766 / 1,060
Side View Story 13
09~10 Side 蒼樹 01話
しおりを挟む
紅葉祭中、大学の駐車場の半分が高等部の保護者枠となるため、今日は徒歩。
俺は八時半のスタートに間に合うように家を出た。
父さんたちは関所が空いたころを見計らって来ると言っていた。
自分は藤宮学園関係者用のテントで学生証を提示し、ボディーセンサーゲートを通るだけでパスできる。
生徒の家族と思われる来場客を横目になだらかな坂を歩くと、校門の前にはすでに長い列ができていた。
時間になるとすぐに門は開かれ、列が動き始める。
門の両脇に並ぶ実行委員から冊子を受け取った直後に携帯が鳴り、ディスプレイを見て不思議に思った。
「唯……?」
『あんちゃん、今どこ?』
「校門を通過したばかりだけど?」
『じゃ、昇降口で待ってる』
「は? 唯、仕事は?」
『なーんかさ、秋斗さんが家族してこいって。家族用の簡易ブレスプレゼントされちゃったよ』
「そっか……。了解、じゃぁ昇降口で」
通話を切り、ほんのりと色づく桜並木の葉を見ていた。
あと数日もすれば気温は急激に下がり、葉はきれいに色づくだろう。
そしたら翠葉は喜ぶんだろうな……。
学園環状道路を学内バスで遊覧するだけでも十分に見ごたえがある。
そんな情報は知らないだろうから、学校から帰ってきたら教えてあげよう。
校舎の前に唯の姿が見えてくる。
曲がりなりにも仕事として出ていったはずの唯は、朝食のときに見た格好と変わらず、黒い細身のジーパンに半袖と長袖のTシャツを重ね着し、その上にフード付きのジャケットというラフな格好だった。
足元もショートブーツ。
まかり間違っても会社勤めをしている人間には見えない。
「何? まじまじと見て」
「いや……その格好で仕事っていうのもどうなのかと思ってさ」
「あぁ、俺、基本的に表に出ないからね。本社に行くときはもう少しちゃんとしてるよ?」
その答えにこめかみを押さえたくなる。
秋斗先輩、これでいいのでしょうか……。
「ま、いいか。唯がスーツ着てるほうが浮くかも」
「えぇっ!? 俺、ホテルでは支給されてる制服という名のスーツを着たりするんだよっ!?」
咄嗟に黒いスーツを思い出し、頭の中で唯に着せてみる。
うーん……これは「浮く」というよりは「人目を引く」の間違いかも。
「リィのとこに行く前にちょっと話があるんだけど、いい?」
唯に服を引っ張られ、昇降口から少し離れた桜並木のもとまで行く。
思えば、今年の春にはここで翠葉がクラス分けの掲示板を見ているのを見守っていたんだな。
半年ほど前のことを思い出していると、唯が世間話をするようなノリで話しだした。
「リィが警護対象になった、で意味通じる?」
一瞬思考が停止しかけ、それでも一拍後には言葉を返せていた。
「警護対象なら前にも一度なったことがあるけど……」
でも、そのときとは何か違う気がするのは気のせいか……?
