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第一部 エピローグ
異世界をかける少女
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天音もあいりちゃんもどこかのビルの屋上で大の字になって倒れていた。
空が青い。
爽やかな空気が駆け抜ける。
よくよく見れば、このビルもほとんど半壊しているし、どこかのビルからは煙も上がっている。
ソロネシアに破壊された爪痕は痛々しいし、復興には時間がかかるだろう。
ただ、もうこの世界の未来を脅かすものはいない。
平和になったのだという確信があった。
「あいり~」
ふよふよと力なく天音の前を横切ってあいりちゃんのところへ飛んでいったのは、光の妖精ティンクル。
あいりちゃんはティンクルを抱きしめて立ち上がった。
「ティンクル、無事だったのね」
「それはこっちのセリフさ。でも、一体どうやってあいつを倒したんだ? シャイニーグリムの魔法があんなに通用しなかったのに」
「それはもう、天音さんのお陰。だから――」
あいりちゃんのボロボロになっていた魔法少女の衣装が輝く。
それは、魔法のようにパッと消えて、どこかの制服を着たごく普通の中学生が立っていた。
黒髪のポニーテールが特徴的で背は平均よりもやや小さく、スタイル全般的に平均より下で成長が少し遅いのかも知れない。くりくりとした瞳が愛らしい。小動物を連想させるような女の子だった。
「お、おい。あいり……いいのか?」
「いいの、天音さんにはちゃんと本当の私を知ってもらいたいから」
あいりちゃんは天音に手を差し出した。天音はその手を力強く掴んで立ち上がる。
「初めまして、一ノ瀬あいりです。光ヶ丘中学二年生。一四歳」
そう言って輝くような笑顔を見せた。
「えと、私の名前はもう知ってるよね。神ノ宮高校二年生。十六歳」
「え? 私より二つも年上……だったんですか?」
「童顔なのはお互い様だと思うけど」
「アハハッ、それもそうですね」
そう笑ったかと思ったら、あいりちゃんは急に真剣な表情へと変わった。
「あの、異世界から来たこと、教えてくれませんか?」
「そうだ。僕もその事を聞いておきたかったんだ」
戦いのどさくさで明かしたから忘れているかと思ったけど、あいりちゃんもティンクルも記憶力は良いみたい。
「教えてって言われても、そのままの意味なんだけど。私はこことは違う、異世界からやってきたの。どうやら、私の世界の隣りにこの世界はあるみたいだけど」
「……天音さんは元の世界でも魔法が使えるんですか?」
「え? ううん。私の世界には魔法なんて存在しない。そう言うのはゲームとかアニメの世界の話で」
「でも、魔法を使ったじゃないですか」
「あの魔法は、私の世界じゃなくて、また別の異世界で学んだ力」
「別の、異世界?」
「そう、私の能力――『異世界跳躍』でいろんな世界へ行くことができるの」
「それは、魔法ではないんですか?」
「現象だけ見ると、魔法に見えると思う。でも、私が自分の意志で行った事象だって、教えてもらった」
あいりちゃんとティンクルは腕組みをしたまま考え込んでいた。
「わかりました」
「へ? 本当に? 僕はまだよく理解しきれてないけど」
戸惑うティンクルを退かして、あいりちゃんは天音の両手を包み込むようにして握ってきた。
「天音さん。この世界で一緒に魔法少女として平和を守っていきましょう」
「ちょ、あいり!? 君は何を言ってるんだ?」
「だって、難しい話はよくわからないし。要するに、天音さんは魔法が使える。なら、魔法少女で良いじゃない」
「そういう問題じゃないと思うよ」
「ダメ、ですか?」
上目遣いで訴えるような瞳。女の子なのに、心が揺れそうになる。天音に妹がいたらこんな感じなのだろうか。
……あいりちゃんの申し出に心が揺れたのは、もちろんそれだけのためではない。
