不思議な黒石(ケンタ編・京子編)

當宮秀樹

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3トミゾウ

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3トミゾウ

 嗚呼、不思議な世界に行ってしまった。 ミツトモってなに? 
「僕であり君でもあるんだ」なんてニヒルに言ってたが? 
そんなことよりこの部屋さっきからなんか臭う……? 
ジメジメと薄暗く憂鬱な気分、今日は帰ったら掃除して空気の入れ換えしよう。

ケンタは部屋から逃げるように表に出た。 外に出た瞬間異質な雰囲気がした。

なんだ……? 部屋と同じこの空気感は? 朝だというのにどうしてこんなにうす暗い? 
路上に出たケンタはさらに驚いた。 路上はゴミだらけ、おまけに中年の男が犬を虐待している。

「兄さん、おーい兄さん」どこかから声がする。

後ろからの声に振り向くと「おいお前だ。 無視するじゃねえよ……」  

「いっ、いえ無視してるつもりはないです」  

「まあいいや。 チョット金貸してくれよ」

なんだいきなり、こいつかつあげ?

「これから会社行くので、よけいなお金は持っていませんから……」

相手せずにさき行こうとすると。

「ちょっと待て! それはねえぜ兄ちゃん。 てめえ昼飯くらい食うだろうが、えっ! こ~ら」

「会社で昼ご飯が出ますから」

「おめえものわかりが悪いようだな。 身体で教えようか? ボケが!」

「解りました。 千円持ってますけど、それでいいですか?」

「あるなら早く出せ、このボケが! なめんなよボケ!」

そういい捨て差し出した金をわしづかみにして立ち去った。

なんなんだ? 今日は朝から? もしかしてあの世界と真逆の世界? 
っということは地獄みたいなネガティブな世界なの?
 
「お~いケンタ」後ろからまた威圧的な声がした。

振り向くと山田社長が立っていた。

「あっ山田社長さんおはようございます」

ケンタの会社の取引先の社長だった。

「おう! どうした浮かねえ顔して」

あれ? あの温厚な山田社長さんの顔が妙に険しい……? 僕は今のいきさつを簡単に説明した。

「ケンタ、そりゃああたりめえだ。 アホズラこいて歩いてるおめえが悪い……」

山田社長さんどうしんだろう。 こんないい方をする社長じゃなかったけど……

「社長それじゃあ急ぎますんで失礼します」僕は、逃げるようにその場から立ち去った。

それにしてもこの町は薄暗いなあ。 道路はゴミだらけ。 家々の壁はカビが生えてて塗装も剥がれ、
草はぼうぼう荒れ放題だ。 やる気無くするよなあこの町は……? 
会社への道のりを歩いているとパトカーと思われる車が止まっていたので、なに気なく横目で見た。

そには警官の服を着てけどなぜか人相が悪い。 
その警官らしき男は若いひ弱そうな男に「お前がやったんだろう! 素直に白状しろ。 ホラ」

男は「俺、関係ねえよ。 勘弁してくれよ」

「んなこと関係ねえ。 こっちは誰だっていい、逮捕出来ればそれが誰だってかまわねえ。 
それとも金で解決しようか?」 

なんと公衆の面前で警官が金を要求かよ……?
  
警官は急にこちらを見た「オイそこの若いの、なに見てんだ!」

警官がこっちに近寄ってきた。 まずいと思った。  その時、急にがたいの大きな人影が警官と
ケンタの間に立ち塞がった。  

その人影は警官に「おい、トシオ昨日の稼ぎが少くねえぜ。 てめえ、ねこばばしてんじゃねえのか? 
コラッ!」

さっきの勢いがまるで失せた警官は「こっちだって命掛かってるんだ。 
兄さんにそんなことしねえっすよ……」  

「そうか、なめた真似すんなよ」

今度は僕の方を指さし「あっ、この若いのは今、ケイスケの野郎にカツ上げされたばっかだ。
 金持ってねえからそんなのほっとけ」  

エッ? さっきのあいつも仲間なわけ? ケンタはいたたまれなくなり泣きたくなった。

会社の前までやっとの事でたどり着いたケンタは、また看板をみて絶句した。 
(株)アルミ建具のはずが、大日本連合会、札幌支部伊藤組と書いてある。 
大日本連合会って広域暴力団だろうが!

ぼ、ぼ、僕はこんなところで働いてるわけ……? もう、いやっ! こんなところいたくない。 
決めた!今日は無断欠勤! そうだ大通公園に行こう。 ケンタは大通りに行った。

なんだこの公園は? ケンタは目を疑った。 

雑草だらけで草ぼうぼう、見るからにホームレスと思われる男女がひとりの老人に罵声を浴びせている。 
その老人も負けないでなにかをいい返している。  ここも修羅場か?