あのときは雅さんという人を警戒して警護対象になった。
今回は逢坂コーポレーションの人間に目をつけられたかもしれないとは聞いていたが、それだけなら今改めて唯が俺に話すことでもないだろう。
「唯?」
「うん、以前にもあったよね。でも、それとは別。逢坂がどうのっていうのとも少し違うけど、基本的な部分っていうか、根本的な部分は同じかな?」
「……唯、俺は先輩の仕事を手伝うことはあるけど、警備に関して詳しいわけじゃないんだ。できればもう少しわかりやすく話してほしい」
「難しい話じゃないよ。すごく単純明快。リィは藤宮の人間と仲が良すぎるんだ。しかも、女の子だから標的にされやすい。だから、『警護対象』になった。これで意味わかる?」
「わかるようなわからないような……」
「本当はさ、彼ら、誰とも仲良くするつもりなんてないんだ。一族での内部派閥もあるから」
そう言った唯は、少しだけ寂しそうな顔をした。
「人と深く付き合うことで面倒ごとが増える可能性がある。だから、基本は広く浅くの人付き合いしかしない。けど、リィはもうその一線を越えちゃってるから――」
「わかった……」
それ以上聞くに耐えず、途中で言葉を遮った。
翠葉が大丈夫かとかそういうことではなく、藤宮の人間がどう人と付き合ってきたか、という部分において、それ以上を聞きたくなかった。
今まで秋斗先輩という人と付き合ってきて少なからず気づいていたことだったけど、それをあえて言葉にされるのは結構きつい。
前に唯が言っていたこと。
――「あの人、基本自分はひとりだと思ってるから。俺や蔵元さんを仲間と見てるかも怪しい。俺たちの関係って最初からそんなものだよ」。
あれはたぶん、藤宮一族のことを知ったうえで口にした言葉だったのだろう。
そんなことに今さら気づくなんてな……。
「でも、あんちゃんはとっくに秋斗さんが引く線の内側にいたと思う。ただ、あんちゃんは男だからとくに問題がなかっただけ」
唯に気を遣われた気がした。
けれども、即座に釘を刺される。
「今も自分が線の向こう側にいると思っているなら、俺がその背中を蹴飛ばすけど?」
天使の笑顔が靴の裏と一緒にこちらを向く。
「秋斗さんはもう気づいてる。どこに線があって、誰がその線の内側にいるのか……。ちょっと気づくのが遅かっただけだから」
「だから許してあげて」と言われた気がした。
許すもなにも――怒るに怒れない内容だろ。
「このこと、翠葉は?」
「海斗っちが話したって。で、なんか大丈夫っぽいことも聞いてる」
それは本当に大丈夫なのだろうか――?
翠葉の身の安全は守られるだろう。でも、心は……?
「今からリィに会いに行くんだから、実際に目にして確かめたら?」
俺の不安を見事に的中させた唯は、「ほら行くよ」と再度服を引っ張り昇降口へと向かって歩きだした。
校舎に入ると壁のあちらこちらに宣伝のポスターが貼ってあった。
その中で異彩を放つのは背景が真っ黒なポスター。
「あれ、目ぇ引くね」
唯が指したそれは俺が見ていたものと同じだった。
「リィのクラスでしょ?」
「一年B組って書いてあるな」
翠葉のクラスのポスターは二通りあるという。
もし、気づいたら教えてほしいと言われていた。
両方とも同じ写真だけれど、背景のみが違うらしい。
ポスターの端にチラシのようなものがぶら下がっていたのでそれを一枚引き抜くと、メニューの詳細が記されていた。
「白い壁に黒じゃ目立つよね。ほかがカラフルなだけに余計浮いて見えるよ」
きっとそれが目的だったのだろう。
ほかと違うと意識させたもの勝ち。
階段を上がるとすぐそこが翠葉たちの教室。
「白と黒でここまで差をつけるとはねぇ」
唯の言葉に同感だった。
下の階で見たポスターの背景白バージョンがずら、と横に一面並んでいる。
そして、写っているものはケーキのみ。
印字してあるのは「1-B Classical Cafe」の文字だけ。
ほかの情報は一切載せていない代わりにチラシがそれを補っていた。
順番待ちの列は長くはなく、俺たちの前に三人並んでいる程度。
受付では「ただいまの待ち時間十分となっております」と案内され、さらには「クッキーはいかがですか?」と試食用のものを勧められた。
入り口から教室内を覗き見ると、メイド服を着た翠葉がいた。
黒いサテン生地はフリルがあしらわれたハイネックで、フリルは胸元にまで続く。
それに真っ白な表面積少な目のエプロン。
かわいいといえばかわいい。だが、スカートの丈がえらく短い……。
誕生日に母さんの勧めで買ってきた黒いワンピースと同じくらいだ。
それにニーハイソックスとラウンドトゥのストラップつきパンプス。
露出は少ない、が――そこかしこの男どもの視線が気になって仕方ない。
「リィ、似合ってるじゃん」
唯の一言に口元が引きつる。
当たり前だ。翠葉は何を着せてもかわいい。
でも、問題はそこじゃない……。
伝票を片手にスカートの裾を押さえる翠葉を桃華が叱り飛ばしていた。
「あんちゃん、ここはちょっと大人になろうか?」
唯が「落ち着け」と言わんばかりに俺の肩に手を置く。
「お待たせいたしました」
受付の男子に言われ教室に入るとすぐ翠葉に声をかけた。
翠葉は俺たちに気づくと笑顔を見せてくれる。
それと同じタイミングでクラス中の視線を集めてしまった。
やば――声、大きかったか?
