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おまけ〜それぞれの○○年後2〜
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(アンジェラ編)
「どうか私と結婚してください! 絶対に絶対に幸せにします」
十七歳になったアンジェラはそれはそれは美しい娘に成長し、ノービルド城には連日、彼女に求婚しようとする男達が押し寄せて途絶えることがなかった。
アンジェラは目の前に跪く男を、冷ややかな目で見下ろした。
「……無理。そんな薄っぺらい身体の男とか」
「そ、そんな……自慢するつもりはないですが、家柄も容姿も貴方にふさわしいのは僕くらいだろうと王都でも評判で」
たしかに、これまでやってきた男達のなかでも彼はずば抜けて美形で、身のこなしも洗練されていた。着ている服も上等だから、きっと良い家の子息なのだろう。
だが、アンジェラの理想には遠く及ばない。
「自画自賛する暇があるなら、もっと鍛えてきて。話はそれからよ」
「うっ……わかりました。鍛錬して出直します。絶対に諦めませんからねー! 待っててくださいねー!」
すっかり興味を失ってくるりと踵を返してしまったアンジェラの背中に向かって、なおも彼は叫び続けていた。
その様子をこっそり見ていたリーズはあっけなく振られてしまった男に憐憫の眼差しを向けた。
「気の毒に……」
次にアンジェラに向き直る。
「あのね、アンジェラ。いくらあんたが絶世の美少女でもねー、せっかく来てくれた男性にはもう少し優しくしてあげなさいよ」
「来てくれなんて頼んでない」
「か、可愛くない。顔は可愛いのに!」
この素直じゃない感じが誰かに似ているとリーズは思ったが、口には出さなかった。
「そんなことより……」
アンジェラはリーズの背に隠れるようにしてこちらを覗いている少女をきっと睨んだ。
「マイラってば昨日またジーク様の布団にもぐりこんだわね!」
「だって、じぃじが一緒にって……」
「ジーク様をおじいちゃん呼ばわりしないでよっ」
アルとリーズの娘であるマイラを、ジークは目に入れても痛くないというほどに溺愛していた。マイラも優しいジークにべったりなものだから、アンジェラとしては面白くないのだ。ふたりは顔を合わせる度にいがみ合っている。
「アンジェラのファザコンは重症だわね」
いつかは、彼女も嫁に行く日が来るのだろうか。少なくとも現時点ではまったく想像できないなと、アンジェラの美しい横顔を眺めながらリーズは思った。
(三つ子編)
「俺、すごい事実に気がついた!」
マクシムが唐突に大きな声を出すものだから、レオルドとシェリンは食事の手を止め彼のほうを見た。
「今度はなんだよ?」
「どうせくだらない話でしょ~」
十歳になった三人は小さい頃から変わらずそっくりな顔立ちをしているが、性格にはそれぞれの個性が出てきていた。しっかり者のレオルドと甘えん坊のシェリン、そして……。
「双子はお母さんの実の娘だけど、俺達は違うんだよな?」
「そうだよ。お母さんが産んだのは双子だけ。俺達は孤児だったのをお父さんが引き取ってくれたんだよ」
レオルドの言葉を聞いて、マクシムは満足気にうなずいた。
「てことはさ、俺はお母さんと結婚できるってことだよな!」
あまりにくだらないマクシムの話に、レオルドとシェリンは開いた口が塞がらない。
「薄々気がついてたけど……マクシムってどうしようもないお馬鹿だよね」
「俺、こんなお馬鹿と血が繋がってるなんて信じたくない」
fin
「どうか私と結婚してください! 絶対に絶対に幸せにします」
十七歳になったアンジェラはそれはそれは美しい娘に成長し、ノービルド城には連日、彼女に求婚しようとする男達が押し寄せて途絶えることがなかった。
アンジェラは目の前に跪く男を、冷ややかな目で見下ろした。
「……無理。そんな薄っぺらい身体の男とか」
「そ、そんな……自慢するつもりはないですが、家柄も容姿も貴方にふさわしいのは僕くらいだろうと王都でも評判で」