こんなことは、授業中にいくつも妄想してきた。
世界のピンチに特別な力に目覚めて世界を救う英雄として活躍する。
だから、そういう気持ちがないといったら嘘になる。
――だけど。
「ごめん。それはできない」
「どうしてですか?」
「何となく、わかった気がするんだ。私は、妄想するのが好きだったんだ。だから、私が妄想しているような異世界が本当にあって、そこに生きる人たちが必死に毎日を暮らしているなんて考えてもみなかった」
世界は一つしかなくて、自分の世界だけが絶対で、そこが平和で安全だったからそれを退屈だと感じていた。
天音の世界にだって平和じゃないところはある。
だからもし、日本以外に生まれていたら、きっと平和な世界を求めていたんじゃないかな。
本当の世界のピンチなんて、求めてはいない。
妄想の中で華麗に活躍するのと現実ではあまりにも違っていた。
退屈でも代わり映えのないあの平穏な日々こそが、天音が本当に求めるものだった。
「それなら、なぜ逃げなかったんですか?」
「……逃げようとは、思ったよ。魔法少女が苦戦する敵を相手に、私ができることはないと思ったし」
「でも、そうしなかった。天音さんにも魔法少女の心はあるはずです」
「ううん、やっぱりそれはないよ。だって、あいりちゃんと違って私には『異世界跳躍』が使える。私はここにいても、テレビの前で見ている視聴者とたいして変わらない。いつでもチャンネルを変えてこの世界を見なかったことにできる。あなたとは覚悟が違う。いえ、あなただけじゃない。この世界に生きる全ての人と違うんだ。私だけ心は常に安全なところにいる。ただの卑怯者よ」
「……天音さんがどう思っていても、私と一緒にこの世界を守ってくれた事実は変わりません。だから、私は天音さんにも魔法少女の心があると信じてます」
ただ真っ直ぐに今の空と同じような澄んだ瞳であいりちゃんはそう言った。
心が温かくなる。本当に、そういう気持ちもあったのかなと思ってしまう。
「ありがとう」
もうこれ以上、あいりちゃんの言葉を否定する意味はない。天音はあいりちゃんの気持ちを素直に受け取った。
「……帰るんですね」
「うん。元の世界には友達が待ってるし、両親もあまり心配させたくないしね」
「わかりました。今は諦めます」
そう言ってあいりちゃんは一歩下がった。
ティンクルがあいりちゃんの肩に乗って、初めて笑顔を向けた。
「ま、取り敢えず。礼は言っておくぜ。あいりを、魔法少女シャイニーグリムを助けてくれてありがとうな」
「どういたしまして」
「ねえ、天音さん」
あいりちゃんも笑っている。何か吹っ切れたような明るい笑顔。
「ん? 何?」
「私たちもう友達ですよね?」
「ああ、うん。そうだね、私の能力は友達にしか話してないないし」
「だったら、また私がピンチになったら助けに来てください。天音さんは友達を見捨てたりしないって信じてますから」
「……それ、ちょっとずるいと思う」
「えへへ……」
今度は悪戯っぽい顔。コロコロと表情が変わる。これがあいりちゃんの本当の素顔なんだと思った。
「そうね、ここにはいつでも来られるから。なるべく平和なときにまた遊びに来るわ」
「……はい。私も楽しみにしてます」
「それじゃ、またね」
お互いに手を振って別れた。
元の世界に戻って一番最初に確認したのはスマホの日時。
天音が元の世界から『異世界跳躍』をして二週間近く経っていた。
もちろん、すぐに両親に会いに行ったが、今回はそれほど心配していなかった。
暦ちゃんが上手く誤魔化してくれたみたい。
ただ、問題がないわけではない。
夏休みの宿題を残りわずかになった夏休みで集中して終わらせなければならないのだ。
うーん。いっそのことロックの世界で宿題やろうか。
あそこなら一ヶ月いたって、こっちでは一日くらいしか経たないし。
まあ、それは本当にやばかったら使う奥の手として考えておこう。