「ったく大人気ない……」
唯の小声がザクリと胸に突き刺さる。
翠葉から唯に視線を向けると、
「来たよ来たよ!」
唯はいつもの調子で歩み寄り、ごく普通に絡み始めた。
教室内にいる男子はその光景を羨ましげに見ている。
翠葉が案内してくれた席に座るものの、どうしてもメニューよりも翠葉の格好のほうが気になってしまう。
何を言うでもなくまじまじと見ていると、
「また、えっらいかわいい格好してるけど、こんな格好してたらあんちゃん、気が気じゃないんじゃない?」
こいつ、わかってて楽しんでるし……。
本当に性質が悪い。
「さすがに衣装のことまでは聞いてなかった……」
「蒼兄……うちのカフェ、ケーキは美味しいの。でもね、この衣装にだけは慣れそうにないよ」
翠葉の苦笑に安堵したのなんて初めてのことだった。
「……慣れなくていいよ。俺は今すぐにでも翠葉にジャージをはかせたい」
そう言った直後、翠葉の後方から視線を感じた。
そちらに視線を移すと、翠葉と同じ格好をした桃華がこちらを見ていた。
彼女はクスリと笑う。
声を発さない唇が紡いだ言葉は、「心配症」の一言だった――
俺は八時半のスタートに間に合うように家を出た。
父さんたちは関所が空いたころを見計らって来ると言っていた。
自分は藤宮学園関係者用のテントで学生証を提示し、ボディーセンサーゲートを通るだけでパスできる。
生徒の家族と思われる来場客を横目になだらかな坂を歩くと、校門の前にはすでに長い列ができていた。
時間になるとすぐに門は開かれ、列が動き始める。
門の両脇に並ぶ実行委員から冊子を受け取った直後に携帯が鳴り、ディスプレイを見て不思議に思った。
「唯……?」
『あんちゃん、今どこ?』
「校門を通過したばかりだけど?」
『じゃ、昇降口で待ってる』
「は? 唯、仕事は?」
『なーんかさ、秋斗さんが家族してこいって。家族用の簡易ブレスプレゼントされちゃったよ』
「そっか……。了解、じゃぁ昇降口で」
通話を切り、ほんのりと色づく桜並木の葉を見ていた。
あと数日もすれば気温は急激に下がり、葉はきれいに色づくだろう。
そしたら翠葉は喜ぶんだろうな……。
学園環状道路を学内バスで遊覧するだけでも十分に見ごたえがある。
そんな情報は知らないだろうから、学校から帰ってきたら教えてあげよう。
校舎の前に唯の姿が見えてくる。
曲がりなりにも仕事として出ていったはずの唯は、朝食のときに見た格好と変わらず、黒い細身のジーパンに半袖と長袖のTシャツを重ね着し、その上にフード付きのジャケットというラフな格好だった。
足元もショートブーツ。
まかり間違っても会社勤めをしている人間には見えない。
「何? まじまじと見て」
「いや……その格好で仕事っていうのもどうなのかと思ってさ」
「あぁ、俺、基本的に表に出ないからね。本社に行くときはもう少しちゃんとしてるよ?」
その答えにこめかみを押さえたくなる。
秋斗先輩、これでいいのでしょうか……。
「ま、いいか。唯がスーツ着てるほうが浮くかも」
「えぇっ!? 俺、ホテルでは支給されてる制服という名のスーツを着たりするんだよっ!?」
咄嗟に黒いスーツを思い出し、頭の中で唯に着せてみる。
うーん……これは「浮く」というよりは「人目を引く」の間違いかも。
「リィのとこに行く前にちょっと話があるんだけど、いい?」
唯に服を引っ張られ、昇降口から少し離れた桜並木のもとまで行く。
思えば、今年の春にはここで翠葉がクラス分けの掲示板を見ているのを見守っていたんだな。
半年ほど前のことを思い出していると、唯が世間話をするようなノリで話しだした。
「リィが警護対象になった、で意味通じる?」
一瞬思考が停止しかけ、それでも一拍後には言葉を返せていた。
「警護対象なら前にも一度なったことがあるけど……」
でも、そのときとは何か違う気がするのは気のせいか……?
