを目で探していたようだったがあきらめたように布団の中に招かれてくれた。あの時はソファを買わなくてよかったとあの時の自分をほめてやりたい気分だ。逸人さんは私に手を出してはくれなかったけど私は逸人さんにぎゅっと抱き着いてご機嫌だった。朝起きてセットしておいたICレコーダーでとった逸人さんのいびきは思ったより音声がキレイに入っていてうれしかった。なので鼻歌交じりに逸人さんのため私は張り切って朝ごはんを作った。今日は古き良き日本の和食をうでによりをかけた。ヒジキご飯に鮭の塩焼きだし巻き卵になめことわかめの味噌汁、冷ややっこに、ほうれん草のおひたしと品数多く出された朝食に逸人さんは驚いていた。最終的には喜んでくれたので心の中でこのメニューはリピートしようとしっかり記憶した。時間までまったり過ごして、逸人さんにお弁当を持たせた。
『おまえ、手帳抜き取ったんだろ!!』
「あっ、やばい、ばれちゃった。」
メールが帰ってきた。
しっかりと双眼鏡で逸人さんの様子を確認する。
(怒っちゃったかな。でもこれで逸人さんはまたうちに来てくれる。)
でも何もしなければ手帳を取りに来るだけで終わってしまう。
(どうしたらもっと一緒にいてくれるかな)
祭りの件も一緒に行きたいとおねだりもしなければならない。
私はリモートになった大学の授業を聞き流しながら逸人さんへの作戦を練った。
**********
「てめーよくも取りやがったな、さっさと返せよ」
夕方、逸人さんは思惑通り家に来てくれたので飛び切りの笑顔でお出迎えする。
「はい!これですよね」
「・・・ああ、そうだ」
逸人さんは少し不機嫌そうに受け取ろうと手を伸ばす。私はその手をすり抜けて、逸人さんに背を向ける。
「ねえ、逸人さん、お祭り行こうよ」
後ろを振り向きながら誘う。
「いくわけないだろ早く返せ。」
こういわれるのは正直想定内だ。
「行ってくれないと手帳は返しません。」
「・・・・仕事が入ってるんだよ、聞き分けろ。」
「お祭りは今週の日曜日です。・・・・お仕事、お休みですよね。」
手帳の中身みたのかとにらみつけられるがいたくない。背を向けてるから顔だけ振り返ってお顔を見る。
(今のお顔も凛々しくて好き。玄関にもカメラつけとくべきだったな。)
「ちっ、俺はやくざだぞ。お前と言って噂にでもなったらどうする。」
ここにきてる時点で今更だとは思うんだけど。仕方ない、最後の手を使おう。
「きゃっーーーーーー!!!!!!」
「はっ?」
「ちかんよー、こわいよぉ、おちんぽミルクとか言ってくるぅー」
「嫁入り前の女がなんて言葉浸かってやがる!!いったん黙れって」
「お祭り一緒に言ってくれるって言ってくれるまで黙らない。」
「わかった、分かったから黙れって!!」
逸人さんは少し間を置いて了承してくれた。
「やったー!えへへっ、」
私はその場で小躍りする。
「おい、あんまり騒ぐな、近所迷惑だろうが」
「えへへ、逸人さん、ありがとー」
「ったく、ちょうしいいな、おい」
逸人さんは頭を優しくなでてくれた。
もう三日は頭洗わない。
実はここの訳アリ物件ほとんど人が住んでないんだよね。外も、やくざとのかかわりを持たないようにするためか人もほとんど通らない。
(逸人さん、そのこと仕事柄知ってるはずだけど私の作戦勝ちよね。)
逸人さんに抱き着いて胸板にほおずりしながらえへへと笑った。
「で、どこに集合なんだ。」
「なら、うちに向かいに来てよ」
「まあ、いいけどよ。」
逸人さんはため息をつく。逸人さんからお弁当箱を受け取りしっかりと部屋に引っ張り込んで夕食を一緒に食べる。今日は機能が魚だったので肉料理の生姜焼きにしてみた。
「浴衣着ていきますね。」
(逸人さんの分も実はレンタル頼んでるんだよね。着付けもばっちり練習したし。浴衣姿の逸人さんを見逃す手はないよね。)
「・・・わかった。」
私から何かを感じ取ったみたいだったけど、どうやらあきらめてくれたようだった。
食べ終わっていつもの通り食器を洗ってくれたあとすぐに帰ろうとしたが私が引き留めてまたまた、朝まで一緒にいてもらうのだった
私は独り言を言いながら逸人さんの手帳を見ている。
この日は確か近くの商店街でお祭りがある。
昨日逸人さんのバックを受け取った際、手帳だけ抜き取っておいたのだ。できればこれも逸人さんコレクションに加えたいのだけどさすがにばれるだろう。だからと言って事務所に届けると逸人さんは間違いなく本気で怒る。やくざの事務所に女学生が丸腰単体で行くのは危険すぎると少し過保護気味なのだ。
(ちゃんと危険がないように逸人さんがいるときに尋ねるのに)
仕方がないと私は逸人さんのケータイのメールアドレス宛にメッセージを入れる。
「ふふっ、これで逸人さんは今日もうちに来てくれる。」
思わずにやけてしまう。昨日逸人さんが風呂に入ったすきにケータイの番号とメールアドレスを控えておいたのだ。
