チルアウト・コミュニケーション

白湯すい

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指名の理由

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「辻さんって、意外とおしゃべり好きですよね」

 何度か辻さんの家に訪問するたびに思ったことがある。始めは俺が緊張しないように気を使ってくれているのかと思っていたけれど、どうやら辻さんは人と話すことを楽しんでいる様子だった。外見からは少し近寄り難く見えるけれど、話してみるとすごく朗らかで話しやすい人だったことに驚いた。

「意外かい?僕はそれなりに愛想よくしてるつもりなんだけどな」
「あはは、意外は余計でしたね。でも、初対面のときは正直ちょっと怖かったです」
「ああ~、それは、僕も少し警戒というか……どんな人かなって緊張していたから、それが出ちゃってたのかな」

 辻さんは少し困ったように話す。俺から見た辻さんはいつも落ち着いていて、緊張していたようには見えていなかった。

「緊張ですか?」
「うん、実はね。前に利用してた家事代行の業者の人がちょっと変わった人だったっていうか、ぶっちゃけると変な感じに好意を持たれてちょっとしたストーカーみたいになっちゃったことがあったんだよ」
「ええ……っ、大変じゃないですか!?」
「そう、大変だったんだ。だからおたくに頼むときは男性の方をお願いできますかと聞いたんだよ」
「そうだったんですね。男性希望だとは聞いてましたが、そういった事情が……」

 そういえば、俺が辻さんの担当になるときに男性スタッフを希望されているという話は聞いていた。単純に男同士のほうが気を使わないで済むからとかかな、なんてことを思っていたけれど、事態はもう少し深刻だったらしい。

「昔から僕は変な人に好かれやすいらしくて。ゴミ漁られたりとかは別にいいんだけど、頼んでない日に押しかけられたり関係を迫られるのはちょっとね……」
「そ、そんなことがあったんですか?」
「ああ、そうなんだよ。あれは、ちょっと困っちゃったな。最終的には警察の方にも立ち会ってもらった上でもうしないって約束してくれたけれど……」

 話を聞くほどにすごい話だと思った。ゴミを漁られるのだって絶対よくはないだろうと思うけれど、繰り返しそういうことがあったならそれすら些細なことに感じてしまうのかもしれない。

「イケメンって大変なんですね……」
「…ふふっ! イケメンって……僕みたいなおじさんに使う言葉じゃないでしょ」
「じゃあ、イケオジ? 辻さん、かっこいいから」
「そんな風に思ってくれてたんだ。ありがとう」

 そう笑ってくれる辻さんの柔らかな表情を見て、申し訳ないと思いつつもおかしくなってしまう女性たちの気持ちがちょっとわかるかもしれないと思ってしまう。
 それくらい、辻さんは素敵な人なんだ。
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