砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎ 〜Romance in Abū Dhabī〜 【Alphapolis Edition】

佐倉 蘭

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الفصل ٦「CEOの第三夫人爆誕!」

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   この家のmistress奥様guestsお客様を迎えるために設けられたリビングルームから「探検」することにした。

   先ほどのマーリク氏が使っていたマスタールームにあったリビングルームの広さとは較べようもないが、あたしが東京の天沼で一人暮らししていたワンルームの部屋が、玄関からベランダまで丸ごと入ってしまいそうだ。

   マーブル模様の代理石の床に敷かれた円形のペルシア絨毯には、中央に大きくメダリオン柄が織られている。その上には、まるでアンティークの美術品のような布張りの長椅子セティが一つだけではなく数脚置かれていて、その周囲には美しい装飾が施されたセンターテーブルやサイドテーブルがあった。

——ミスター・マーリクの部屋もそうだったけど、お金持ちのリビングルームって、やたらとソファやテーブルがあるのよねぇ……

   庶民と較べるまでもなく、それだけお迎えするguestsが多い、ということなのであろう。
   ちなみに、イスラム教徒ムスリムの家では、男性をもてなす部屋と女性をもてなす部屋は別にしなければならない。
   そして、一家の主人が男性側のhostを担当して奥さんが女性側のhostessを務めるため、それぞれにリビングルームが必要となる。その女性側のリビングルームがこの部屋、ということだ。

   いくつもあるセティはどれも、座面と背面に滑らかな手触りのカル◯ィエレッドのベルベットが用いられ、マホガニーのなだらかなアームには精巧な文様が彫られていて、それらは優美なフォルムの猫脚によって支えられていた。いかにも高貴な女性が好みそうなハイセンスな意匠である。

   早速、腰掛けてみて座り心地を堪能したいところだが、食事の時間までどのくらいかわからない。なので、ほかの部屋をチェックするのが先だ。
   あたしは奥の扉に向かって歩いて行く。


   奥の扉を開けると、そこは先刻さっきサマラさんから教えられたとおりの寝室だった。
   リビングルームと同じティ◯ァニー・ブルーの壁紙を背にして、キングサイズのベッドが置かれている。

   天蓋の支柱にはセティのアームと同じく精巧な文様が彫られていて、天蓋の四方からはセティに張られたベルベッドと同じ色のカル◯ィエ・レッドの幕が、純白のレースとともにカーテンのように垂れていた。

——どっひゃあぁー!アラビアンナイトに出てくるような、お姫さまベッドじゃーんっ‼︎

   いや、「お姫さまベッド」にしてはオトナな感じなので「王妃さまベッド」か。
   契約書で取り交わしたとおり、あたしは今夜から「あたし専用」のこの特大ベッドで眠ることになる。

   早速横たわってみて、ふかふかのduvet掛け布団くるまれ寝心地を堪能したいところだが、まだ「探検」しなければならないところがある。

    あたしは寝室から続くウォークインクローゼットへと入って行った。
   もともと、この地には極力荷物を減らしてやってきたし、まだ来たばかりでほとんど増えていない。思ったとおり、あたしが持ち込んだ荷物は余裕で納まっていた……はずなんだけど——なに、これ?

    てっきりウォークインクローゼットだと思って開けたそこは、あたしに与えられた寝室よりもずっと広い部屋だった。
   そして、その部屋の中央には巨大な天蓋付きベッドが、どーんと置かれてあった。

——明らかに、キングサイズよりも大きなベッドだわ。

    一般的にキングサイズはシングルベッド二台分の大きさなのだが、もしかしたらこのベッドはダブルベッド二台分あるかもしれない。
    また、天蓋の黄金に輝く支柱には精緻な文様が彩色されていて、天蓋の四方からはエメラルドグリーンの重厚なベルベットの幕が、純白のレースとともにカーテンのように垂れている。
   まさに、アラビアンナイトに出てくる王宮にありそうな「王様ベッド」だった。

    それに加えて、サファイアのようなウルトラマリンブルーの壁紙や、オリエンタル調の豪華な調度品のテイストが、マーリク氏のリビングルームの雰囲気そのものだった。ということは……

——ここって「Master bedroom主寝室」じゃん!

    つまり、あたしが開けたドアは、この家の主人夫婦がそれぞれ持つ私室をつなぐ「コネクティングドア」だった、というわけだ。
    先刻さっきはきょろきょろと左右を見回すことだけで精一杯だったけど、サマラさんは案内がてらマーリク氏のリビングルームからぐるりと一周してこの部屋にあたしを連れてきていたのだ。

——ミスター・マーリクはいつもここでやすんでいるのかなぁ?
   それとも、あたしの部屋のように向こうに自分専用の、ここよりは小さい寝室があるのだろうか。

    巨大な王様ベッドを見ながら、そんなことをつらつら考えてぼんやりと佇んでいたら、不意に背後から声がした。

「Excuse me,ma’am. Dinner is ready.」
〈奥様、失礼します。夕食のご用意ができました〉

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