あのときは雅さんという人を警戒して警護対象になった。
今回は逢坂コーポレーションの人間に目をつけられたかもしれないとは聞いていたが、それだけなら今改めて唯が俺に話すことでもないだろう。
「唯?」
「うん、以前にもあったよね。でも、それとは別。逢坂がどうのっていうのとも少し違うけど、基本的な部分っていうか、根本的な部分は同じかな?」
「……唯、俺は先輩の仕事を手伝うことはあるけど、警備に関して詳しいわけじゃないんだ。できればもう少しわかりやすく話してほしい」
「難しい話じゃないよ。すごく単純明快。リィは藤宮の人間と仲が良すぎるんだ。しかも、女の子だから標的にされやすい。だから、『警護対象』になった。これで意味わかる?」
「わかるようなわからないような……」
「本当はさ、彼ら、誰とも仲良くするつもりなんてないんだ。一族での内部派閥もあるから」
そう言った唯は、少しだけ寂しそうな顔をした。
「人と深く付き合うことで面倒ごとが増える可能性がある。だから、基本は広く浅くの人付き合いしかしない。けど、リィはもうその一線を越えちゃってるから――」
「わかった……」
それ以上聞くに耐えず、途中で言葉を遮った。
翠葉が大丈夫かとかそういうことではなく、藤宮の人間がどう人と付き合ってきたか、という部分において、それ以上を聞きたくなかった。
今まで秋斗先輩という人と付き合ってきて少なからず気づいていたことだったけど、それをあえて言葉にされるのは結構きつい。
前に唯が言っていたこと。
――「あの人、基本自分はひとりだと思ってるから。俺や蔵元さんを仲間と見てるかも怪しい。俺たちの関係って最初からそんなものだよ」。
あれはたぶん、藤宮一族のことを知ったうえで口にした言葉だったのだろう。
そんなことに今さら気づくなんてな……。
「でも、あんちゃんはとっくに秋斗さんが引く線の内側にいたと思う。ただ、あんちゃんは男だからとくに問題がなかっただけ」
唯に気を遣われた気がした。
けれども、即座に釘を刺される。
「今も自分が線の向こう側にいると思っているなら、俺がその背中を蹴飛ばすけど?」
天使の笑顔が靴の裏と一緒にこちらを向く。
「秋斗さんはもう気づいてる。どこに線があって、誰がその線の内側にいるのか……。ちょっと気づくのが遅かっただけだから」
「だから許してあげて」と言われた気がした。
許すもなにも――怒るに怒れない内容だろ。
「このこと、翠葉は?」
「海斗っちが話したって。で、なんか大丈夫っぽいことも聞いてる」
それは本当に大丈夫なのだろうか――?
翠葉の身の安全は守られるだろう。でも、心は……?
「今からリィに会いに行くんだから、実際に目にして確かめたら?」
俺の不安を見事に的中させた唯は、「ほら行くよ」と再度服を引っ張り昇降口へと向かって歩きだした。
校舎に入ると壁のあちらこちらに宣伝のポスターが貼ってあった。
その中で異彩を放つのは背景が真っ黒なポスター。
「あれ、目ぇ引くね」
唯が指したそれは俺が見ていたものと同じだった。
「リィのクラスでしょ?」
「一年B組って書いてあるな」
翠葉のクラスのポスターは二通りあるという。
もし、気づいたら教えてほしいと言われていた。
両方とも同じ写真だけれど、背景のみが違うらしい。
ポスターの端にチラシのようなものがぶら下がっていたのでそれを一枚引き抜くと、メニューの詳細が記されていた。
「白い壁に黒じゃ目立つよね。ほかがカラフルなだけに余計浮いて見えるよ」
きっとそれが目的だったのだろう。
ほかと違うと意識させたもの勝ち。
階段を上がるとすぐそこが翠葉たちの教室。
「白と黒でここまで差をつけるとはねぇ」
唯の言葉に同感だった。
下の階で見たポスターの背景白バージョンがずら、と横に一面並んでいる。
そして、写っているものはケーキのみ。
印字してあるのは「1-B Classical Cafe」の文字だけ。
ほかの情報は一切載せていない代わりにチラシがそれを補っていた。
順番待ちの列は長くはなく、俺たちの前に三人並んでいる程度。
受付では「ただいまの待ち時間十分となっております」と案内され、さらには「クッキーはいかがですか?」と試食用のものを勧められた。
入り口から教室内を覗き見ると、メイド服を着た翠葉がいた。
黒いサテン生地はフリルがあしらわれたハイネックで、フリルは胸元にまで続く。
それに真っ白な表面積少な目のエプロン。
かわいいといえばかわいい。だが、スカートの丈がえらく短い……。
誕生日に母さんの勧めで買ってきた黒いワンピースと同じくらいだ。
それにニーハイソックスとラウンドトゥのストラップつきパンプス。
露出は少ない、が――そこかしこの男どもの視線が気になって仕方ない。
「リィ、似合ってるじゃん」
唯の一言に口元が引きつる。
当たり前だ。翠葉は何を着せてもかわいい。
でも、問題はそこじゃない……。
伝票を片手にスカートの裾を押さえる翠葉を桃華が叱り飛ばしていた。
「あんちゃん、ここはちょっと大人になろうか?」
唯が「落ち着け」と言わんばかりに俺の肩に手を置く。
「お待たせいたしました」
受付の男子に言われ教室に入るとすぐ翠葉に声をかけた。
翠葉は俺たちに気づくと笑顔を見せてくれる。
それと同じタイミングでクラス中の視線を集めてしまった。
やば――声、大きかったか?
「ったく大人気ない……」
唯の小声がザクリと胸に突き刺さる。
翠葉から唯に視線を向けると、
「来たよ来たよ!」
唯はいつもの調子で歩み寄り、ごく普通に絡み始めた。
教室内にいる男子はその光景を羨ましげに見ている。
翠葉が案内してくれた席に座るものの、どうしてもメニューよりも翠葉の格好のほうが気になってしまう。
何を言うでもなくまじまじと見ていると、
「また、えっらいかわいい格好してるけど、こんな格好してたらあんちゃん、気が気じゃないんじゃない?」
こいつ、わかってて楽しんでるし……。
本当に性質が悪い。
「さすがに衣装のことまでは聞いてなかった……」
「蒼兄……うちのカフェ、ケーキは美味しいの。でもね、この衣装にだけは慣れそうにないよ」
翠葉の苦笑に安堵したのなんて初めてのことだった。
「……慣れなくていいよ。俺は今すぐにでも翠葉にジャージをはかせたい」
そう言った直後、翠葉の後方から視線を感じた。
そちらに視線を移すと、翠葉と同じ格好をした桃華がこちらを見ていた。
彼女はクスリと笑う。
声を発さない唇が紡いだ言葉は、「心配症」の一言だった――
3
あなたにおすすめの小説
光のもとで2
葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、
新たな気持ちで新学期を迎える。
好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。
少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。
それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。
この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。
何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい――
(10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる