不思議な黒石(ケンタ編・京子編)

當宮秀樹

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2ミツトモ

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2ミツトモ

 不可解な出来事からほどなくして、また別感覚の朝をむかえた。
ケンタはすこぶる心地良い目覚めだった。 
あっ、この感覚、高校時代経験したあの朝の感覚と似ている……?  
うっ? でも、いつもと何か違う……

「あっ!」思わず叫んだ。

全然違う??$&$&%&部屋全体がログハウスのように木で覆われいる。 
そのせいか木の心地良い香りだけが強く印象に残った。 あれ? 部屋に窓がない。 
でも全然息苦しくない。 えっ照明器具がない? でも部屋全体が適度な明るさ? 
サッシ屋で習ったけど、窓がない家って建築法違反だよな……どういうこと……? 
動揺しながらも現実的なことを考えていた。

僕のバイト先はサッシ屋なんだけど、この家はどういう具合になってるわけ?
外に出てビックリ。 アパートの外観はドーム型で壁全体がヌルヌルとジェル状になっている。 
おまけに出入り口がない…… そういえば抵抗感なく外へ出たような気がする。

目の前にあった電気線も電話線も見あたらない。 そのヌルヌル壁が発電システムになっているのか? 
耳を近づけて聞いてみると決して耳障りではない軽いパルス音が聞こえる。 

外を見渡すと乳白色の卵形をした乗り物が飛び交っている。 
あれってくるま? 飛行機? UFO?  あっ! 窓とタイヤがない? 全体が軽く宙に浮いている。 
なにこれ…… ここって未来? 天国? 僕は死んでしまったの? 

ケンタはそこまで自問自答した。 

空気が鮮明で遠くの山並みが距離感を感じさせないほどスッキリ鮮明に見える。 
太陽もスッキリしていて全然眩しさを感じない。 ここはどんな世界?とりあえず会社に行ってみよう。 
何か解るかもしれない。

と思った瞬間ケンタは会社の前立っていた。  えっ、うそでしょ? これって瞬間移動? 
何が起きたのか解らない。 ただあっけにとられていた。 会社のヌルヌル壁を通過すると
伊藤社長が微笑んでいた。 

「おはようございます」ケンタは挨拶した。 

社長は言葉では無い言葉で「おはよう」と返してくれた。 でも耳でなくなぜか胸のあたりで聞こえた。 
 それに伊藤社長が少し透けて見えるのは気のせい? 

 ケンタの思考回路はパンク寸前。  

「今日の現場は函館だから昼頃には会社に戻るように頼むよ」  

怪訝な顔をし言葉を返した「函館ですよね…… 午前中ですか……?」

社長は「だからどうしたの?」

「えっ?」社長の返答に困惑した。  

何でそんなこと云うの? 函館だよねこの社長は距離と時間の観念が無いのか?

久慈先輩とペアで行くことになった。 例の車らしき乗り物に乗せてもらうといきなり重力感が
失われ空気が歪んだ。 次の瞬間函館の街に移動していた。

工事は壁に空港で見かけるボディチェックをする、機械のようなもので光を当てると、
何やら壁の一部が揺らいでるようだった。 壁は綺麗に歪みが修正され他と同様綺麗な壁になっていた。 

工事はそれだけ? ケンタは何の事か理解できないでいた。 久慈さんの話だと工事というよりも
壁を診断し、光線を照射するのが仕事みたい。 なんでも、色の照射は生命体に使用する方法を
応用してると久慈先輩は言っていた。 つまり色の違いで波長も違い効果もちがうらしい。

「何でそんなこと聞く?」

だって僕には初めての経験だからと言いたかったが必死にこらえた。 一日の仕事はそれだけでした。 

何かこの世界は居心地が良さそうなのでゆっくり街を観てみたい。 誰かにこの世界の仕組みを
レクチャー願いたいと思った。 帰宅途中大通り公園に立ち寄ることにした。 

印象はずばり未来都市。 それでいてすこぶる質素な建築構造と町並み。 
道行く人はみんな穏和な感じがする。 話しをしなくても伝わってきた。

大通公園のベンチに腰を下ろし風景を眺めていた。 気が付くと横に見知らぬ存在がこちらを見て
ニコニコしていた。 雰囲気が暖かい感じがしたので僕のほうから「こんにちわ」と軽く声をかけた。 

彼も親しげに声をかけてきた。 

「君は? 君はどこから来たんですか?」

いきなりの質問だった。

「はい、嶋守ケンタといいまして東区だけど」

「で、貴方は?」

「名前のことかい? 基本僕らには名前がないのさ。 ていうか必要としないので名は付けないよ」

「必要なら、君が僕に名前を付けてくれていいけど」

「……? ていうかなんで名前がないの?」

「僕は君で君は僕だからさ+」

?なんだこいつ? 蛯子みたいなやつだ? なんかむかついた。

「あっごめん言い方を変えよう。 君の世界は何次元だい」

「はっ? 三次元ですけど」  

「そうかじゃあ四次元だね」

こいつ訳が解らんやっぱり蛯子か?