たしかに、これまでやってきた男達のなかでも彼はずば抜けて美形で、身のこなしも洗練されていた。着ている服も上等だから、きっと良い家の子息なのだろう。
だが、アンジェラの理想には遠く及ばない。
「自画自賛する暇があるなら、もっと鍛えてきて。話はそれからよ」
「うっ……わかりました。鍛錬して出直します。絶対に諦めませんからねー! 待っててくださいねー!」
すっかり興味を失ってくるりと踵を返してしまったアンジェラの背中に向かって、なおも彼は叫び続けていた。
その様子をこっそり見ていたリーズはあっけなく振られてしまった男に憐憫の眼差しを向けた。
「気の毒に……」
次にアンジェラに向き直る。
「あのね、アンジェラ。いくらあんたが絶世の美少女でもねー、せっかく来てくれた男性にはもう少し優しくしてあげなさいよ」
「来てくれなんて頼んでない」
「か、可愛くない。顔は可愛いのに!」
この素直じゃない感じが誰かに似ているとリーズは思ったが、口には出さなかった。
「そんなことより……」
アンジェラはリーズの背に隠れるようにしてこちらを覗いている少女をきっと睨んだ。
「マイラってば昨日またジーク様の布団にもぐりこんだわね!」
「だって、じぃじが一緒にって……」
「ジーク様をおじいちゃん呼ばわりしないでよっ」
アルとリーズの娘であるマイラを、ジークは目に入れても痛くないというほどに溺愛していた。マイラも優しいジークにべったりなものだから、アンジェラとしては面白くないのだ。ふたりは顔を合わせる度にいがみ合っている。
「アンジェラのファザコンは重症だわね」
いつかは、彼女も嫁に行く日が来るのだろうか。少なくとも現時点ではまったく想像できないなと、アンジェラの美しい横顔を眺めながらリーズは思った。
(三つ子編)
「俺、すごい事実に気がついた!」
マクシムが唐突に大きな声を出すものだから、レオルドとシェリンは食事の手を止め彼のほうを見た。
「今度はなんだよ?」
「どうせくだらない話でしょ~」
十歳になった三人は小さい頃から変わらずそっくりな顔立ちをしているが、性格にはそれぞれの個性が出てきていた。しっかり者のレオルドと甘えん坊のシェリン、そして……。
「双子はお母さんの実の娘だけど、俺達は違うんだよな?」
「そうだよ。お母さんが産んだのは双子だけ。俺達は孤児だったのをお父さんが引き取ってくれたんだよ」
レオルドの言葉を聞いて、マクシムは満足気にうなずいた。
「てことはさ、俺はお母さんと結婚できるってことだよな!」
あまりにくだらないマクシムの話に、レオルドとシェリンは開いた口が塞がらない。
「薄々気がついてたけど……マクシムってどうしようもないお馬鹿だよね」
「俺、こんなお馬鹿と血が繋がってるなんて信じたくない」
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みんなの感想(20件)
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アルのタガが外れた
(((o(*゚∀゚*)o)))
嬉しいっ!←なんで?
私も嬉しいです笑。
このふたりは主役ふたりより、色っぽい雰囲気を出しやすいな〜と思いながら書いてます!
Σ(゚д゚;)相変わらずクソ母本当にブレないクズっぷりですね(*ФωФ)フフフ…そりゃ旦那様キレるわ(((uдu*)ゥンゥン
しかし、主人公ちゃんにマジで惚れてた村長のバカ息子と、妹ズは良い意味で変わらずでちょっとホッとしました(๑❛ᴗ❛๑)
母親はぶれずに悪役に徹してもらいました! 妹達は無知で無邪気というイメージで書いていました。姉の不遇さに気がついていないんです。
あぁぁ、この母親はやっぱり最後までクズやった。
父親も似たようなものかなぁ。
エイミはこれからたくさん幸せを積み上げて欲しいです。
あの両親とハッピーエンド的展開は無理があるなと思い……こんな形になりました。これからたくさん幸せになるので、エイミは大丈夫です!