(ケータイのロック番号が私のケータイ番号の下4桁だったからすぐにわかったよ)
逸人さんからの愛情は確かに感じているからケータイのロックも私関連であることはわかっていたんだ。最初に誕生日、西暦、年齢、出会った日付と入れてケータイ番号と入れていった、ややてこずったけど開いた時は感動した。
(さて、今日のご飯は何にしようかな)
昨日は結局、帰るっていう逸人さんにおつまみを進めて、アーモンドフィッシュを出したんだよね。
その時にうっかり酒をこぼしちゃって、ブスくれた逸人さんに風呂に入ってもらった。着替えがない逸人さんは必然的に私の家でお泊りすることになった。布団もひとつしかなかったので布団を敷いて笑顔で逸人さんを向かい入れた。逸人さんは往生際悪く、ソファを目で探していたようだったがあきらめたように布団の中に招かれてくれた。あの時はソファを買わなくてよかったとあの時の自分をほめてやりたい気分だ。逸人さんは私に手を出してはくれなかったけど私は逸人さんにぎゅっと抱き着いてご機嫌だった。朝起きてセットしておいたICレコーダーでとった逸人さんのいびきは思ったより音声がキレイに入っていてうれしかった。なので鼻歌交じりに逸人さんのため私は張り切って朝ごはんを作った。今日は古き良き日本の和食をうでによりをかけた。ヒジキご飯に鮭の塩焼きだし巻き卵になめことわかめの味噌汁、冷ややっこに、ほうれん草のおひたしと品数多く出された朝食に逸人さんは驚いていた。最終的には喜んでくれたので心の中でこのメニューはリピートしようとしっかり記憶した。時間までまったり過ごして、逸人さんにお弁当を持たせた。
『おまえ、手帳抜き取ったんだろ!!』
「あっ、やばい、ばれちゃった。」
メールが帰ってきた。
しっかりと双眼鏡で逸人さんの様子を確認する。
(怒っちゃったかな。でもこれで逸人さんはまたうちに来てくれる。)
でも何もしなければ手帳を取りに来るだけで終わってしまう。
(どうしたらもっと一緒にいてくれるかな)
祭りの件も一緒に行きたいとおねだりもしなければならない。
私はリモートになった大学の授業を聞き流しながら逸人さんへの作戦を練った。
**********
「てめーよくも取りやがったな、さっさと返せよ」
夕方、逸人さんは思惑通り家に来てくれたので飛び切りの笑顔でお出迎えする。
「はい!これですよね」
「・・・ああ、そうだ」
逸人さんは少し不機嫌そうに受け取ろうと手を伸ばす。私はその手をすり抜けて、逸人さんに背を向ける。
「ねえ、逸人さん、お祭り行こうよ」
後ろを振り向きながら誘う。
「いくわけないだろ早く返せ。」
こういわれるのは正直想定内だ。
「行ってくれないと手帳は返しません。」
「・・・・仕事が入ってるんだよ、聞き分けろ。」
「お祭りは今週の日曜日です。・・・・お仕事、お休みですよね。」
手帳の中身みたのかとにらみつけられるがいたくない。背を向けてるから顔だけ振り返ってお顔を見る。
(今のお顔も凛々しくて好き。玄関にもカメラつけとくべきだったな。)
「ちっ、俺はやくざだぞ。お前と言って噂にでもなったらどうする。」
ここにきてる時点で今更だとは思うんだけど。仕方ない、最後の手を使おう。
「きゃっーーーーーー!!!!!!」
「はっ?」
「ちかんよー、こわいよぉ、おちんぽミルクとか言ってくるぅー」
「嫁入り前の女がなんて言葉浸かってやがる!!いったん黙れって」
「お祭り一緒に言ってくれるって言ってくれるまで黙らない。」
「わかった、分かったから黙れって!!」
逸人さんは少し間を置いて了承してくれた。
「やったー!えへへっ、」
私はその場で小躍りする。
「おい、あんまり騒ぐな、近所迷惑だろうが」
「えへへ、逸人さん、ありがとー」
「ったく、ちょうしいいな、おい」
逸人さんは頭を優しくなでてくれた。
もう三日は頭洗わない。
実はここの訳アリ物件ほとんど人が住んでないんだよね。外も、やくざとのかかわりを持たないようにするためか人もほとんど通らない。
(逸人さん、そのこと仕事柄知ってるはずだけど私の作戦勝ちよね。)
逸人さんに抱き着いて胸板にほおずりしながらえへへと笑った。
「で、どこに集合なんだ。」
「なら、うちに向かいに来てよ」
「まあ、いいけどよ。」
逸人さんはため息をつく。逸人さんからお弁当箱を受け取りしっかりと部屋に引っ張り込んで夕食を一緒に食べる。今日は機能が魚だったので肉料理の生姜焼きにしてみた。
「浴衣着ていきますね。」
(逸人さんの分も実はレンタル頼んでるんだよね。着付けもばっちり練習したし。浴衣姿の逸人さんを見逃す手はないよね。)
「・・・わかった。」
私から何かを感じ取ったみたいだったけど、どうやらあきらめてくれたようだった。
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