ハーデス観光株式会社(霊界ツーリスト)全11作

當宮秀樹

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7第六ハーデス

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7第六ハーデス

 やはり、この第六ハーデスも心地の良いワクワク感から始まった。

理恵が「はいゆっくり意識を集中して下さい」

意識を集中させると二人は宇宙に漂っていた。 眼下には地球が月と一緒に確認できた。

「どうですか新見様、このハーデスは宇宙意識です。 眼下に広がる地球と月はどんな感じがしますか?」

「感激です……写真ではよく見る風景だけど、実際にこうして見るとでは全然違います」

「私も初めて見た時感激して涙しました。 どうですか? 神の意識みたいなの感じませんか?」

「さっきから感じてます。 第五ハーデスも素晴らしかったけど、ここはそれ以上というか…
表現する言葉が見つかりません? 
さっきは素晴らしさを感じてましたが、ここは、そのすばらしさの中に全てが同調した感じです。 
客観だったのが主観的に感じられます」

「新見様は表現が上手ですね、さすが出版に携わる人。 このハーデスにピッタリな表現ですね」

二人はその後、言葉を失った。 今までと違った波長の意識が伝わってきた。

「私は違う星から来た意識体。 地球人のいうダーマ星から来たもの」

新見が「ダーマ星? どっかで聞いたことあります。 宇宙人?」

「そうですが、あなたも宇宙人」

「そっか、そうですよね……ここは第六ハーデスですから宇宙人さんは地球より意識が上という事ですか?」

「上という概念はありません。 なにが上ですか?」

「意識がです」

「意識はみな同じです。 上下はあなた方の社会が便宜上作ったもの。 我々とあなたは同じです。 
神の元では上下は存在しません。 皆同等」

「なにが目的で地球に来てるの?」

「今来てるのは、地球と友人達がバージョンを上げようとしてるので見学に来ております」

「見学だけですか?」

「はい」

「関与はしないのですか?」

「関与はしません。 出来ません」

「地球社会の事は地球社会が解決しなくてはいけません」

「ここのハーデスは地球の魂はいないのですか?」

「沢山おります」

「そうなんですか……」

「地球人はいないとでも?」

「いえ」

「地球人でも素晴らしい魂は沢山おります」

「世に名前が出ているから素晴らしいとは限りません。 その逆のほうが多いくらいです」

「宇宙船ってあるんですか?」

「当然あります。 それに乗って旅をしますから」

「私の感覚だと意識体は物理的に存在しなのでは? なのに宇宙船が必要なんですか?」

「宇宙船に乗るのは地球でいう半霊反物質の生命体だからです。 あなた達も近い将来そうなります」

「今、私と話してるあなたは?」

「半霊反物質を卒業した意識体」

「身体はないの?」

「ありません。 エネルギーです」

「もっと遠くへ行ってみましょう」

次の瞬間意識は銀河を離れ遠くから銀河が視える位置に佇んでいた。

理恵が「目の前が銀河です。 学校で習った形と違うでしょ」

「綺麗」新見はまた言葉を失った。

意識体が「この空間と同じバイブレーションどこかで記憶にないですか?」

新見は「はい、確かに何処かで……懐かしいような感じが?」

意識体が「母」

新見が「そう、母親の胎内の中です。 この世に生まれる母親のお腹の中と似てます。 というか同じ感覚」

次の瞬間新見は母親の胎内の中にいた。 穏やかで心地の良い安定感。 
新見はずっとこのままここに居たいと思った。 次の瞬間意識が吸い込まれるような感覚になり
簡単に吸い込まれてしまった。 吸い込まれた先にみえたのが宇宙で、身体が宇宙に漂っていた。

この心地のよさ……そう、母親のお腹の中と同じ波長…… 懐かしい……

意識体が「そう、宇宙も母親のお腹の中も同じバイブレーション。 あなた達は宇宙から生まれたのです」

「宇宙って?」

「全てを司る唯一絶対の存在。  私達宇宙の生命体はその存在から生まれたのです」

「神?」

「名前はありません。 便宜上あなた達が神と付けているだけ、名前を付けることで身近に
感じるからそれだけのこと。 でもそれが偶像崇拝を作りました。我が崇拝する神こそが最高と」

