あまいの、いくつほしい?

白湯すい

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本編

41.手を繋いでおでかけしましょう(2)

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 二人はそれからも、各地の有名な菓子店やネットでひっそりと話題になっていた隠れ家的なカフェなどを巡った。
「いやあ、たくさん食べちゃいましたね」
「ええ、でもたくさん歩きましたから、罪悪感はないですね……」
「あはは、太るの気にしてるんですか?」
「少しは。かっこつかないじゃないですか」
 東は蓜島にこれ以上かっこよくなられては困るな、と思ったけれど、なんとなくそれは言えなかった。

「東さん、疲れてないですか?」
「平気です、こう見えて体力あるんですよ。でも明日もちょっと歩きますし、もう部屋戻りましょうか」
「そうしましょう。二人で居ると、時間があっという間ですね」
「ふふ、同じこと考えてました」
 朝早くから同じマンションから出発して、旅先で陽が落ちるまでデートをして、いつもよりもずっと長い時間を過ごしているはずなのに、二人はいつもよりも時間が過ぎてしまうのが早いように感じていた。
「普通に付き合ってるカップルなら、こういうときにふと寂しくなったりするんでしょうね」
「そうですね。でもおれたち、帰ってもだいたい一緒ですし」
「一緒に過ごしていないときも、隣に居るんだよなと思えるのはやっぱり安心感があるというか」
「わかります」
 今日はいつもの部屋じゃないけれど、また帰るところは同じだ。二人は、知らない町のまだ少し冷える夜に、その手が冷たくならないようにしっかりと繋ぎ合わせながら旅館へと帰った。


 今日は食事を外で済ませてきているので、部屋に帰ると既に布団が二組用意されていた。さすがランクの高い部屋だけあって、手触りの良さそうなふかふかの布団なのだけれど、それにはしゃぐような気持ちにはなれなかった。
 こうして見ると、付き合って初めての旅行の夜をやけに意識してしまう。
 お互いの自宅でのお泊まりはもう何度かしているけれど、お互いの家に居ることがさほど特別なことではなくなっていた二人だから、所謂、そういう空気にはあまりならなかった。
 シチュエーションというのは大事なものなのだなと、東はなんだか他人事のようにそう思った。非日常の雰囲気の良い部屋で、二人で夜を共に過ごすとなれば、半強制的にそういう空気になるものだと身をもって実感している。

「……あの、こういうの、聞くものでもないと思うんですけど」
「……はい」
 返事まで、妙な間が空く。その間に、蓜島もしっかりこの空気感にあてられているというのが東にも伝わる。
「……その、……します?」
 我ながら、色気のない聞き方だと東は思う。けれど、いきなりは怖いし、そのつもりでいるのが自分だけなのも恥ずかしい。
 いや、きっと蓜島だってそのつもりだとなんとなくわかってはいるけれど、なんとなくというのが東は嫌だった。だから、確かめたかった。

「……東さんが、いいなら」
「…………ずるい言い方。おれから、さわってほしいって、言わなきゃだめじゃないですか」

 部屋に戻ってきてまだ上着すら脱ぎかけの二人だったけれど、そんなやりとりをしたら抱き合わずにはいられなかった。

「かわいいひと。言わせてしまってすみません」
「別に、いいんですけど」
 中途半端に腕に引っかかるアウターがもつれて、抱き合っているのに逆にもどかしい。二人を隔てる何もかもが邪魔臭く感じて、けれど何もかもを取っ払うにはまだ恥ずかしさも残っている。

「……お風呂、入りましょうか」
「一緒に?」
「っ、だって、カップルで露天風呂つきの部屋に泊まって、ばらばらに入るのも何か、変じゃないですか?」
「ふふ、何の言い訳ですか」
 東が少し意地悪く尋ねると、珍しく慌てた様子の蓜島が見られた。
 ひりりと熱っぽい空気が少し緩まって、二人は控えめに笑い合う。それからひとつ、やわらかくて小さなキスをした。
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