「さて、とにかくまずは……」
スマホで暦ちゃんにラインを送った。
[アリバイ作り手伝ってくれてありがとう。無事に帰ってきました]
すぐに既読が付いて、返事が書き込まれた。
[お帰りなさい。明日、異世界の話を聞かせてください]
……明日? 急だけど、即答した。
だって、天音も話したいことがたくさんあったから。
この世界に帰ってくると、やっぱり退屈だなと思ってしまうのは仕方のないことなのだろうか。
何気ない日常がどれほど尊いものか知っているのに。
当たり前の日々が当たり前に流れていくと、異世界での出来事が全て夢だったんじゃないかとさえ思えてくる。
しかし――鞄にしまったままになっている、というか封印しているロックの世界から持ち帰ったお土産。
お土産と呼ぶにはあまりに物騒な代物だけど。
それから――。
クルスに教えてもらった数々の魔法。
「『風の翼』よ」
夜に闇に紛れて、天音は空へ向かって飛び上がる。
夏休みの宿題で溜まったストレスを発散させるために、夜に空を飛ぶのが日課になっていた。
夜風に吹かれながら自分の世界を見渡す。
今までの経験全てが事実であり、世界が一つではないというのが真実であると証明していた。
天音は自分の進路に一つの答えを見出していた。
異なる世界で懸命に生きる人たちが存在する。
でも、この世界しか知らない、この世界に住む人たちはその事に気がつけない。
今までは異世界のことなんて妄想の中にしかないものだと思っていた。
その世界が実在していたのだ。
それを天音は知った。
だから、その事をこの世界の人たちにももっと知ってもらいたかった。
気がついて欲しかった。
そのために、異世界での出来事を描く物書きになりたいと思った。
「――久しぶりに、行ってみようかな。異世界のことを描くには、その世界のことをもっと知らないといけないし」
イメージはしない。
今度はまた別の――まだ行ったことのない異世界へ――。
夜の闇にとけ込むように、天音は『異世界跳躍』を使った。
異世界をかけるために――。
空が青い。
爽やかな空気が駆け抜ける。
よくよく見れば、このビルもほとんど半壊しているし、どこかのビルからは煙も上がっている。
ソロネシアに破壊された爪痕は痛々しいし、復興には時間がかかるだろう。
ただ、もうこの世界の未来を脅かすものはいない。
平和になったのだという確信があった。
「あいり~」
ふよふよと力なく天音の前を横切ってあいりちゃんのところへ飛んでいったのは、光の妖精ティンクル。
あいりちゃんはティンクルを抱きしめて立ち上がった。
「ティンクル、無事だったのね」
「それはこっちのセリフさ。でも、一体どうやってあいつを倒したんだ? シャイニーグリムの魔法があんなに通用しなかったのに」
「それはもう、天音さんのお陰。だから――」
あいりちゃんのボロボロになっていた魔法少女の衣装が輝く。
それは、魔法のようにパッと消えて、どこかの制服を着たごく普通の中学生が立っていた。
黒髪のポニーテールが特徴的で背は平均よりもやや小さく、スタイル全般的に平均より下で成長が少し遅いのかも知れない。くりくりとした瞳が愛らしい。小動物を連想させるような女の子だった。
「お、おい。あいり……いいのか?」
「いいの、天音さんにはちゃんと本当の私を知ってもらいたいから」
あいりちゃんは天音に手を差し出した。天音はその手を力強く掴んで立ち上がる。
「初めまして、一ノ瀬あいりです。光ヶ丘中学二年生。一四歳」
そう言って輝くような笑顔を見せた。
「えと、私の名前はもう知ってるよね。神ノ宮高校二年生。十六歳」
「え? 私より二つも年上……だったんですか?」
「童顔なのはお互い様だと思うけど」
「アハハッ、それもそうですね」
そう笑ったかと思ったら、あいりちゃんは急に真剣な表情へと変わった。
「あの、異世界から来たこと、教えてくれませんか?」