「あなたは神?」

「いいえ、宇宙を作った意識体」

「名前は?」

「必要ありません」

「また会えますか?」

「当然です、あなたは宇宙です。 いつでも私とあなたは繫がっています 。距離と時間は存在しません。 
あなたは私で、私はあなただから」

次の瞬間新見と理恵は、ハーデスから意識が戻ってきた。

水上が「ゆっくり目を開けて下さい」

新見は頭がパニックになり意識がもうろうとしていた。 理恵は普通に自分で装置を外し
コップの中の水を口に含んでいた。

水上が「新見様、どうですか?」

「あっ、はい」

現実とのギャップがありすぎて、正常になるまで時間を必要とした。 十分ほどして身体を
自ら起こして側にあった水を口にした。

新見が「凄いです。 とにかく凄い!」

それからまた数分が過ぎた。

水上が「どうですか?」

「はい、もう大丈夫です。 ありがとうございました」

と言い終わらないうちに泣き出してしまった。 水上と理恵は目配せをして頷いた。
新見が泣き終ると化粧を整えて社長室に移動した。

高橋社長が「新見様どうでしたか?」

「はい、凄いの一語です。 今でも宇宙の中に自分が漂っている感覚です」

「凄いでしょ、宇宙意識っていう言葉がありますけど、実感していただきましたか?」

「はい」

「先日話したように未経験者に説明するのが難しいの。 だから宣伝しないの。 
言葉にすると無理があるから」

「解ります。この感覚は私も表現できません。 表現しようとすると、たぶん、
こぢんまりとしたものになります。 これは言葉を超えた感覚ですね」

「さすが新見さん的確です」

「これからもハーデス観光さんはこのようなスタイルを取られるんですか?」

「今のところ考えてません。 以前にどこかの宗教団体にでも宣伝しようかと思ったんですけど、
結局宗教という限定されたものに扱われたくないという理由からやめました」

「そうですよね、たぶん宗教の教義とかけ離れてるから、その宗教の存続に係わるかも知れませんね」

「そう、だから無難にツアー観光なの」

「でも、この装置には夢があっていいですよ。 絶対どんな人にもお勧めです」

「ありがとうございます」社長は頭を軽く下げた。

「ところで、今回私はオプションを入れずに第一から六迄、経験したんですけど、他はどんな
オプションがあるんですか?」

「一番多いのは亡くなったご家族のハーデスに行きたい。 視てみたいが多いです。
でも当社としてはあまりお奨めしません」

「何故でしょう? それだけでも好い商品になるのでは?」

「たぶん人気は上がるでしょうけど。 行った先が第一や2二だったらどうしますか? 
自分の会いたい家族の人が、第一にいたらショックで落ち込みませんか? 
私だったら絶えられませんね。 身内には、都合のいい優しい方でも、
他人には接し方が逆の人っております。 だから上のハーデスにいるとは限りません。 
経験されたから解ると思いますけど、本人の意識の世界ですから。 
他人が持ってる意識と違うことは当たり前にあります。 
当然そのギャップにショックを受けるケースもあるんです。 
だから好いイメージはそのままでよしと考えます。 
あえて真実をみせる必要はないと考えます」

「第一や第二の魂に言って聞かせたらどうなんですか?」

「それは既にガイドがやってます。 誰よりも熟知しているガイドの話も聞かない魂が、
私達他人の話を聞きません。 今回あなたが取った行動は絶妙のタイミングだったんです」

「そうですよね、今回は色々勉強になりました。 また何かあればお邪魔いたします」

「はい、お疲れ様でした」


 新見はそのまま家路に着いた。

「こんな体験初めて、難しいけどやっぱり文章にしてみたい。

折角六時間で六十万円も払ったんだから、ただ経験しただけじゃもったいない……
SFファンタジー小説にしてみようかな? うん、こんな経験絶対に独り占めはもったいない」

翌週の火曜日に新見はハーデス観光に顔を出した。

「いらっしゃいませ」理恵だった。

「新見様、先日はありがとうございました」

「こちらこそお世話になりました」

「今日はどうなさいました?」

「高橋社長おられますか?」

「高橋は今ハーデス添乗中です。 あと一時間は無理ですけど」

「じゃ、一時間待たせていただいても?」

「はい、どうぞ。今コーヒーお持ちします」

その1時間の間に頭に中で質問等を練っていた。

「高橋様社長室にどうぞ」理恵がいった。

社長室では高橋が笑顔で椅子に腰掛けていた。

「新見様、先日はお疲れ様でした」

「こちらこそいい体験しました。 ありがとうございました」

「いいえ、で、今日は何か?」

「私事なんですけれど、帰ってから真剣に考えたのですが、ここでの体験を小説か
エッセイにしてみたいなと思ってます。 そこで社長さんに監修をお願いしたいと思い訪問しました」

「小説、エッセイですか? それは面白いですね」

「はい、ハーデス経験は強烈でした。 たぶん一生涯記憶に残る体験だと思います。 
なんとかしてこの思いを伝えたい、そう思ったらジッとしてられなくなりました」

「そうですか是非監修させていただきます。 当社で出来ることでしたらなんなりとおっしゃって下さい。 
協力します」

「ありがとうございます。俄然やる気が湧いてきました」


 それから一年後、新見の著書『ハーデス時空の旅』という名の小説で本屋に並んでいた。
徐々に売れていたが今ひとつ数字が伸び悩んでいた。 初版後、半年が過ぎた頃だった。
テレビで芸能人が本の紹介をしたことが切っ掛けで評判が広がり、本は英語訳され
イスラム圏以外世界で出版された。 同時にハーデス観光も予約が相次ぎ、
機械を増やして対応に当たった。

新見が「社長メデイアって凄いでしょ。 今では世界から問い合わせがあるんですよ」

「本当ね、メディアって味方になったら強いのね。 敵に回すと怖いけど。 
ある意味神と同じね…… メディアが批判すると社会も批判するし。 
もてはやすと一気にちやほやされる。 マスコミは重要。 
正確に視て正確に伝える。 難しい仕事を新見さんはなさってるんですね」

「今日これから仕事入ってます? 食事に行きませんか? 私の接待で……」

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