僕はもう一度「立体三次元です」と語気を強めた。  

「その立体三次元に時間を加えてごらん」

僕はなるほど、変に納得した。

「ところで貴方の名前はミツトモでどう?」

「全然かまわないけどどういう意味?」

「閃きですけど。 ところでさっきの話だけどここは何次元なの?」  

ミツトモは笑みを浮かべながら「四.五次元ってとこかな」

「四次元と四.五次元ってどう違うの? 具体的にいうと」

「ケンタたちの四次元っていうのは時間軸に縛られているんだ。 僕達はその時間軸が無いから
時間という制限がないのさ。 君の世界では一、二、三、四、五という一定のルールがあるだろう? 
この世界では一の次が五でも十でも一億でも自由なのさ。 
ちなみにケンタくんは今日瞬間的に函館に行っただろう? 
ここは、時間という制限が無いから、考えたら次の瞬間そこに移動してるのさ……」

「ああ理屈では解るけど、函館に行った事は行ったけど、なんでミツトモくんに僕が函館に行った事が解るの?」 

「ここでは他人の考える事や、思う事が手に取るように解るからさ。 つまり他人って存在しないのさ」

「えっ!」ケンタは驚いた。 

「こいつは蛯子より変」関わり合うのはやめよう。 

「じゃあケンタくん、今日はこの辺で辞めよう。 きみの頭がパニック起こしそうだから。 
それより酒飲みに行かない?」

「アルコールは存在するの?」

「ここは観念の世界だから思えば存在するよ」

僕はミツトモと酔わない酒を飲んだ。
 
翌朝、会社に出社するも、昨日の出来事がやたら気になって昼から早退させてもらった。

なんか、よくわからない……?

急にケンタは札幌の街を上から見てみたいと思い、藻岩山に登ることにした。 
おお! この山の登山道は全然変わってない。 僕の知る道だ、なぜか安心した。 
途中の木々は生き生きとして透き通るように青く、小鳥達は何の警戒心もなく、
それどころか本当に戯れて飛んでいるようだった。

それも束の間。 えっ! 僕は途中で目を疑う光景を見た。 狐とリスと猫が三匹で遊んでいる…… 
しかも楽しそう。 聞き取れないが本当に楽しそうに会話をしている。 
警戒心がまるでない。 なんだかそれを見ている僕まで楽しくなってきた。 
頂上からの眺めはと? えっ? これが札幌? 住宅の数が全然少ない? 
そして全体が例の乳白色系で所々赤や青などが混ざっていた。

「なぜかわかるかい?」

いきなり横から誰かが語りかけてきた。 この感覚は? ミツトモだ、僕はビックリした。 

「な、なんでミツトモがここに? 君ってストーカー?」

「昨日言ったじゃないか君は僕で僕は君だからさ」  

そんなこと言ったっけ……? ああ、こいつまた始まったと思った。 なんかミツトモと話していると
楽しいけど時たまむかつく……  

「そう、むかつくなよ」

心読まれた。
 
「この街の造りは何なの?」ケンタは素っ気なく聞いた。

「ここは外部から電力の供給を必要としないのさ。 一家に一台無料の自家発電装置付きなんだ。 
燃料供給源は宇宙線の一部を使うから永遠に無尽蔵って訳。 しかも君の世界にある天災と呼ばれる地震、
雷など無いんだ。 年から年中昼。 気温は暑くも寒くもない快適温度。 
もっというと人間の寿命は君達の時間になおすと八百才くらいかな? 
それに君の世界のように肉体がないから老化することがない」

「じゃあ死が無いの?」

「違う、死という概念がないのさ。 概念がないから存在しない。 まっ、そのうち解るさ」  

なんかむかつく……  

「いいかいケンタは制限のある世界にいたから自分でも無意識のうちに勝手に制限をつけていたわけ。 
なんにでも制限を付ける癖があるのさ」

「制限ってどんな?」  

「たとえば時間、年月、宗教、道徳、国、地域など、みんな制限や決めごとがあるだろう…… 
他に人は死ぬという制限付けもそのひとつ。 みんな制限で守られているから安心して眠ることが
出来るんだ。 ケンタはもしその制限を取り外したら世の中どうなると思う?」