「そうだ。僕もその事を聞いておきたかったんだ」
戦いのどさくさで明かしたから忘れているかと思ったけど、あいりちゃんもティンクルも記憶力は良いみたい。
「教えてって言われても、そのままの意味なんだけど。私はこことは違う、異世界からやってきたの。どうやら、私の世界の隣りにこの世界はあるみたいだけど」
「……天音さんは元の世界でも魔法が使えるんですか?」
「え? ううん。私の世界には魔法なんて存在しない。そう言うのはゲームとかアニメの世界の話で」
「でも、魔法を使ったじゃないですか」
「あの魔法は、私の世界じゃなくて、また別の異世界で学んだ力」
「別の、異世界?」
「そう、私の能力――『異世界跳躍』でいろんな世界へ行くことができるの」
「それは、魔法ではないんですか?」
「現象だけ見ると、魔法に見えると思う。でも、私が自分の意志で行った事象だって、教えてもらった」
あいりちゃんとティンクルは腕組みをしたまま考え込んでいた。
「わかりました」
「へ? 本当に? 僕はまだよく理解しきれてないけど」
戸惑うティンクルを退かして、あいりちゃんは天音の両手を包み込むようにして握ってきた。
「天音さん。この世界で一緒に魔法少女として平和を守っていきましょう」
「ちょ、あいり!? 君は何を言ってるんだ?」
「だって、難しい話はよくわからないし。要するに、天音さんは魔法が使える。なら、魔法少女で良いじゃない」
「そういう問題じゃないと思うよ」
「ダメ、ですか?」
上目遣いで訴えるような瞳。女の子なのに、心が揺れそうになる。天音に妹がいたらこんな感じなのだろうか。
……あいりちゃんの申し出に心が揺れたのは、もちろんそれだけのためではない。
こんなことは、授業中にいくつも妄想してきた。
世界のピンチに特別な力に目覚めて世界を救う英雄として活躍する。
だから、そういう気持ちがないといったら嘘になる。
――だけど。
「ごめん。それはできない」
「どうしてですか?」
「何となく、わかった気がするんだ。私は、妄想するのが好きだったんだ。だから、私が妄想しているような異世界が本当にあって、そこに生きる人たちが必死に毎日を暮らしているなんて考えてもみなかった」
世界は一つしかなくて、自分の世界だけが絶対で、そこが平和で安全だったからそれを退屈だと感じていた。
天音の世界にだって平和じゃないところはある。
だからもし、日本以外に生まれていたら、きっと平和な世界を求めていたんじゃないかな。
本当の世界のピンチなんて、求めてはいない。
妄想の中で華麗に活躍するのと現実ではあまりにも違っていた。
退屈でも代わり映えのないあの平穏な日々こそが、天音が本当に求めるものだった。
「それなら、なぜ逃げなかったんですか?」
「……逃げようとは、思ったよ。魔法少女が苦戦する敵を相手に、私ができることはないと思ったし」
「でも、そうしなかった。天音さんにも魔法少女の心はあるはずです」
「ううん、やっぱりそれはないよ。だって、あいりちゃんと違って私には『異世界跳躍』が使える。私はここにいても、テレビの前で見ている視聴者とたいして変わらない。いつでもチャンネルを変えてこの世界を見なかったことにできる。あなたとは覚悟が違う。いえ、あなただけじゃない。この世界に生きる全ての人と違うんだ。私だけ心は常に安全なところにいる。ただの卑怯者よ」
「……天音さんがどう思っていても、私と一緒にこの世界を守ってくれた事実は変わりません。だから、私は天音さんにも魔法少女の心があると信じてます」
ただ真っ直ぐに今の空と同じような澄んだ瞳であいりちゃんはそう言った。
心が温かくなる。本当に、そういう気持ちもあったのかなと思ってしまう。
「ありがとう」
もうこれ以上、あいりちゃんの言葉を否定する意味はない。天音はあいりちゃんの気持ちを素直に受け取った。
「……帰るんですね」
