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الفصل ٦「CEOの第三夫人爆誕!」
③
しおりを挟むマーリク氏が「住む」フロアは、このホテルの最上階だった。いわゆるペントハウス・アパートメントになった客室である。
住居代わりに長期滞在する富裕層向けに特別に設計されたという、このホテルのペントハウス・アパートメントは、リビングルームとベッドルーム(もちろん西洋式なので、それぞれにトイレもあるバスルーム付き)を備えたスイートが五つもある上に、キッチンやダイニングルームまで完備されていた。
また、外へ向けて意匠的に張り出されたテラスからは、だれにも邪魔されず我が物顔で最高の眺望(特に夜景がすばらしいそうだ)を見下ろせる。
さらに、ホテルだからmealやlaundry serviceやhouse keepingなどを別途手配しなくても、コール一つでホテル側のお眼鏡に適った人がやってきて、てきぱきと処理してくれるのだ。
お金に糸目をつけない富裕層の方々にとっては、こんなふうに快適なサービスを提供してくれるホテルに「住む」方が、ずっと「合理的」なのだろう。
——だったら、ここに住むということは……
この度アブダビ新都市のホテル建設のため、担当になったフロア・プランニング。
それを「突貫工事」でなんとか習得しなくちゃいけないあたしにとっては……
——もしかして、願ったり叶ったりな「勉強部屋」なんじゃない?
以前、ベトナムのフーコック島に旅行したとき、ちょっと奮発してフレンチ・コロニアムスタイルのホテルにあったスイートに宿泊したのが、あたしのホテル経験値ではそれが「最高」だった。
そんなあたしの乏しい「経験」では、wealthy people classのお客様にご満足いただけるプランニングなんて、できるはずがない。
部屋と部屋をつなぐcorridorには、ゴージャスでありながらもセンスの良いオリエンタリズムあふれる調度品が配置されていた。
思わず左右をきょろきょろ見回しつつ、サマラさんのあとをついていく。
「Ma'am,there’s the room you'll be staying in.」
〈奥様、こちらのお部屋になります〉
案内してくれていたサマラさんが、乳白色をした扉を開けた。
すると、ティ◯ァニー・ブルーが一面に広がる壁紙が目に飛び込んできた。
「This is the room where the mistress welcomes her guests. And if you open the door over there, you'll find the mistress's bedroom.」
〈こちらはこの家の奥様がお客様をお迎えになるときのためのお部屋でございます。そして、あちらの扉を開けますと、奥様のための寝室がございます〉
——おおっ、あたし専用として、ホテルのスイートがすっぽり与えられたよっ!
「Also,there’s the walk-in closet next to the bathroom where you’ll find your belongings.」
〈さらに、バスルームの隣にウォークインクローゼットがございまして、お持ちになったお荷物はそちらにございます〉
アブダビに来てからは、会社が押さえているホテルを「社宅」代わりにして滞在していたのだが、同じエリアにあってもこのホテルとは全然ランクが違った。
独身のマーリク氏にとってここは、いずれ結婚してちゃんとした居を構えるまでの「仮宅」のつもりだったそうなのだが、ホテル住まいが性に合っているのか、思いの外「快適」らしい。
なので、あたしを第三夫人に迎えたあとも引き続き住むことになっている。
あたしにとってもこんなに豪華な上に職場にも近いため異論はなく、願ったり叶ったりだ。
「Well then, we’ll let you know when we’re ready to serve your meal. If you need anything else, could you please call on me?」
〈それでは、食事のご用意が整いましたらお知らせします。もしなにかありましたら、わたくしをお呼びくださいませ〉
そう言って、サマルさんは部屋を出て行った。
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