「う~んみんな自分勝手ばかりして地獄絵図のような世界になると思う」

「そうか、僕は真逆だと思うけどな」そうミツトモは呟いた。

「ねえ話し変わるけど、二つほど質問していいかなあ? さっき天候の話ししたよね、この世界は
何故天候が穏やかなの……?」 

「いい質問だ。 ケンタの世界は相変わらず地震や台風の被害、大雨など多いわけ?」 

「うん、当たり前にある……」  

「うん、人間には肉体があってそれを動かすアストラル体という別の、ある種のエネルギー体があるんだ。
ほかにもエーテル体やコーザル体などもある。 そことケンタ達は繋がっているんだよ誰もが。 
それらがケンタを動かしているのさ。 今は三つで例えるね。 地球も同じと考えてみていいんだ。 
その意識体と地球の意識体とがシンクロしてる。 だから人間の意識が荒んで乱れると地球の意識体が同調し、
自然界に悪い影響を及ぼし、地震や台風、干ばつなどのような天災に繋がるということさ」  

「なるほど。 もう一つ、この世界ではミツトモはどんな仕事してるの? 」 

「何でも屋さんだよ。 音楽を作ったり、絵を描いたり、小説書いたり、やりたい時にやりたいことやるのさ」

「じゃあ生計はどうやって?」

「生計なんて言葉は無い。 ここでは」

「だって家を維持したり食事をしたり、いろいろとお金かかるでしょうが」

ミツトモは笑顔でいった。

「それは君たちの世界観。 思いこみで作った世界さ。 死のない世界では食事をしない。 
水はたまに飲むけど光熱費はかからない。 もし必要な物があった場合には誰かが与えてくれるんだ。 
しかも無償で。 お互いに与え合うことがここの生活」

「じゃあ社会や文明が発展しないのでは?」

「発展? なんの発展だい?」

「文明とか人の意識とかさ」  

「ここはある意味完成してる世界だ。 完成形にそれ以上の発展は望まない。
但し、まだ上にも世界は存在するけどケンタから見たら、光だけで身体と呼べるものは無いし必要としない。 
ナウ・イズ・パーフェクト……! ただし、もっと意識が上と表現したらいいのか、
広いと表現したらいいのか、そういうおおきな意識の世界は存在するよ。 神というか宇宙だね。 
フフッ、ケンタって面白いね」 

「なにが面白いの?」 

「いや、ついでにいうとケンタの世界では集団意識というのが定着してるんだけど、あれが全ての
制限の源なんだ。 例えばケンタの世界には霊能者って存在がいるよね。 
たぶん絶対数少ないと思う。 でも他言してないけど実は自分もそうだと認識してる人はかなり多いと思う。

なぜ公言しないのか?理由はひとつ。 異端の目で見られるのが嫌なんだ。
 
ケンタの世界では集団意識というのがあって科学で証明されないものは存在しない。 
もし言ったとしたら否定されるか変人扱いされ軽視さえされる。 長年にわたり一般人と
違うレッテルを貼ってきた。 中世では魔女狩りにあったんだ。
UFOという宇宙機を目の当たりにしても、まだ信用しない。 目の錯覚かなにかとして自分の中で
処理してしまう」

「うん、確かに……」

ミツトモは続けた。
 
「でも、そういう能力者は昔からずっと存在してきたのさ。 能力者の家系は、そういうことを
肯定する意識が強い。 結果的に能力が当たり前に肯定される。
そういう家系に接してると、接したその人まで能力者になるんだ。 本当は能力が備わるのでなく
初めからある能力を肯定して使っただけなんだけどね。

集団意識というのは絶対数が多いと正解、少数意見は間違いという傾向にあるからね。 
間違っていると解っていても絶対数が多いとそっちを正解と思いこむんだ。 人間は実に自分勝手さ……」

「じゃあミツトモの住む世界はどうなの?」

「うん、この世界はケンタからみたら全員が覚醒した人。 つまり釈迦やキリストと同じ覚者さ。 
覚者はいつも素直に自分流でいられるのさ。 自分を縛る鎖を持ち合わせていないよ。 
漢字でいう差とか鎖を取る、さ、と、り、ここに住む全員はそれが当たり前の世界。 
自分が覚者という自覚は当然ない。それが当たり前のだから。 誰ひとり私は悟ってますなんて公言しない。 
今のはケンタ目線で解りやすく説明しただけ」
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