テレビ塔らしき方に目を向けると、なんとみんなで鳩を捕っている。 側では焼き鳥にして食べている人もいる。  ケンタはとりあえずベンチに腰をかけた。

こんな世界も存在するんだ。 ミツトモのいたあの世界とはまるで違う。 
全体に暗い、臭い、湿っぽい、人の顔は煤けたように黒いか青白く、目はくぼんでいて見開いている。 
人と目を合わせずにうつむいたままブツブツ何かを呟いている人も多くいた。

もとの世界に帰りたい憂鬱になっていた。
 
その時、突然右肩を軽く叩かれた? 内心また絡まれるのかぁと背筋が寒くなった。 
目をやると、彼はは微笑んでいた。 この世界で初めて見る柔和な顔。 

「あっミツトモ……?」

「僕の名前はミツトモと違う。 トミゾウっていいます」

「ああ、すみみません勘違いでした。 僕の知り合いと似ていたものですから」

「謝らなくていいよ。 同じようなものだから」

「&%$’&……?」ケンタはまた変な男が現れたと心で呟いた。 

トミゾウが「この世界はどうだい?」  

「なにが……?」 

「ミツトモや君のいた世界と比べたらという意味だよ……」

「えっきみはミツトモ知ってるの?」

「兄弟のようなものだから」

「トミゾウさん、ここはどんな世界なの?」

「今日、君が見てきたとおりの世界。 この世界もミツトモの世界もケンタくんの世界も共通点があるけど、
思ったことがそのまま現実を作り出すのさ。  ダークなことを考えていると同じような考えをする
仲間が同調し集まり、ひとつの世界を造り上げるのさ。 ある意味、同じタイプの人がいるからここの
存在にとっては逆に馴染んで居心地がいいんだ。

僕はこうして客観的に話してるけど、ここの住人はここの世界が全てだと勘違いしてる。 
何年も何年も中には百年近くここにいる。 地位、権力、金、嘘、そして暴力など、
人間のダークな部分が造り上げた世界さここは…… 

ここの基本は、自分の欲望と利益だけで他人のことなど眼中にない。 いや他人をけ落とすことが
快感で自己利益追求の世界なのさ。 ケンタくん、君の目線から見ると解りやすいと思うよ」  

「なんで?」 

「ケンタくんの住む世界より次元は上だけど心の狭い存在だからさ」 

「繁華街なんてあるの? たとえばススキノのような」 

「面白い質問だ。 あるよ。ケンタくんにはショッキングだと思うけど行くかい?」 

「いや、ここでも充分ショッキングです。 質問を忘れて下さい」

「ところで藻岩山に登ってみないかい」 

「またですか…… あっ君はやっぱりミツトモくん?」

「ちがいます。 僕はトミゾウ……」 

こいつもなんかむかつく……

「じゃあケンタくん、僕と手をつないで強く藻岩山山頂を心に念じてくれるかい?」

次の瞬間二人は山頂にいた。 

ケンタは驚いて「ねえどうやったの? もう山頂にいるよ」

「この世界も想念の世界だからね。 君の制限を少し変えさせてもらっただけ」

「便利だね」

「便利でないよ。 僕から見るとケンタが不便なだけさ」 

 なんかむかつく……

「山の空気感はさっきと同じだね」

そう言いながら下界を見おろすと、全体にダークな感じで煙っていた。 集落はところどころ
点在していて火災現場のような煙が数カ所確認できた。 

「ねえトミゾウくん、ここは札幌だよね? ほかにもこんな街あるの?」
 
「地球上、人の住んでいる処は全部町や村はある。 ほとんどの国が戦争やってるけど。 
でもケンタくんの住んでいる世界が変わればこの世界も変わるけどね」

「それって、どういうこと……?」  

「何度も云うけどここも想念の世界であり、それはケンタくんの住む世界のダークな想念を食べて
呼吸しているのさ。 だからケンタくんの世界がポジティブな世界に変わった場合、
ここは存続できなくなり消滅することになるんだ。ここはケンタくんの世界の
ダークな部分の写し世なのさ……」  

「ひとつの世界が消滅することってあるの?」 

「普通にあるよ。 星ごと消滅だってあるさ」

「トミゾウくん、なんか気分が悪くなってきたんだけど」 

「ケンタくんの意識とこの世界は合わないからね」

「トミゾウくんはそんな感は無いの?」

「僕も同じだよ。 ここは馴染めない。 ケンタくんがこの世界に来たから僕もついてきたんだ」  

「トミゾウくんは僕のなんなの?」

「聞きたいかい?」 

「うん。 あっやっぱりいい。 どうせ、君は僕で僕は君っていうんでしょ?」  

「学習したね」なんだこいつガッペむかつく……
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