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本編
54.父との会話
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夕飯と一緒に、デザートのケーキを準備しようということで、リビングとキッチンには蓜島と東の父親以外が集まって、わいわいと楽しそうにしている。
「蓜島くんは、料理はしないのかい?」
「はい、本当に簡単なものくらいしか……」
「ぼくもそうだよ。役に立たない者同士、少し話さないか」
「は、はい」
蓜島は父親に誘われるままに、家の庭に出て二人で話すことになった。
広々とした庭は綺麗に手入れされていて、ちょっとしたテーブルや椅子が置いてある。二人はその木の椅子に腰掛け、家の中で皆が楽しそうにしているのを眺める。
話す言葉が見つからなくて蓜島が黙っていると、東の父が沈黙を破り口を開く。
「……あの子、ちょっとびっくりするくらい綺麗だろう」
「は、はい、そうですね」
蓜島は東の父の言葉の意味を量りかねて、少し曖昧な返事をしてしまった。それを見て東の父は、無理もないと苦笑いをする。
「親の身でこんなことを言うのは少し気恥ずかしいんだけどね、ぼくら夫婦だって、育っていくにつれて驚いたんだ。どうしてぼくら夫婦にこんな綺麗な子がってね」
確かに夫婦はとんでもなく美形ということもなく、驚くのも無理はないのかもしれないと蓜島は思った。それでも東は両親のどちらにもちゃんと似ている。
「綺麗なことは何もいいことばかりではなくて、それも聡介はひどく気弱な子だったから、あれでなかなか苦労してきてるんだ。勝手なものさ、見た目が綺麗だと何もかも完璧を求められて、そうでなければあからさまにがっかりされる。はたまた、本人が自分の至らないことを本気で悔しがっていても、そんなものできなくたってお前の顔なら許されるだろうとかなんとか、とんでもないことを言われているのをぼくらも何度も耳にしたよ。聡介自身は、きっとぼくらの何倍も聞いてきたのだろうね」
庭から家の中を見ると、キッチンのほうで母と弟夫婦と楽しそうに笑う東の姿がある。幸せそうに過ごす息子を、父は慈しむように優しい目で見つめていた。
「美人でなくたっていい。完璧でなくたっていいんだ。親としてはね、ただ元気で笑っていてくれればそれでよかった。聡介がやりたいことをやって、好きな人と過ごして、満たされているならそれ以上のことは何もないんだ」
その言葉は誰に話すでもない、ただ純粋な祈りのように聞こえた。そしてそれは、まだ出会ったばかりの蓜島も同じ気持ちだった。けれど、ずっと重みが違うのだと、蓜島は強く感じた。父親として積み重ねてきたものは、離れた場所から見つめるその瞳も遠い場所で暮らす距離も関係なく、いつだってそばにあるのだろうと思わせた。
「蓜島くんは、料理はしないのかい?」
「はい、本当に簡単なものくらいしか……」
「ぼくもそうだよ。役に立たない者同士、少し話さないか」
「は、はい」
蓜島は父親に誘われるままに、家の庭に出て二人で話すことになった。
広々とした庭は綺麗に手入れされていて、ちょっとしたテーブルや椅子が置いてある。二人はその木の椅子に腰掛け、家の中で皆が楽しそうにしているのを眺める。
話す言葉が見つからなくて蓜島が黙っていると、東の父が沈黙を破り口を開く。
「……あの子、ちょっとびっくりするくらい綺麗だろう」
「は、はい、そうですね」
蓜島は東の父の言葉の意味を量りかねて、少し曖昧な返事をしてしまった。それを見て東の父は、無理もないと苦笑いをする。
「親の身でこんなことを言うのは少し気恥ずかしいんだけどね、ぼくら夫婦だって、育っていくにつれて驚いたんだ。どうしてぼくら夫婦にこんな綺麗な子がってね」
確かに夫婦はとんでもなく美形ということもなく、驚くのも無理はないのかもしれないと蓜島は思った。それでも東は両親のどちらにもちゃんと似ている。
「綺麗なことは何もいいことばかりではなくて、それも聡介はひどく気弱な子だったから、あれでなかなか苦労してきてるんだ。勝手なものさ、見た目が綺麗だと何もかも完璧を求められて、そうでなければあからさまにがっかりされる。はたまた、本人が自分の至らないことを本気で悔しがっていても、そんなものできなくたってお前の顔なら許されるだろうとかなんとか、とんでもないことを言われているのをぼくらも何度も耳にしたよ。聡介自身は、きっとぼくらの何倍も聞いてきたのだろうね」
庭から家の中を見ると、キッチンのほうで母と弟夫婦と楽しそうに笑う東の姿がある。幸せそうに過ごす息子を、父は慈しむように優しい目で見つめていた。
「美人でなくたっていい。完璧でなくたっていいんだ。親としてはね、ただ元気で笑っていてくれればそれでよかった。聡介がやりたいことをやって、好きな人と過ごして、満たされているならそれ以上のことは何もないんだ」
その言葉は誰に話すでもない、ただ純粋な祈りのように聞こえた。そしてそれは、まだ出会ったばかりの蓜島も同じ気持ちだった。けれど、ずっと重みが違うのだと、蓜島は強く感じた。父親として積み重ねてきたものは、離れた場所から見つめるその瞳も遠い場所で暮らす距離も関係なく、いつだってそばにあるのだろうと思わせた。
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