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本編
36.もっとください
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「私は東さんのこと、完璧な人だと思って好きになったわけではありません。けれど、東さんの言うように何もできない人だとも思っていません。私は東さんのように人を魅了する物は作れません。初めて会った日にも、こんな仏頂面の男にも明るく声をかけてくれました。私は親しみやすい言葉を使うことも、東さんのように柔らかな笑顔も不得意です。私が持っていない素晴らしいものを東さんは持っていて、それを惜しげもなく私に向けてくれます。私はそういうあなただから、好きになりました」
蓜島の言葉はいつだって嘘や迷いがなくて説得力がある。そう言われてしまえば、東はそういうものか、と納得する他なくなってしまう。
「……逆に私こそ、あなたに呆れられないか心配していたくらいです」
「へ? どうして?」
蓜島の思いもよらない言葉に東はきょとんとする。
「……私自身も驚いているのですが、私は存外、独占欲が強いみたいです。東さんが素を見せるとすぐにふられてしまうなんて言うものですから、であれば東さんが本音を見せて甘えてくれるのは私だけなのかと思うと……かなり、嬉しいなどと思ってしまいまして」
「は、ああ……それは…」
東は曖昧な返事しかできない。引いているわけでは決してない。珍しく頬を色濃く染めて恥ずかしそうに話す蓜島に動揺しているのだ。
「受け入れられたと感じて、ほっと安心したような顔も、私だけが知っているんですよね?」
「お、おれそんな顔してました?」
蓜島は東の腰に腕をまわして、きゅっと優しく抱き込む。蓜島のいつもよりも赤い顔がすぐ近くにあって、東のほうまで熱が伝わってくるようで、つられて頬が熱くなる。
「かわいかったですよ。他の人には見せないでくださいね」
「み、見せる機会ないですよ! てか本当に、蓜島さんキャラ変わってません?」
「そうかもしれません。東さんに恋をしたからではないでしょうか」
「……っ、」
蓜島の言う通り、蓜島は親しみやすいくだけた言葉を使う人ではない。けれど、時にはだからこそ強烈にその想いが伝わることもある。
東はあまりの真っ直ぐな瞳と言葉に耐え切れなくなり、思わずぎゅっと瞼を閉じてしまった。そしてすぐに、この距離で目を閉じたなら、することなんてひとつだということに気が付いた。
「東さん」
返事は、できなかった。呼び返そうとして僅かに開いた唇は、すぐに柔らかな蓋をされてしまったから。
「ん、」
代わりに、小さなくぐもった声が漏れた。それを聞き届けた蓜島が、フ、と笑ったのが東はわかった。こんなに息遣いを感じる距離なのに、息を漏らして笑う蓜島の顔を見れなかったことを少し惜しく思ったけれど、ちっとも離れる気にはなれなかった。
「……おれ、幸せです」
「私もです」
キスの合間に、そう溢した。自分を受け入れてくれた好きな人とのキスは、こんなに気持ちいいものなんだと、こんなにも幸せに思うのだと、東は初めて知った。
「東さん……もっとしてもいいですか?」
「…うん、」
東はするりと蓜島の首に腕をまわして、髪を撫でる。蓜島は嬉しそうに微笑んだ。
東のほうも、蓜島の微かな表情の変化を誰よりも近くで感じ取れることにちょっとした優越感は覚えていた。けれど蓜島のこの笑顔は、きっと誰が見ても笑っているとわかるだろう。
けれどこんなに甘い顔を見られるのは、東だけの特権だった。東はそれが嬉しくて、愛しくてたまらなかった。
「もっと、ください」
「……かわいいひと」
ちゅ、ちゅ、と柔らかさを感じる吸い付き合うキスをしていると、東の唇にぴたりと蓜島の熱い舌が触れる。それを招き入れるみたいに東が口を開けば、ぴちゃりと舌が絡み合う音が聞こえて、次第にキスは深くなっていく。
東の作った食後のデザートのせいなのか、そのキスはひどく、甘かった。
蓜島の言葉はいつだって嘘や迷いがなくて説得力がある。そう言われてしまえば、東はそういうものか、と納得する他なくなってしまう。
「……逆に私こそ、あなたに呆れられないか心配していたくらいです」
「へ? どうして?」
蓜島の思いもよらない言葉に東はきょとんとする。
「……私自身も驚いているのですが、私は存外、独占欲が強いみたいです。東さんが素を見せるとすぐにふられてしまうなんて言うものですから、であれば東さんが本音を見せて甘えてくれるのは私だけなのかと思うと……かなり、嬉しいなどと思ってしまいまして」
「は、ああ……それは…」
東は曖昧な返事しかできない。引いているわけでは決してない。珍しく頬を色濃く染めて恥ずかしそうに話す蓜島に動揺しているのだ。
「受け入れられたと感じて、ほっと安心したような顔も、私だけが知っているんですよね?」
「お、おれそんな顔してました?」
蓜島は東の腰に腕をまわして、きゅっと優しく抱き込む。蓜島のいつもよりも赤い顔がすぐ近くにあって、東のほうまで熱が伝わってくるようで、つられて頬が熱くなる。
「かわいかったですよ。他の人には見せないでくださいね」
「み、見せる機会ないですよ! てか本当に、蓜島さんキャラ変わってません?」
「そうかもしれません。東さんに恋をしたからではないでしょうか」
「……っ、」
蓜島の言う通り、蓜島は親しみやすいくだけた言葉を使う人ではない。けれど、時にはだからこそ強烈にその想いが伝わることもある。
東はあまりの真っ直ぐな瞳と言葉に耐え切れなくなり、思わずぎゅっと瞼を閉じてしまった。そしてすぐに、この距離で目を閉じたなら、することなんてひとつだということに気が付いた。
「東さん」
返事は、できなかった。呼び返そうとして僅かに開いた唇は、すぐに柔らかな蓋をされてしまったから。
「ん、」
代わりに、小さなくぐもった声が漏れた。それを聞き届けた蓜島が、フ、と笑ったのが東はわかった。こんなに息遣いを感じる距離なのに、息を漏らして笑う蓜島の顔を見れなかったことを少し惜しく思ったけれど、ちっとも離れる気にはなれなかった。
「……おれ、幸せです」
「私もです」
キスの合間に、そう溢した。自分を受け入れてくれた好きな人とのキスは、こんなに気持ちいいものなんだと、こんなにも幸せに思うのだと、東は初めて知った。
「東さん……もっとしてもいいですか?」
「…うん、」
東はするりと蓜島の首に腕をまわして、髪を撫でる。蓜島は嬉しそうに微笑んだ。
東のほうも、蓜島の微かな表情の変化を誰よりも近くで感じ取れることにちょっとした優越感は覚えていた。けれど蓜島のこの笑顔は、きっと誰が見ても笑っているとわかるだろう。
けれどこんなに甘い顔を見られるのは、東だけの特権だった。東はそれが嬉しくて、愛しくてたまらなかった。
「もっと、ください」
「……かわいいひと」
ちゅ、ちゅ、と柔らかさを感じる吸い付き合うキスをしていると、東の唇にぴたりと蓜島の熱い舌が触れる。それを招き入れるみたいに東が口を開けば、ぴちゃりと舌が絡み合う音が聞こえて、次第にキスは深くなっていく。
東の作った食後のデザートのせいなのか、そのキスはひどく、甘かった。
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