「うん。元の世界には友達が待ってるし、両親もあまり心配させたくないしね」
「わかりました。今は諦めます」
そう言ってあいりちゃんは一歩下がった。
ティンクルがあいりちゃんの肩に乗って、初めて笑顔を向けた。
「ま、取り敢えず。礼は言っておくぜ。あいりを、魔法少女シャイニーグリムを助けてくれてありがとうな」
「どういたしまして」
「ねえ、天音さん」
あいりちゃんも笑っている。何か吹っ切れたような明るい笑顔。
「ん? 何?」
「私たちもう友達ですよね?」
「ああ、うん。そうだね、私の能力は友達にしか話してないないし」
「だったら、また私がピンチになったら助けに来てください。天音さんは友達を見捨てたりしないって信じてますから」
「……それ、ちょっとずるいと思う」
「えへへ……」
今度は悪戯っぽい顔。コロコロと表情が変わる。これがあいりちゃんの本当の素顔なんだと思った。
「そうね、ここにはいつでも来られるから。なるべく平和なときにまた遊びに来るわ」
「……はい。私も楽しみにしてます」
「それじゃ、またね」
お互いに手を振って別れた。
元の世界に戻って一番最初に確認したのはスマホの日時。
天音が元の世界から『異世界跳躍』をして二週間近く経っていた。
もちろん、すぐに両親に会いに行ったが、今回はそれほど心配していなかった。
暦ちゃんが上手く誤魔化してくれたみたい。
ただ、問題がないわけではない。
夏休みの宿題を残りわずかになった夏休みで集中して終わらせなければならないのだ。
うーん。いっそのことロックの世界で宿題やろうか。
あそこなら一ヶ月いたって、こっちでは一日くらいしか経たないし。
まあ、それは本当にやばかったら使う奥の手として考えておこう。
「さて、とにかくまずは……」
スマホで暦ちゃんにラインを送った。
[アリバイ作り手伝ってくれてありがとう。無事に帰ってきました]
すぐに既読が付いて、返事が書き込まれた。
[お帰りなさい。明日、異世界の話を聞かせてください]
……明日? 急だけど、即答した。
だって、天音も話したいことがたくさんあったから。
この世界に帰ってくると、やっぱり退屈だなと思ってしまうのは仕方のないことなのだろうか。
何気ない日常がどれほど尊いものか知っているのに。
当たり前の日々が当たり前に流れていくと、異世界での出来事が全て夢だったんじゃないかとさえ思えてくる。
しかし――鞄にしまったままになっている、というか封印しているロックの世界から持ち帰ったお土産。
お土産と呼ぶにはあまりに物騒な代物だけど。
それから――。
クルスに教えてもらった数々の魔法。
「『風の翼』よ」
夜に闇に紛れて、天音は空へ向かって飛び上がる。
夏休みの宿題で溜まったストレスを発散させるために、夜に空を飛ぶのが日課になっていた。
夜風に吹かれながら自分の世界を見渡す。
今までの経験全てが事実であり、世界が一つではないというのが真実であると証明していた。
天音は自分の進路に一つの答えを見出していた。
異なる世界で懸命に生きる人たちが存在する。
でも、この世界しか知らない、この世界に住む人たちはその事に気がつけない。
今までは異世界のことなんて妄想の中にしかないものだと思っていた。
その世界が実在していたのだ。
それを天音は知った。
だから、その事をこの世界の人たちにももっと知ってもらいたかった。
気がついて欲しかった。
そのために、異世界での出来事を描く物書きになりたいと思った。
「――久しぶりに、行ってみようかな。異世界のことを描くには、その世界のことをもっと知らないといけないし」
イメージはしない。
今度はまた別の――まだ行ったことのない異世界へ――。
夜の闇にとけ込むように、天音は『異世界跳躍』を使った。
異世界をかけるために――。
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