20 / 83
勇者パーティ現る⑤
しおりを挟む
彼らは桟橋の側に立って、別れの挨拶をしていた。
「僕らはここに数日滞在したら、次はキミ達の国に行くつもりだ。だから近いうち、また会えるかもしれないね」
「会っても何ももてなさないわよ?」
「結構だよ。用事はその先の海にあるから。その前の息抜きに立ち寄るだけだよ」
「そっ。せいぜい楽しんでって頂戴」
「そうさせてもらうよ」
そうして、話が一段落したと思った彼は、ミーナに向けこんな事を口走った。
「ところでキミ、僕らと一緒に来る気ないかい?」
彼の予想外の言動に仲間の四人も驚いていた。
「ちょっとクレスタ本気?」
あまりにも突拍子のない事に、ユーイが割って入る。
「ユーイだって見ただろう? あの炎。彼女が僕たちの仲間になってくれたらかなり心強いと思うんだ」
「確かにアレは凄いと思ったけど、だからって——」
「悪いけどお断りするわ」
口論をする二人に、ミーナが声を発すると、虚をつかれた彼らは目を丸くしていた。
「私にはまだ彼らとやる事があるもの。ゴメンなさいね」
「あら、振られたわね」
「はやかったですね」
「最速じゃない?」
だが、特に落胆するでもなく、クレスタは彼女に返事をした。
「そうか、残念だ。でも、キミならいつでも歓迎するよ。気が変わった時はよろしく頼むよ」
「しつこいのは嫌われるわよ?」
「構わないさ」
ミーナは、馬車と船の方を見るとクレスタに言う。
「あまり待たせちゃ悪いわ。ここら辺にしておきましょ」
「そうだね」
そう言って、クレスタは三人と握手をする。
「また会いに行くよ」
だが、ジャックと握手をする時、彼は耳元に顔を寄せ、こう呟いた。
「キミにもね」
ジャックは特に何も返さなかった。
挨拶を終えた彼らは、馬車に乗り、三人より先に村へと戻って行く。それを見たミーナ達も、水馬の引く木船へ乗り込む。
——君は何故、魔物が絶えないか考えたことあるかい?
その言葉を思い出したジャックは、出発し始めた船の上で、小さくなる馬車の方をじっと見つめていた。
船の上で、ミーナとフィリカは今日の成果について話をしていた。
「今回は魔物を倒しても、何も無しなんですね」
船の上には袋に入った薬草と、四人の人間以外には特に何もなかった。あの陽の射し込む穏やかな森の中、フィリカは、行きと同じ姿勢で座るミーナに尋ねた。
「そんな事ないわよ?。グリフォンの羽根は服や矢に、肉は食料に、爪やクチバシは薬になるのよ」
「えっ、でも道中に亡きがら置いてきちゃいましたよ?」
「あぁ、ムスリカ村にあの一行が一度運んでおいてくれるみたいよ。だから今日帰ったら軍に手配して、明日、腐らないうちに取りに行く事になってるわ」
「あの人達はそこまでしてくれるんですか······」
「その代わりにしては釣り合わないけど、村の食料と、矢を作る分だけの量は分けて欲しいって言われてるわ。馬車に乗り直す前にね」
「そうでしたかぁ」
「だから、後は好きにしていいそうよ」
「へぇー······なんか変わった人達でしたね」
「······そうね」
森の奥から温かな風が吹いて、そっと微笑むミーナの髪を揺らす。ポチャン、と小さな音が川から聞こえると、フィリカが、船の上から顔を出し、水中で泳ぐ小魚を眺める。
悠々と泳いでいた魚だったが、一回り大きな魚がやって来て食べられてしまう。
「あぁー······」
「あんま顔出してると危ないわよ?」
変な声を上げたフィリカに、ミーナが声を掛ける。
「えへへ、大丈夫ですよ。だって、ほら——」
と言って、彼女達に背を向けて横になっているジャックの方を見る。
「モンスターも、きっと寝てますよ」
「······ふふっ、そうかもね」
そんな二人の会話を、ジャックは、ギシギシと鳴る船の上で、ただ目を瞑りながら聞いていた。
――つづく。
「僕らはここに数日滞在したら、次はキミ達の国に行くつもりだ。だから近いうち、また会えるかもしれないね」
「会っても何ももてなさないわよ?」
「結構だよ。用事はその先の海にあるから。その前の息抜きに立ち寄るだけだよ」
「そっ。せいぜい楽しんでって頂戴」
「そうさせてもらうよ」
そうして、話が一段落したと思った彼は、ミーナに向けこんな事を口走った。
「ところでキミ、僕らと一緒に来る気ないかい?」
彼の予想外の言動に仲間の四人も驚いていた。
「ちょっとクレスタ本気?」
あまりにも突拍子のない事に、ユーイが割って入る。
「ユーイだって見ただろう? あの炎。彼女が僕たちの仲間になってくれたらかなり心強いと思うんだ」
「確かにアレは凄いと思ったけど、だからって——」
「悪いけどお断りするわ」
口論をする二人に、ミーナが声を発すると、虚をつかれた彼らは目を丸くしていた。
「私にはまだ彼らとやる事があるもの。ゴメンなさいね」
「あら、振られたわね」
「はやかったですね」
「最速じゃない?」
だが、特に落胆するでもなく、クレスタは彼女に返事をした。
「そうか、残念だ。でも、キミならいつでも歓迎するよ。気が変わった時はよろしく頼むよ」
「しつこいのは嫌われるわよ?」
「構わないさ」
ミーナは、馬車と船の方を見るとクレスタに言う。
「あまり待たせちゃ悪いわ。ここら辺にしておきましょ」
「そうだね」
そう言って、クレスタは三人と握手をする。
「また会いに行くよ」
だが、ジャックと握手をする時、彼は耳元に顔を寄せ、こう呟いた。
「キミにもね」
ジャックは特に何も返さなかった。
挨拶を終えた彼らは、馬車に乗り、三人より先に村へと戻って行く。それを見たミーナ達も、水馬の引く木船へ乗り込む。
——君は何故、魔物が絶えないか考えたことあるかい?
その言葉を思い出したジャックは、出発し始めた船の上で、小さくなる馬車の方をじっと見つめていた。
船の上で、ミーナとフィリカは今日の成果について話をしていた。
「今回は魔物を倒しても、何も無しなんですね」
船の上には袋に入った薬草と、四人の人間以外には特に何もなかった。あの陽の射し込む穏やかな森の中、フィリカは、行きと同じ姿勢で座るミーナに尋ねた。
「そんな事ないわよ?。グリフォンの羽根は服や矢に、肉は食料に、爪やクチバシは薬になるのよ」
「えっ、でも道中に亡きがら置いてきちゃいましたよ?」
「あぁ、ムスリカ村にあの一行が一度運んでおいてくれるみたいよ。だから今日帰ったら軍に手配して、明日、腐らないうちに取りに行く事になってるわ」
「あの人達はそこまでしてくれるんですか······」
「その代わりにしては釣り合わないけど、村の食料と、矢を作る分だけの量は分けて欲しいって言われてるわ。馬車に乗り直す前にね」
「そうでしたかぁ」
「だから、後は好きにしていいそうよ」
「へぇー······なんか変わった人達でしたね」
「······そうね」
森の奥から温かな風が吹いて、そっと微笑むミーナの髪を揺らす。ポチャン、と小さな音が川から聞こえると、フィリカが、船の上から顔を出し、水中で泳ぐ小魚を眺める。
悠々と泳いでいた魚だったが、一回り大きな魚がやって来て食べられてしまう。
「あぁー······」
「あんま顔出してると危ないわよ?」
変な声を上げたフィリカに、ミーナが声を掛ける。
「えへへ、大丈夫ですよ。だって、ほら——」
と言って、彼女達に背を向けて横になっているジャックの方を見る。
「モンスターも、きっと寝てますよ」
「······ふふっ、そうかもね」
そんな二人の会話を、ジャックは、ギシギシと鳴る船の上で、ただ目を瞑りながら聞いていた。
――つづく。
0
あなたにおすすめの小説
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる